VTuberなんだけど百合営業することになった。

kattern@GCN文庫5/20新刊

文字の大きさ
36 / 79
第5章 届け! これがVTuberの全てをこめた「クリア耐久配信」だ!

第36話 お泊まりばにずん晩酌配信(前編)

しおりを挟む
「……ところで、アンタなんか臭くない?」

「……あ、やっぱり臭いますかね?」

「臭いますかねって⁉ ちょっと、よく見たら昨日と同じ服じゃない⁉」

「…………うへへ」

 幸せな時間は唐突な現実感と共に終わりを迎えた。
 私の体臭に気がついたずんだ先輩がそっと私を突き放す。

 ジロジロと眺めるのは私の服装。
 お察しの通り、昨日の夜から私の衣装は変わっていない。
 どうしてか。それはとても単純な話。

「コラボ配信したあと、そのまま疲れてうみの家で寝ちゃって。起きたら、先輩との約束の時間でだったんですよね。着替えを取りに帰る暇もなくって」

「暇もなくってじゃないわよ! うっかりベッドに座らせちゃったじゃない!」

「そんな! 人をまるで汚物みたいに!」

 あわてて私を立ち上がらせるずんだ先輩。
 彼女はすぐさま奥のクローゼットをあさるとそこから紙袋を取り出した。
 中には、バスタオルと無地のTシャツ、あと、新品のパンツとスポーツブラ。歯ブラシやカミソリなんかも入っていた。

 間違いない!
 これはお泊まりセット――!

「今すぐお風呂に入りなさい! 女の子がお風呂に入らないなんてダメよ!」

「……私、お風呂は三日に1回とかですけれど?」

「よし、さっさと引っ越し先を決めるわよ。それと、女の子の文化的に最低限の生活がどういうものか、みっちり教えてあげるわ」

 どうやら私は女の子失格だったらしい。
 尊敬している先輩から言われるとしんどいな。

 (´・ω・`)

 痛いくらいに背中を押してずんだ先輩は私をバスルームに放り込んだ。
 先輩の家でお風呂を使わせてもらうなんて申しわけない。「すぐに銭湯に行きますから」と主張する私を、「いいからとっとと入れ!」とずんだ先輩は一喝した。

 とほほ。
 私はあきらめて服を脱ぐ。
 すると、ずんだ先輩がすかさず脱衣所に入ってきた。

 お決まりの「きゃあ、先輩のエッチ」みたいな流れを一切無視して、彼女は浴室に私を押し込む。そして、磨りガラスの引き戸をぴしゃりと閉めた。

「私はアンタの服を洗濯しておくから、ゆっくり湯船につかってなさい! 待って、その前にシャワーを浴びて! ちゃんと汚れを落としてから湯船につかって!」

「だからぁ、人をばい菌みたいに言わないでくださいよぉ!」

「ばい菌みたいな状態でしょ!」

「ひどい! さっきまでやさしかった先輩はどこに!」

「十分やさしいでしょ! そのまま家の外に放り出さないだけ感謝しなさい!」

 お風呂に入らないと出られない先輩の家。
 かくして私はしぶしぶ先輩の家でお風呂に入らせてもらった。

 彼女の家のお風呂はジャグジーだった。
 シャンプーなどもかなりお高いものだった。
 なにより浴槽にアロマが置かれているのが新鮮だった。

 女子力たっけぇ。

「ずんだ先輩、お風呂、ありがとうございます」

「いいわよ。それより、ドライヤーとか保湿剤とかお風呂上がりのケアに必要なもの準備しとくから。上がったらすぐにダイニングキッチンに来なさい」

「……まだ続くんですかこれ?」

「当然!」

「とほほ」

「まったく、アンタの女子力のなさには、毎度のことだけど驚かされるわ」

「ご迷惑をおかけいたします」

「いったいどういう生き方してたらそんな風になるのよ。まさかアンタ、女じゃない――ってことはないわよね」

「なに見てるんですかぁ!」

 磨りガラスの向こうに浮かぶずんだ先輩のシルエット。
 その手がつまんでいるのは一張羅(おでかけ用)のブラジャー。

 やめてください。
 そんなのジロジロ見ないでください。
 うみ(DStarsのセクハラ常習犯)じゃないんだから。

 あれ?
 けど、ちょっと待て――?

「先輩? 服、洗濯しちゃうんですか?」

「そうよ。この洗濯機、乾燥機能つきだから。3時間もすれば乾くわ」

「3時間ですか?」

「なにか問題でも?」

「いや、まぁ、その……今日も一応、配信の予定を告知しておりまして」

「あら、そうなの? 何時から?」

 これだけお洒落なお風呂場だ。
 時計があるかなと探してみたが、残念なことに見つからなかった。

 そうこうしているうちに軽やかな電子音が脱衣所から響いた。
 水が流れる音も一緒に――。

「えっと、一応、今日の20時からなんですけれど」

「20時ね。今、17時47分だから」

「服が乾くのが3時間なので」

「「……帰れるのは21時くらいか」」

 あれ、間に合わなくない?
 そう私たちが気づいた時には、洗濯機が「ゴウン」と音を立てて回りだしていた。

 やってしまった――。

「ちょっと待って⁉ アンタ、耐久配信のあとなのに配信するつもりだったの⁉」

「まぁ。元々、スケジュール告知してましたし」

「くそっ! 流石は私が見込んだVTuber! 配信にかける熱意が違う!」

「それよりどうしましょう先輩? また配信環境を貸してもらってもいいですか?」

「それは構わないけど、アンタまたゲーム機持ってないんじゃないの?」

「そうでした!」

「もう1回、ミニファミコンで併走は、流石にファンも飽きるわよ……」

 今度こそ万事休すか。
 川崎ばにら、痛恨の配信ドタキャン。
 金盾配信からここまで、危ない橋を渡ってきたがそれもここまで――。

 そう思った時、ずんだ先輩が急に浴室の扉を開けた。

「きゃあ! ずんだ先輩のエッチ!」

「バカなこと言ってんじゃないの!」

「けど、びっくりするじゃないですか! いきなりお風呂を覗かれたら!」

「いいから! ばにら、アンタ今年で何歳?」

「ピッチピッチの18歳な、レースクイーンバニーガールバニよ」

「実年齢!」

「……26歳です」

「成人しているから飲酒してもヨシ!」

 どうしてヨシなのか。
 なにがヨシなのか。
 けれども、ずんだ先輩が何をする気なのか分かってしまった。

 だってVTuberだから。

「ばにらちゃん、ウイスキーはロックと水割りどっち派?」

「ばにらはどっちかっていうと、ミルク派バニですよ……」

 ずばり――「お泊まり晩酌配信」だ!

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

先行連載しているカクヨムにて本日最終話更新しております。
もし続きが今すぐ気になる……という方は、よろしくお願いします。m(__)m

https://kakuyomu.jp/works/16817330649719403871
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...