上 下
4 / 4

第四話

しおりを挟む
第四話

「あらあら…ユナ結婚おめでとう、和人さんユナの事をどうかよろしくお願いします」
「いっいえこちらこそどうかよろしくお願いします」
「ふふっどう素敵な人でしょ?」
「そうねユナの事をちゃんと大事にしてくれそうな人で安心したわ」
結婚してから1年と半年が経った頃
 和人さんがこの時間に帰って来てくれたのは本当に久しぶりだったのもあって私はつい気持ちが舞い上りながら和人さんを出迎えた
「和人さんお帰りなさい」
 私がそう言うと
「ああ…」
 和人さんは道端の小石を見るような目で私を見つめてきた
「ご飯できて…」
「食ってきたから要らないというかもう二度と作らないでくれ」
 和人さんは私の料理はもう食べたくない…みたい…
「あの今度の金曜日に静岡の温泉にい…」
一緒に行きませんかと言おうとしたんだけど…あはは……
「五月蠅いなぁ不倫相手と温泉に行きたきゃ行けばいいだろ…クソッ」
 和人さんがそう私を怒鳴りつけた、でも不倫旅行ってどう言う
「どう言う…」
 私がそう言うと和人さんは
「…………」
 無言で私を侮蔑と嫌悪を含んだ瞳で睨まれた
「ごめんなさい…」
どうしてこんな事になっちゃったんだろう…
「…………」

  ――和人視点――回想――

僕たちの関係が壊れ始めたのはあの日あの場所で親友から祐奈さんの浮気を知ったあの時から壊れ始めたんだ
「なあなあ和人よぉお前の嫁さん浮気してるみたいだぞ」
「はぁお前そんな訳ないだろ冗談は休み休み言えよな」
「いやいや嘘じゃないってこれが証拠の写真」
「え…じゃあまさか本当に祐奈は…」
「ああ…残念ながら…なあんなに綺麗で浮気何てしなさそうだったのに…」
「そうか…分かった祐奈の不倫の証拠を集めて離婚する…」
「分かった俺が何か出来る事は何かないか?」
「ありがとうでもしばらく一人にしてくれないか?」
「ああ…分かった自殺だけは絶対にするなよ」
「はは…はやっぱわかっちまうか分かった絶対に自殺はしない…ありがとな」
 俺がそう言うと親友は
「はっ水臭いぜそれに俺とお前の仲だろ、まあせいぜい一人で泣いてわめいてすっきりする事だなっ」
 そう言って親友は部屋から出て行ったのを見届けて僕は……
「何でなんだよあんなに優しくてそれで結婚して遅くはなったけど僕が指輪をプレゼントしたら泣いて喜んでくれてさ、僕達抱き合ってキスしてずっと一緒にいようって…あんなに僕達愛し合ってたのになんで…何でなんだよ!!」
「何で不倫なんて…それに何であんな平気な顔をして僕に愛してるなんて言えるんだよ…何で……」
 僕の中で祐奈とのこの一年間の思い出が駆け巡る…祐奈の幸せそうな笑顔が…楽しかったはずの幸せだったはずの祐奈との思い出が…今の僕には気持ち悪くて仕方がない…気を紛らわそうと開いた携帯の待ち受け画面の僕と祐奈が一緒に笑顔で映っている写真を見た瞬間に俺はトイレに駆け込んで胃の中の物を全て吐き出した、気持ち悪いキモチワルイきもちわるい。
「クソが何で僕がこんな目に合わなくちゃいけないんだよ…なんで僕は祐奈の事を信じていたのに…必ず祐奈と祐奈を寝取ったクソ男にこの報いを受けさせてやる…」
 そんなことを考えていた僕にとっての唯一の救いは祐奈とまだ一度も本番までしていなかった事だろう。
 その日から半年後、祐奈の不倫の証拠がついにそろって後はいつ祐奈を断罪するかを考えていると祐奈が俺には何も言わずに静岡行きのビジネスクラスの飛行機と静岡の温泉旅館に二人部屋に二人前の料理の予約をしているのが分かった恐らく浮気相手との不倫旅行でもするつもりなんだろう、予約がある日の前日に祐奈から話があるから今日は早く帰って来いと言われて来てみると祐奈は嬉しそうに僕を出迎えてくれた
「和人さんお帰りなさい」
「ああ…」
「ご飯できて…」
 祐奈が飯がどうのと言おうとした言葉を遮って僕はこう言った
「食ってきたから要らないというかもう二度と作らないでくれ」
 と言うか祐奈の作った料理なんて気持ち悪いし不倫をしてる奴のが物なんてコメの一粒たりとも絶対に食いたくない
「あの今度の金曜日に静岡の温泉にい…」
 祐奈が何か言い掛けたが不倫旅行についての言い訳なんて聞きたくもないそして僕はつい口を滑らした
「五月蠅いなぁ不倫相手と温泉に行きたきゃ行けばいいだろ…クソッ」
 俺はつい本音を言ってしまった
「何を言って…」
 祐奈が何か言っているが不倫の事が分からない演技をしながら流れる様に嘘を付く
「…………」
 祐奈は悲しそうな表情をしている気がするがそれも多分演技だろう
「ごめんなさい…」
 祐奈が下を向いたまま謝罪をして来るがそれも演技だろう
「…………」
それから一ヶ月後、祐奈は結局静岡へ行くことはなくそして温泉旅行の当日から僕が家に帰らなくなったんだ、僕が帰らなくなってから祐奈は自分の部屋にこもって出てこなくなったので、今日弁護士を交えて祐奈との離婚と示談の交渉をする為に僕の両親も呼んだ上で弁護士事務所で祐奈との話し合いが始まったのだが、最後にあった時から祐奈は一瞬誰か分からなくなってしまう程にやつれており雰囲気も明るく幸せそうでいつも優しい笑みを浮かべていた祐奈と今の祐奈は前よりも多少ぎこちなくはあるけど優しそうな笑みを浮かべていること以外は全体的にやせ細って何処か悲しそうなそれでいて何処か寂しそうな雰囲気をまとっているそのあまりの変わりように多少驚きはしたがが悪いのは祐奈なのだから僕は悪くないんだ……
「それでは今回皆さんに来て頂いたのは…」
「申し訳ありませんでした秋山家の皆様にも大変なご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございません.秋山さんのからの要求は全て受け入れます、風俗に落ちて一生苦しめと言うならその言う道りにする覚悟でございます」
 祐奈はそう言って土下座をし更に祐奈の発言に僕は勿論この場に居る祐奈を除いた全員が驚愕し硬直した
「えっあのそれでは浮気を認めた上で慰謝料三億円と更に離婚と秋山家の方々への接近禁止とこれを破った場合にはプラスで75万円御支払い頂く事になりますが…」
「はい…分かりましたこちらに私の印鑑と署名をした離婚届があります三億円も車に用意してありますのでどうぞお受け取りください」
「は?何でそんなに準備がいいんだよ」
「それは…いつかこうなるんじゃないかと予想出来ちゃったから…あはは…は…」
そう言って祐奈は悲しそうに言った後で諸々の手続きを終わらせて祐奈が帰ろうとしたその時に母さんが祐奈にこう問いかけた
「何で祐奈は浮気何てしたの?」
「そう…ですね信じては…くれないでしょうけれど私は一度たりとも不倫をした事はないの…」
 反省したと思ったらすぐこれだ
「それが本当なら何でこうなる前に言ってくれなかったの?」
「だって私が気付いた時にはもう誰も私の話なんて利いてくれなかったし」
 それは…
「それは…それでも今みたいに言ってくれれば…」
「そう…でも私もう疲れちゃったんです…誰かを信じるのも信じて裏切られるのも…何もない様なら私は実家に帰らせてもらいますね…今まで有難う御座いました…」
 祐奈…
「あっおい!」
「和人さん今まで有難う御座いました少しの間でしたがあなたとの一緒に過ごした時間はとても楽しくて幸せでした、今日までずっと大好きでした…和人さん真理子さんとどうぞお幸せに…今度は最後まで信じてあげてくださいね…それではさようなら……」
 そう言って祐奈は去っていった祐奈は僕が祐奈の事を信じられなくなって少しした頃に付き合い始めた真理子の事を知っていたんだ…知った上でそれでも態度を変えずにずっと僕の事を…僕はなんて事をしてしまったんだ…でも今更それに気が付いてももう遅いのだろう。
 あれから数日が経って僕は祐奈さんのお姉さんが住んでいたマンションに行くとお姉さんの部屋があったところは空室になっていたもう祐奈さんに会う方法は無いんだろうか…いや今更あってももう手遅れ…か……
 
 

 

 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

My Angel

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

勇者が魔王に堕ちていくそんな話

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...