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本編
1.婚約破棄宣言
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天高く初秋のよく晴れた日のこと。
王立学園が誇る豪華絢爛な大ホールのど真ん中で、いかにも王族という出立ちをした金髪碧眼の美青年が声を高らかに宣言する。
「グレイシア・パール侯爵令嬢! あなたとの婚約は只今をもって破棄する!」
王立学園の卒業パーティーの最中、クラウン殿下は言い放った。
ちなみに彼は私の婚約者だ。
いや、今さっき婚約破棄されたらしいので、元婚約者かもしれない。
辺りはシーンと静まり返り、皆がこの突然のできごとを固唾を呑んで見守っている。
なぜこんなにも、この場に緊張が走っているかと言えば、それは殿下の傍らに薄桃色の髪をした少女の姿があったからで……。
彼女は最近殿下と親密な関係だと噂され、この学園で知らない人が居ないのではと言うほど有名な人だ。
私はとうとうこの時が来たかと身震いした。
ただ、なぜ今日この場所なんだとは思った。
自分の馬鹿さ加減を知らしめて立場が悪くなる事も厭わないこの所業。
どう考えても一国の王太子がやる事とは思えない。
今までの私ならどう挽回するべきか必死に考えただろう。
でももう、その必要もないとなると……。
途端にバカらしくなってきた。
だた、これをそのままにしては我が侯爵家の威信に関わる。
そんな思いから、とりあえず流れに乗ると決めた。
「クラウン殿下、理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」
どうせロクな事は言わないだろうけど。
「今さらとぼけるのか? まぁ良い、聞きたいというのなら聞かせてやる」
殿下はズバリと人差し指を私に突き出し言い放つ。
「お前がチャボットを殺しただろう!」
「はぁ?」
「知らないとは言わせないぞ、お前がチャボットの小屋へ入って行くところを見ているものは複数人いるのだ」
「それは……そうでしょうね」
私は予想外の展開に遠い目で天井を見上げた。
王立学園が誇る豪華絢爛な大ホールのど真ん中で、いかにも王族という出立ちをした金髪碧眼の美青年が声を高らかに宣言する。
「グレイシア・パール侯爵令嬢! あなたとの婚約は只今をもって破棄する!」
王立学園の卒業パーティーの最中、クラウン殿下は言い放った。
ちなみに彼は私の婚約者だ。
いや、今さっき婚約破棄されたらしいので、元婚約者かもしれない。
辺りはシーンと静まり返り、皆がこの突然のできごとを固唾を呑んで見守っている。
なぜこんなにも、この場に緊張が走っているかと言えば、それは殿下の傍らに薄桃色の髪をした少女の姿があったからで……。
彼女は最近殿下と親密な関係だと噂され、この学園で知らない人が居ないのではと言うほど有名な人だ。
私はとうとうこの時が来たかと身震いした。
ただ、なぜ今日この場所なんだとは思った。
自分の馬鹿さ加減を知らしめて立場が悪くなる事も厭わないこの所業。
どう考えても一国の王太子がやる事とは思えない。
今までの私ならどう挽回するべきか必死に考えただろう。
でももう、その必要もないとなると……。
途端にバカらしくなってきた。
だた、これをそのままにしては我が侯爵家の威信に関わる。
そんな思いから、とりあえず流れに乗ると決めた。
「クラウン殿下、理由をお聞きしても宜しいでしょうか?」
どうせロクな事は言わないだろうけど。
「今さらとぼけるのか? まぁ良い、聞きたいというのなら聞かせてやる」
殿下はズバリと人差し指を私に突き出し言い放つ。
「お前がチャボットを殺しただろう!」
「はぁ?」
「知らないとは言わせないぞ、お前がチャボットの小屋へ入って行くところを見ているものは複数人いるのだ」
「それは……そうでしょうね」
私は予想外の展開に遠い目で天井を見上げた。
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