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 勝負してこそのゲーム

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「電話、通じなかった。一応、留守電は入れてきたけど……」
 と、彼女は困った感じで部屋に戻って来た。
 俺からしてみれば一緒にいられる時間が増えそうで万々歳だが、彼女からしてみればすぐにつくはずの連絡がつかないのは心配だろう。
「今は家にいないんじゃないか?……ほら、流奈のことが心配で探しに出てるとか」
「そうだよね!」
 俺の言葉に瞬時に明るくなる流奈ーーこの切り替え、羨ましい。
「どうする?電車乗り継いで1人で帰るか?金ないなら貸すけど……」
 言いながら以前からの疑問ーー彼女は何処に引っ越したのだろうと思う。転校の理由と共に引っ越し先も、俺は教えられていなかった。……一応県外とは聞いているが……。
「いやいいよ。ここからだと結構な額になるし、今借りたら返すのいつになるか分からないし。電話くるの待つ」
 しかし彼女がこう言うのでそれらを訊くのは躊躇われた。
「そうか……」
 俺は一応そう答えた。けれど一部では、もう少し彼女と一緒に居られると思って嬉しくなった。
「これからどうする?」 
「そうだな……」
 枕もとにある時計を見てみると針は9時半を指すところだった。
「どこの店も今は開いてないだろうし、外出してる間に親御さんから連絡が来てもあれだしな……」
「じゃあ、久しぶりにゲームでもしよう!ほら小さい頃よく遊んでたボードゲームあるじゃない!」
「ああ、あれかぁ」
 人生ゲーム。
 何年ぶりだろう。
 というかあれ、どこにやったっけ?
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