この異世界住人が卑猥すぎて魔王討伐が進まない……

パイ吉

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第47話俺は妹へ向かって手を伸ばす……

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 俺は妹の部屋の前に立っていた。『ちひろ』と書かれた猫のネームプレートに手を触れる。そういえば妹は猫が大好きだった。ペット禁止のアパートに住んでいた子供のころ、捨てられていた子猫を千尋と一緒に世話していたっけ。保健所の職員に子猫が連れられていったとき、千尋が泣き止まなくて大変だったな……。
 ドアノブに手をかけ扉を開く。
 千尋は机に向かって勉強している最中だった。
「千尋……」
 妹の小さな背中に向かって声をかける。
 千尋が振り向いた途端、辺りが真っ黒になり俺たちは急に落下し始めた。底の見えない闇の奥深くへすごい速さで飲み込まれていく。
 妹に向かって手を伸ばす。
「掴まれ千尋!」
「助けてお兄ちゃん!」
 妹の落下速度の方が速くどんどん離されていく。
 どんなに強く念じても、どんなに明確なイメージを抱いても飛ぶことはできず、ただひたすら奈落の底へ落ちていく。
「千尋ぉぉぉ!」
「お兄ちゃぁぁぁん!」
 暗闇に飲まれていく妹を助けられないあまりの無力さに絶望する。

 俺は、この異世界に来て力を手に入れたんじゃないのか?
 強くなったんじゃないのか?
 俺は……。

「……さまっ、勇者さまっ」
「ユージ! ユージ!」
 目を開けると、マリアとクレアが俺の顔を覗き込み、心配そうに名前を呼び続けていた。
「あ、えっと……おはよう」
「何が『おはよう』よ。すごいうなされてたから心配したのよ」
「勇者様がご無事で良かったです」
「心配かけてゴメン」
 ベッドから体を起こして二人に謝る。
「ところでユージ。チヒロって誰よ?」
 クレアが腕組をして高圧的な態度で尋ねる。
「まさか、勇者様の思い人なのですか?」
「いやいや、違うって。妹だから」
「ゆ、勇者様は妹さんのことを……まさに禁断の愛!」
 なぜかマリアが生き生きと目を輝かせる。

 ああ、マリアってそういうのが好きだったのね……。

「ゆ、許せない。巨乳の妹が好きだなんて! ユージの変態!」
「イテテテ。違うって。クレアさん、落ち着いて。話せばわかる」
 パンチの連打を浴びなが必死で弁解する。

 妹、巨乳じゃねーし。そもそも恋してねーし。ツッコミどころ満載すぎだろ。

「朝から騒々しいな。君の周りはいつでも賑やかだな」
 皮肉を口にしながらアイゼンが部屋に入って来た。
「聞いてよアイゼン。ユージったら、巨乳の妹が大好きなのよ」
「なるほど。妹にパイズリさせたいとは、ズリキチの中でも最底辺の変態だな」
 アイゼンが冷ややかな視線を俺に向ける。

 こいつら全く人の話を聞く気がねぇな……。

「夢の中で、妹を助けようとしたのに助けられなくって。千尋は『お兄ちゃん、助けて!』って叫んでたのに……」
「夢の話をいつまでも気にするな。お前ほどの力があれば救えぬ者など一人もおらぬ。レイモンドを救ったようにな」
 アイゼンが俺の肩を優しく掴んで微笑んだ。
「ところで俺、どれくらい眠ってました?」
「昨日の夜からだから9時間くらいよ。マリアの家までレイモンドが運んでくれたのよ」
 クレアが壁掛け時計を見ながら教えてくれた。
「疑似太陽などという大規模な魔術を展開させたうえ、レイモンドを無傷で守るほどのシールドを張ったのだ。相当な魔力を消耗したはずだ。常人なら命にかかわるぞ」
 アイゼンが呆れた顔で話す。

 なるほど。大量に魔力を消耗すると俺の場合睡眠が必要になるようだ。
 もう少し、魔力のコントロールに慣れないといけないな。

「た、大変っす!」
 顔を真っ青にしてルイスが駆け込んできた。
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