空の六等星。二つの空と僕――Cielo, estrellas de sexta magnitud y pastel.

永倉圭夏

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第16章 空と姉

第88話 裕樹の告白、罪に穢れた男

 僕は空さんから目を背けた。

「ですからもう僕のそばになんかにいないでください」

 空さんは心底驚いた顔をした。

「えっ! どうしてっ?」

「今言った通り、僕が姉を死なせたからです。けがれた罪人つみびとは空さんに相応ふさわしくない」

「何を言ってるの……」

「聞いての通りのことをです」

「まって、それはだめ。そんなことを考えちゃだめ」

「どうしてですか。当然の考えだと思いますが」

「それじゃまるで……」

 空さんはきっと僕をにらむ。一呼吸あけて強い口調を僕にぶつけてくる。

「私と同じじゃないっ!」

 僕はビクッと震える。

「あなた言ったわよね。私に罪はないって。罪科つみとがのかけらもないって。私、その言葉をそっくりそのままお返しするから」

 僕はうつろな眼で立ち上がり、くずかごに空き缶を放りこむとすたすたと病室へ帰る。

「待って、お願い話を聞いて」

 空さんが追いすがる。

「もう話すことは無いです。さっき話したことで僕ははっきり思い出しました。僕は家族一人救えなかった罪人つみびとだということを」

「そんなことないっ。そんなことない……」

 僕は病室のベッドに横になり、哀れなほどうろたえる空さんに向かって言った。

「付き添いはもうこれっきりにして下さい。空さんに迷惑をかけるし悪いうわさも立つでしょうから」

「うわさなんてそんなの私どうだっていいのっ。私っ、私っ」

「おやすみなさい」

「ひろ君ねえ聞いてっ」

 僕は空さんに背を向けて横に寝る。

「ひろ君は私と同じになっちゃだめ。私と同じ生き方をしちゃだめ。自分を卑下しちゃだめ。ひろ君は私の命を救い、私の生き方を変えてくれたんだもの。それだけのものを持っているの。だから私…… 私……っ」

 僕は沈黙で答えた。

「だから私っ、必ずあなたを連れ戻して見せるっ、絶対に、絶対に陽の当たる場所へ連れて行くんだからっ」

 そんなことできるもんか。それはむしろ決してあってはならない事のように思えた。

 背後からはずっと空さんの苦し気な吐息が朝まで聞こえていた。その間僕はずっと自分の罪と向き合って、やはり空さんのそばにいるべきではないとの決意を新たにした。僕のような罪人つみびとは空さんには相応ふさわしくない。

 僕の心にはあたかも極寒の吹雪が吹き荒れていた。この吹雪は決して晴れない、晴れてはいけないものだった。冷たい涙が一粒零れた。



【次回】
第89話 侵入者
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