この異世界住人が卑猥すぎて魔王討伐が進まない……

パイ吉

文字の大きさ
19 / 88

第19話この異世界で俺の想像力は役に立つ……

しおりを挟む
 モンスターが上空に舞い上がり、翼を羽ばたかせる。
「ユージ! 逃げろっ」
 レイドが叫んだ。
 疾風が俺の体に切り傷をつけていく。

 クソっ、かまいたちかよ。

 俺は倒壊した家屋の大きながれきの陰に飛び込んだ。次の瞬間、強力な風圧で俺の体は、がれきもろ共吹き飛ばされた。隠れる場を失った俺は、急いで体を起こし、モンスターの動向をうかがう。奴は宙に浮かんだまま、俺の様子を観察するように見ている。近づいてくる気配はない。
 さっきのダメージが効いているのだろうか? 警戒して接近戦を避けているように見える。
 
 それなら、俺から接近戦を挑んでやる! 逃げてばかりじゃ突破口は開けない。
 
 半ばやけくそになった俺は、モンスターめがけて飛び上がった。
 地面を蹴り上げ、フワッと体が浮き上がった刹那、再びモンスターの疾風攻撃がダイレクトに直撃した。バランスを崩して地面に激しく体を打ち付ける。
 体中に痛みが走る。息ができない。
「もしやと思ったが、私の勘違いか……」
 俺にとどめを刺そうと、モンスターが翼を広げた。

 体が動かない……このままじゃヤツの攻撃をかわせない。俺、ここで死ぬのか?
 
 モンスターが翼を羽ばたかせる。疾風が俺に襲い掛かる。
 死を覚悟した瞬間、目の前に1人の女性が現れた。彼女がマントをひるがえすと、大きな炎のシールドが出現し、疾風をはじき返した。
 170センチ近い長身で細身の体、キュッとくびれたウェストと対照的な豊満なバスト。後ろで束ねてアップにされた栗色の髪。
「ユージ君、大丈夫?」
 身をかがめたスキルバが、俺にポーションを手渡しながら尋ねた。
「スキルバさん! 助かりました。あいつ、レイドさんの魔術も効かないし、物理攻撃も……」
 渡されたポーションを口にして、彼女に状況を説明する。体中の痛みが嘘のようにひいていく。
「ガーゴイルね」
「あれが! ガーゴイルって言ったら、侵入者を防ぐための門番だろ? なんで町に出現すんだよ?」
 俺に手を貸し、起き上がるのを助けながらレイドが尋ねる。
「私にも分からないわ。今わかっていることは、奴は魔術攻撃の属性効果をほぼ無効にできるということ。そして、打撃や斬撃といった物理攻撃すら通用しないということ」
「嘘だろ……そんなバケモンとどうやって戦えって言うんだ」
 スキルバの応援で表情に明るさを取り戻していたレイドが、再び意気消沈した。
 レイドだけじゃない、俺自身も正直言ってショックを受けた。スキルバの登場でこの最悪な状況が打開できるんじゃないかとさえ思えた。スキルバの炎の防御魔術を目にして、希望を抱いたのだ。スキルバとレイド、ランクSRが2人も揃えばあの化け物にもかなうんじゃないかって……。目の前が真っ暗になった。
「……ユージ君! ユージ君! 私の話をしっかり聞いて」
「え? あの……」
 スキルバが俺に顔を近づけ両手で肩を掴み、必死に話しかけていることにやっと気がついた。
「レイド、お願い! 時間を稼いでっ。アイツを倒す方法はある!」
「おう! まかせとけっ。だが、もって3分だぜ」
「3分あれば十分よ」
 レイドは頷き、スキルバからもらったポーションを飲み干すと、ガーゴイルめがけて駆けだした。
 
 スキルバは「倒す方法がある」と言ったが、本当に? 彼女は物理攻撃も魔術攻撃もガーゴイルには通用しないと言ったのだ。ランクSRのレイドとスキルバでさえかなわないと言うのに、誰がどうやって倒すんだよ……。

 体の痛みは無くなっていたが、受け入れがたい絶望的状況から、俺の思考はほぼ停止してしまった。
「いい? ユージ君、今から私の言うことをしっかり聞いて!」
「は、はい……」
 スキルバの強い口調で、俺は正気を取り戻した。
「君の精液を調べて分かったことがある。そして、さっき君の飛行魔術を見て確信した」
「なんですか?」
「君は紛れもないランクLRよ! 本来、魔術を使用するには媒体となる装備が必要なの。どんなに高い魔力をそなえていても、武器や防具が無ければ魔術は発動できない。この世界の理すら超越する力、それがレジェンドなのよ」
 スキルバがレイドを気にしながら早口で話す。
 
 ランクLR……この俺が本当に? 空を飛べたくらいで、そんなにすごいことなのか? まあ、元の世界じゃありえないけど。ガーゴイルに攻撃されたとき、かぎ爪が砕けたけど、あれは俺がやったのか? 何かの偶然じゃないのか?

 考えることが多すぎて頭がグルグル回る。
「えっと、つまり、ガーゴイルは俺が倒す……みたいなことですか?」
 スキルバは真っすぐに俺を見つめ、黙ってうなずいた。
 どう見ても冗談を言っている顔には見えない。
「魔術を使うとき、大事なことが2つあるの」
「そ、それは?」
「心から真剣に願うこと、祈ること。そして魔術の形を具体的にイメージすることよ。ユージ君が空を飛んだ時、どんなことを考えた? 何を祈った?」

 俺が空を飛んだ時? 俺は……エリーを助けたいって思ったんだ。それで、エリーのところへ届けって強く思って……。
 ガーゴイルに攻撃された時もそうだ。鋭い爪を見て、防御しなきゃって思って、盾が欲しいって……。

 スキルバの言葉に信憑性が増してきた。彼女の言う通り、確かに俺はピンチのときに想像力が働いた。空を飛ぶ自分自身や頑丈な盾をイメージしたのだ。しかし、自分が魔術を使ったという実感が全く湧いてこない。
「くそぉぉぉ! スキルバっ。そろそろ限界だぁ!」
 ガーゴイルに斬撃を浴びせながら、レイドが叫んだ。
「ユージ君、今のあなたに出来ないことは何も無い。想像こそがあなたの最高の武器よ。お願い、この町をみんなを守って」
 スキルバの目から一筋の涙がこぼれた。
 彼女の頬を伝って流れる涙を見て、俺の気持ちは吹っ切れた。
 気がついたらいきなり異世界で、クレアやスキルバに出会わなければ今日の俺はいないだろう。そんな彼女に助けを求められたんだ。町のみんなを、クレアやローザ、エリーを守らなくちゃならない。
 俺が自分を信じられなくても、俺を信じてくれてる人がいる。その気持ちだけは裏切りたくない。
「それじゃ、俺いってきます」
 俺はスキルバに頭を下げ、ガーゴイルに向かって走り出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...