ある冒険者たちの物語

ひろきちさん

文字の大きさ
10 / 21
第1章 僕は君を守りたかった

9. -回想②-

しおりを挟む
「今の魔法はあいつが?」
「だね。まぁあんまり歓迎されている様には見えないよね」

俺の横で攻撃態勢を取りながらリリアが答えた。

「気をつけろ。今の魔法・・・かなり高位の術式だ。
 それにあいつの横に居るのは・・・」
「はい。フェンリル・・・ですね。それも2頭」

ローブの男の左右には瘴気を纏い魔獣化したフェンリルが男を守るように待機している。
俺はまだ戦ったことが無い魔獣だけど間違いなく強敵なはずだ。
それにあのローブの男は、"前の冒険者"って言ったな・・・もしかしてメルト達は既にあいつらに?

「良くわからないけど今の攻撃が私たちを狙ってたのは確実だよ!
 とりあえず私が前に出るからアレクはユンハの治療をお願い!」
「あぁわかった。リリアも無茶はするなよ」
「ふん!誰に言ってるのさ。アメリ援護頼むよ!」
「了解!」

そう言いながらローブの男と魔獣へと向かい走り出すリリア。

今日はパーティの回復師であるリーフが居ないから治癒魔法を使えるのは俺だけだ。早くリリア達の支援にまわらないとあいつらでもあの相手では危険だ。
それにローブの男もさっきの魔法からしてかなりの手練れのはず。

俺はユンハさんに駆け寄り傷口にポーションを振りかけつつ治癒魔法を施した。
これで回復スピードが少しは上がるはず。

「ユンハさん大丈夫ですか!」
「あぁ何とかな。それよりあいつらはかなり危険だ。手足を動かせるレベルでいい早く回復を頼む」
「はい!」

俺がユンハさんの回復を始めた頃、アメリは杖を掲げローブの男と魔獣に向けて火球を放っていた。

「火の精霊よ!力を貸して!ファイヤーランス!!」

アメリの呪文に合わせ幾つもの炎の槍がローブの男と魔獣に放たれる。
初級の呪文で単体の攻撃力はそれ程高い魔法ではないけど速射が出来るし熟練度が上がればそれだけ威力も上がる。
もちろんアメリのファイヤーランスは並みの魔法使いが使う火魔法よりもはるかに高い威力を有している。
そして、魔法の直撃に一瞬意識が向いた相手にリリアが渾身の一撃を叩きこむ。

「これで決める!フレイムナックル!!」

炎に包まれたリリアの拳がローブの男に迫る。
リリア自身は魔法が苦手でほとんど使うことは出来ないけど身に着けているナックルに炎系の魔力が付与されているため微力な魔力を送ることでも発動するようになっている。
いわゆる魔道具という奴だ。
あの攻撃は並みの敵なら一撃で粉砕する。

「なっ!?」
「瘴気の壁?」

が、リリアの拳は男が放った瘴気の壁によって阻まれた。
そして攻撃直後の無防備なリリアとフォローに入ろうとしたアメリにローブの男は無詠唱で魔力波を放った。

「「きゃぁ!」」

魔力波を受けたリリアとアメリは後方に弾き飛ばされその場に倒れこんだ。
リリアもアメリも上級ランクに分類されるランクBの冒険者だ。
それを一瞬の攻防で無力化してしまった。

「嘘・・・だろ」

フレイムナックルはリリアの最大級の技である。
多分最初から決めに行ったんだ。
それを防いだ・・・それも瘴気の壁で。
もしかしてアメリの魔法もあの壁が防いだのか?

・・・考えたくはないけどあのローブの男も魔獣なのか?
でも・・・あいつ俺達と同じ言語でしゃべってたぞ?
瘴気に取り込まれずに意思を持って行動してるって言うのか?

「アレク!俺の回復はもう大丈夫だ!リリアやアメリの援護を!あの男はヤバいぞ!」
「はい!」

一瞬呆けてしまっていた俺をユンハさんが現実に引き戻してくれた。
確かにこのままじゃ2人が危ない。

アメリの火属性の魔法は奴に通じなかった。
だとするとアメリの火力に遠く及ばない俺の魔法じゃ歯がたたない。

それなら・・・俺は自身に攻撃力アップとスピードアップのバフをかけると同時に剣に冷気をまとわせ一気にローブの男との距離を詰め切りかかった。

「くそっ」

わずかにローブを切り裂くことは出来たが、男は俺の渾身の一撃も余裕でかわした。

「ほぉ先程の武闘家に魔導士も中々の火力でしたが今度は魔法剣士ですか。中々楽しませてくれるパーティですね」
「余裕でかわしておいて良く言うぜ!」

こっちはバフで能力値をアップしてギリギリで攻めてるって言うのに軽くかわしやがって。
反転して更に切りつける俺の剣もかわされた・・・でも剣は奴に届いた。
それに・・・やっぱり両隣の魔獣は動かないな。

俺の攻撃を余裕でかわしつつローブの男はさらに話しかけてくる。


「そして、我に攻撃を仕掛けてきた判断も正しい」
「やっぱり、お前が魔獣を操っているのか!」
「ほぉ気が付いたか」

やはりそうか。
魔獣は本能のままに動く。それなのに今こいつの両隣に居る魔獣は全く動かない。まるでローブの男の指示を待つように・・・

「いいのかよ。バラしちまって」
「問題なかろう?お前はここで死ぬんだからな」
「くっ」

俺の剣を弾きつつ再びローブの男が魔力波を放った。
ギリギリのところでかわしたものの俺は態勢を崩し倒れこんでしまった。

「しまっ!」
「ふん 死「アイスアロー!」」

とどめを刺そうとしたローブの男に無数の氷の矢が突き刺さる。
アメリの魔法だ。
俺は素早く起き上がり後方に居たアメリの隣に移動した。

「アメリ助かった」
「まだです・・・多分効いてない」
「ふふふ・・・面白い。実に面白いですね」

氷の矢に貫かれたはずのローブの男は不気味に笑い俺達の方に体を向けた。
ローブには無数の穴が開いているが意に介さないように話しかけてくる。

「中々やってくれますね。先程の魔力波で倒したと思ってたんですけどね」
「あいにく様。私もそれなりに魔力耐性はあるのよ。やられたふりしてチャンスを狙ってたの」
「なるほどなるほど。倒れていれば助かったものを・・・」

そう言いながらローブの男は不気味な笑顔のまま右手をアメリの方に向けた。
そして・・・

「なっ」

一瞬だった。
男の指先から無詠唱で放たれた光がアメリの胸を貫いた。
糸の切れた人形の様に血を流しながらその場に倒れるアメリ。

「ア、アメリ!!」
「今度こそ死にましたかね。
 ふぅ・・・それにしても思ったより時間が掛かってしまったみたいですね。
 本当はもう少し君たちと遊んでいたいんだが、もうひと仕事あってね」
「もうひと仕事?」
「あぁ。今から近くの村を焼き払わなくてはならないんだよ。
 だから悪いけどそろそろお暇させてもらうよ」
「何・・・・だと?」

近くの村?それってアジュールじゃないのか?

「じゃ後は任せたよ」

そう言いながら右隣りに居た魔獣の鼻先を男が撫でると魔獣は咆哮をあげ鋭い目を俺達に向けてきた。
そして、ローブの男ともう1頭のフェンリルはふわりと浮かび上がると消失した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...