歌集「呪い歌」

降羽 優

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第31首: この壁のシミは誰かに似てないか? 拭いても消えぬこの壁にシミ

第32首: 浴室で刻んだ遺体運び出す 何故か足りない 右の手首が

第33首: 人形はいつからここに置いてある? 微笑みがほら、少し変わった

第34首: 霧雨に街灯のもと揺れている 傘もささずに浮かぶ人影

第35首: 金縛り見えないはずの暗闇に 確かに光るあの目が二つ

第36首: 燃え尽きた屋敷の地下の扉には 刻まれ残る深き爪痕つめあと

第37首: 事故現場 曲がったままのカーブミラー 気のせいかしら何か見えない?

第38首: しわがれた声の老婆が語りだす あの惨劇の悲しい事実

第39首: 浅瀬でも溺れる人はいるらしい 鑑識が持つからまった髪

第40首: 窓ガラス映るいとしきキミの顔 泣きながら今、拭き取って消す
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