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第一章

76 太陽神殿・突入

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長い航海を終えてようやくエジプトへと到着した。日本とエジプトでは時差がある。日本はエジプトより6時間進んでいる。エジプトまではこの船だったので10時間で到着した。現時刻はエジプトで日付を跨いだ午前1時だ。日本はもう朝の7時でもう島にはついている頃だろう。
地球の時差は全くもって嫌になる。時差ボケを起こすのも無理もないだろう。
航海途中、謎の海洋生物に襲われたり、停泊したシンガポール付近の島での30分ほどの自由時間では敵組織の下っ端中の下っ端に戦いを挑まれてぼこぼこにする羽目になってしまって碌に休めた感じがしない。

なんやかんやあってエジプトに到着したワールド一向は戦艦の整備やら物資調達の後、目的地である太陽神殿跡地に車で向かう事となった。
因みに調査するメンバーは冬華が決めたメンバーだ。

冬華、奏、アリア、イヴ、歌、兎の6人。残りの仁美と優空とルカは留守番・・・だったのだが、仁美は冬華が残って欲しい理由を説明しても着いて行くと言って聞かなかったので同行させることになった。
本当はワールドの戦艦の防衛に当たってもらうつもりだったのだが、自分が着いて行かなければ何の為に着いてきたのか分かりません何て言われれば着いて来させるしかあるまい。
今現在、冬華達は車で神殿まで向かっている訳だが・・・・

「おえ~~~!」
「あ、主様!大丈夫ですか?しっかりしてください!」
「む、無理だ・・・し、死ぬ。まだ・・・・着かねぇの・・・かよ」

一番の問題点は冬華の乗り物酔いだった。ワールドの戦艦の中はほぼ地球の重力と変わらず、乗り物に乗っているというよりは普段歩いているのと変わらない感覚の為、久々の乗り物で冬華は激しく酔っていた。

「冬華さんしっかりしてください。あと30分は乗っていないといけませんから」
「あんたの乗り物酔いは薬効かねぇんだよな?」
「はい。主様のは生まれ持っての治らない乗り物酔い。唯一の対抗策は乗り物酔い防止の魔術を掛けるか、ワールドの戦艦のように地面に立っているのと同じ感覚でしか効果がないんです」
「・・・先祖の血は大変ね」
「あ・・・ああ。ウゲェ・・・しゃ、喋るとしんどい」
「主様。私の膝で横になりますか?寝れば少しましかと思います」
「そ、そう・・・す・・」

冬華は眠るように仁美の日膝に頭を置くと瞬く間に眠りに落ちた。それを見た全員が冬華を見て笑った。
そのまま冬華は眠ったまま、車は太陽神殿まで走り続ける。
エジプトの太陽神殿は、意外な場所に出現していた。
それは誰もが知ってる有名建造物が建っている場所・・・ピラミッドとスフィンクスがあるその奥に、大きく目立つように建っていた。
当初は物凄く混乱を生んだが、入らなければ害がないとの事で周りの人間は気にしなくなったし、鈴音の名前で管理もしているし今はワールドが日々調査もしているので安全ではある。

長い時間をかけてようやく到着し、各自車を降り、神殿へと歩く。突如として現れたその神殿は流石は神話時代の産物と言って差し支えないほど神々しささえある。
神話の時代のものなのにやけに綺麗なのが気になったが、神は不変と言う。あまり深く考えない方がいいのだろう。

「やっと着いた~。地獄だったぜ」
「大丈夫?はい、お水よ」
「サンキューアリア。・・・でけぇ神殿だな」
「本当ね。これが神話の代物だって言うのだから驚きだわ」
「今からこん中調べるんだよな・・・・・いいか。危険だと思ったら無茶せず下がれよ」
「何?私達だって戦えるしそこまで守ってもらう必要ないんだけれど?」
「守る守らないの話じゃなく、危険な事に進んでいくなって事だ。後で歌と兎にも言っとけよ・・・・お前には例の場所教えてもらわなきゃいけねぇんだからな」
「・・・ええ勿論よ。その時は食事にでも誘ってもらおうかしら?」
「へいへい。今度時間がある時に誘わせてもらいますよ」
「ふふっ・・ええ、楽しみにしておくわ」

こんな世間話をアリアとすると不思議と違和感なく和んでいる自分がいた。先祖がさぞ彼女とは縁が深かったのだろうか。

「ねぇ?すっごく今更だけどこのツインテールって私の雰囲気にあってるかしら?自分では歳の割に大人びて見られるからこの髪型は似合ってるのか気になるよ」
「?・・・俺はすっごく似合ってて可愛いと思うぞ?・・・うん、とても可愛い」
「なっ!?・・・ほ、本当?」
「嘘言ってどうすんだよ」
「ちょ、ちょっとそんな事言われるとは思ってなかくて、想定外だったから」
「・・・本当の事だったから言ったんだが・・・もっと自信持てよ。アイドルとかモデルやっててもいいスタイルしてるんだから」
「あ、ありがとう」
「どういたしまして?」
「・・・ほ、ほら!行くわよ!みんなを待たせてるわ!」
「お、おお」

アリアは顔を赤くして先に行ってしまった。思いの外照れ屋で天邪鬼なようだ。神殿の入り口付近ではイヴが「置いてくぞ~」と手を振っている。「今行く」と返して手を振る。
いよいよ神殿内に突入する。冬華は無意識に首から下げている剣を握りしめる。
この剣についても何なのか判明した、使いどきは早く訪れるだろう。
それにエジプトには何だか、因縁のようなものを感じるし、記憶の奥底で何かに対して威嚇をするような感情が生まれている。
先祖の記憶なのかはたまた何か良くない気配を感じ取っているのかは分からないが、不思議と意識の外側には命を掛けなければならないと思っていたのだ。








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