上 下
85 / 85

あとがき

しおりを挟む
 この度は「茜川の柿の木後日譚――姉の夢、弟の願い」をお読みいただき誠にありがとうございました。
 このお話は表題の通り「茜川の柿の木――姉と弟の風景、祈りの日々」の後日譚に当たります。姉が弟のアパートに押しかけ女房ならぬ押しかけ姉となって以降のお話です。

 今回苦労したのは、何と言ってもこの姉弟の「関係」です。本編で既に姉は弟に対し想いを募らせている節があることを匂わせましたが、拙作ではそれがさらに強くなり、もはや誰にも止められないほど強い想いとなっていきます。更にはそれに引きずられるように弟の姉への想いも高まっていきます。理想としてはやはり「少し仲がよすぎる姉弟」であるべきだったのでしょうが、もはや私の手ではコントロールし切れませんでした。正直手に余ってしまいました。「第8話、アラン」で抱擁させたところでタガが外れてしまったのかも知れません。ご不快に思われる方がいらしたらお詫び申し上げます。ただ、姉が弟大好き全開だったのに対し、弟の方はある程度、本当にある程度ではありますがブレーキを利かせることができましたのは不幸中の幸いだったのかも知れません。

 姉のようなキャラクターは好きです。どこかジ〇イ〇ンをほうふつとさせるところも含めて好きです。弟については私の弱い面が強く現れたような気がして私としては共感が難しいキャラです。彩寧は難しいキャラです。姉弟が極端なブラコンシスコンの域を越えてることも察知していたかも知れません。それでも弟につかず離れず居続け結婚までする辺り相当な想いを弟に抱いていたのでしょう。


 ストーリーは二転三転どころか四転五転しました。先ほども書きました通り二人の関係をどうするのか迷ったからです。そんなこんなでストーリーの七割以上を書き換えること二回。中には姉弟に肉体関係を結ばせることも考えました。これだけ好きあっているのに結ばれないのはなんだか不憫に思えたからです。私はこれまでにリアルで二組兄妹で真剣に愛し合っているケースに触れておりますので、「真剣に愛し合っているのなら」きょうだい間の恋愛も許容せざるを得ないのではないか、と思う人間です。もちろんこれはごく少数派なのは承知しているつもりです。しかしそういう経験がゆーくんと姉さんに対しても反映されたのだと思います。結局二人に肉体関係を持たせないとはっきり決めるまで相当うじうじしました。
 それと姉、愛未を生かすか殺すかについても相当悩みました。結局このような結末になりましたが、これが正しい選択だったのか今でも判りません。

 二度の大改稿を経ても、内容の満足度としては全十五篇の中でも下から数えた方がいいくらいです。巧いプロットが…… と言うかそもそもプロットが書けない人間なので、改稿などするとあっという間にストーリーが瓦解するのです。時間をかけた割にはいいお話にできず私も無念です。徒労感ばかりが増して悔しくもあります。

 拙作は完成直前にとあるアイディアが浮かび、それを取り入れることはできないか考えてみたことがあります。が、その内容は後味の悪いサスペンス、まさにイヤミス風味な出来だったので採用しませんでした。もしかしてスピンオフとして投稿することがあるかも知れません。

 ここまであとがきをお読みいただき誠にありがとうございました。忌憚のないご意見ご感想を頂戴できましたら望外の喜びであります。

 それではまた次回作にて。これもまた産みの苦しみで七転八倒中であります。

                                  永倉圭夏
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...