ざまあ/ざまぁ/ザマァ短編集〜人気ストーリーは連載します!〜

マルジン

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ぜんぶ***ばいいのに

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~あらすじ~
※グロテスクな表現があります。
※人が死にます。
※主人公視点に感情移入できないと、ただ辛いだけです。

総じて言うと、見ないほうが良いかもです。
書いといて何言ってんねん。すみません。
発作的にこういうの書きたくなるので、書きました。


◇◇◇

正直なとこ、堪らなく壊したくなる時がある。

消えてしまいたい。
居なくなりたい。
終わりにしたい。

これら全てが、心のどこかにあって。

壊したい。
ぶっ潰したい。
なくなればいいのに。

これら全てが、心のどこかにある。

いっつも付きまとう破壊衝動を、僕はどうにか抑えて生きてる。


「仕事しないの?」
「友だちに相談したら?」
「結婚は?」
「頭悪いな」
「頑張れよ」
「お前だけじゃない」

あー、ああ。

そうだよね、分かる分かる。

みんな生きるのに必死なんだよね。
自分のことさえ良ければいいもん。

他人なんて知ったこっちゃないもん。

みんな下を見て安心するし、みんな下をこき下ろして安心するし、みんな下に向けて高説を垂れて自分のまともさを実感する。

でも僕の下には、誰もいないんだよ。

だからといって、衝動のままに動くことはしないよ。
こんな僕にも、道徳と倫理の感覚はあるからね。

満パンに詰めこまれた過去未来を一刺しして、ドロドロと床に撒いてやりたいけれどさ、広がる血があまりにも輝いてたら、立ち直れないじゃない。

こんな僕にも、良心はあるからね。


◇◇◇

「悪いけど、レジのお金数え直して。二万は多すぎる」

「は、はい」

もう6時を過ぎてるのに、僕はまたレジのお金を数え直す。
小銭をトレーに入れて、専用の機械にのせて金額を書き記し、お札の束をまた専用の機械にのせて金額を書く。
電卓で総合計を出して、メモしてと。

レジ内で計算された残高が、レシートに記載されてるから、その金額とメモの値を照合すると、やはり二万円足りない。

チラリと店長を見やると、椅子に座ってモニターを眺めていた。
どうやら、僕が働いてる時間帯の監視カメラ映像を確認してるみたいだ。

「あ、あの、やっぱり足りないです」

僕がそう言うと、頷きながら手で制された。

6時5分――。

この後予定があるわけでも、早く眠りたいわけでもないけれど、ここよりかは家の方が良い。

けれど待てと言われたし、恐らく僕を疑ってるんだろうから、今帰ると不審に思われそうだ。

あー、帰りたい。

すると店長は神妙な面持ちで、僕の顔を覗き込んだ。

「正直に話してくれ。盗んだか?」

それから尋問が始まった。
僕はまだ新入りだから、他の従業員よりも盗んだ可能性が高いとか。
魔が差しただけならクビで済ませるとか。
カメラから見えないように盗むなんてスゴイな、だとか。

「と、盗ってませんよ」

「はあ、白を切るなよ、てめえよお!」

バンッ――。

「夜勤はお前だけ。お前以外に誰がいるんだよ、なあ、なあ!」

机を叩いて恫喝されたって、知らないものは知らない。
それから僕は黙ったまま、三十分ほど耐え続けて、誰が犯人なのかを考えた。

昨日の夕勤に入ってた人ではないはずだ。その時間は、副店長がいるから。
であれば僕の後に入った人かな。
でも真面目そうな人なんだよなー。
一人は彼女持ちの大学生で、もう一人は子持ちで家庭円満そうな普通のおばさん。

うーん、誰だろう。

誰だか分からないけど、一瞬トイレに行ったからなあ。
その隙に事務所に入って盗むことはできるか。

「あのー」

「盗りましたって言う気になったか?」

「僕ではなくて――」

「言い訳するな!」

店長は聞く耳を持たなかった。

時給1,200円だから、600円分の時間だ。
タイムカードは店長が切ってしまったから、もうもらえないけれど、600円分の時間を罵倒され続けた。

つくづく惨めな気分にさせられた。

あースゴく惨めだ。

さっさと消えてしまいたい。
コイツも消えてしまえばいいのにな。

「聞いてんのか!」

バンッ――。

机を叩かれて、僕の体がビクリと跳ねた。

その瞬間だと思う。

まん丸の心が、とうとう壊れた。

うーん、壊れた、かな?

もっと良い言い方があると思うんだけど。


「お、おいなんだ、座れ」


あー、アレだ。

殻を破ったんだ。


机のペン立てに手を伸ばした僕は、適当に掴んで振り抜いた。


ザシュッ――。

「あがっ……かかっ」

こめかみに突き刺さる……鉛筆とかハサミとかを引き抜いて、僕を見下す目ん玉に突き立てる。

「はぅっ……」

僕よりも大柄なのに、弱々しいものだ。
ペチペチも僕の腕を叩くばかりで、だんだんと抵抗もなくなっていった。

片方の目ん玉だけじゃ意味がないので、ハサミを引き抜いてもう片方に刺しておいた。

これでもう、僕を見下せない。

とてもスッキリした気分だ。


「店長?て……ん、ちょ」

背後から声がして振り返ると、おばさんが青ざめた顔をしていた。

ああ、そうだ。聞いておこう。

「お金盗りました?」

おばさんは呆然としたまま答えなかったので、もう一度尋ねた。

「お金を盗りましたか?」

するとおばさんは、ガクガクと頷いて、ポケットから二万円を取り出した。

人って見かけによらず、意外だよね。

お金を受け取るために、てくてくと近づくと、おばさんは膝を震わせて、尻餅をついた。
腰が抜けたらしい。


なんか、いいね。

みんなこういう気分を味わってるんだ。

「こ、ここ殺さないで」

おばさんの手から二万円を抜き取り、くるくると丸めた。

こうしたら、うまく入ると思うんだ。

「たすけ――」

ザシュッ。

胸を思い切り突いて、素早く抜くと血がピューと吹き出す。
そのせいで事務所が汚れてく……。


汚れてく。

ああ、汚れるんだね。

もっと輝かしい、僕とは違う血の色をしてるかと思ったけど、とっても汚いや。

「ごめんなさい、おっぱい触っちゃって」

これは不可抗力だと思う。
ハサミを刺そうとしたら、おっぱいが指に当たったんだ。

セクハラとか痴漢だとか、変態呼ばわりはされたくないので謝ったけれど、おばさんは仰向けに倒れた。

今度こそおっぱいに触れないように、丸めた二万円を差し込んだ。
傷口にすすっと入って、なかなか気持ちの良い感触だった。

他人に優しくしない奴らとは違って、僕は優しいからね。
とっても二万円が欲しいみたいだから、ちゃんとあげるよ。

さて、帰ろうと思ったけれど、このままだと捕まるかもしれない。

監視カメラ映像を見てみると、大学生の人は揚げ物をしてるみたいだ。お客さんはいない。

僕は、カメラ映像を保存する、外付けハードディスクを取り外し、カバンに詰め込んだ。

それから、てくてくと事務所を出て、何食わぬ顔で挨拶をする。

「お疲れ様でしたー」

すると返ってきたのは、短い言葉だった。

「うっす」

その言葉を聞いて、ふと思ったんだ。

いなくてもいいんだなーって。


僕に視線を向けることもなく、機械的に言葉を返しただけ。

なーんてね。

そんなことじゃ、僕は怒らないよ。

ただ、消しても良い理由を探してるだけさ。


どうせ君も、優しさを持たない他人なんでしょ?

いいじゃんね、消してもさ。

いいじゃんね、僕は僕のことで必死なんだから。

いいじゃんね、破壊衝動のままに生きても。


誰もダメだって言わなかったんだし。
誰も助けてくれなかったんだし。
誰も彼もが僕を見下して、一時の楽しさのために、こき下ろしていただけだもんね。

いいじゃんね、これからは僕が、その立場になってもさ。

「ん?どうしたんすか?」

僕は彼の真横に立っていた。

ハサミを背中に隠して、ニコリと笑って。

「お疲れ様でした」

そう言って、彼の一生に労いの言葉を贈った。

僕は優しいからね。
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