3 / 74
第一章 魔法使いの弟子
#2
しおりを挟む
気が付くと、男は布張りの簡素な長椅子に寝かされていた。傷は手当されている。剣や持っていた荷物も、傍らに置かれていた。
痛む傷口を庇いながら身を起こすと、先程の少年と視線がかち合った。テーブルの向こうの椅子に腰かけて足を組み、目深に被ったフードの下からじっとこちらを見据えてくる。
「……君が助けてくれたのか。改めて礼を……」
しかし、言いかけた男を少年は容赦なく遮る。
「起きたなら答えてもらおうか。これは何だ」
少年は顎でテーブルの上を指す。
それは、男が持ち込んだ、一振りの剣だった。鞘は銀細工で飾られ、高価なものであることが一目でわかる。柄には彼らの暮らすレーヴェ王国王家の紋章である、有翼の獅子が刻まれていた。
そして、剣の下には様々な文字が書かれた円――おそらくは魔法陣――が描かれた紙が敷かれている。男が持っていた時には、剣からはなんとも言えない、触れていると気分が悪くなるような気配が漂っていたのだが、魔法陣のおかげか、緩和されているようだった。
「この剣にどんな術がかけられているのか、貴殿にはわかるのか?」
「聞いているのはこちらだ。答えろ」
少年はひたとこちらを睨みつけてくる。その視線は刃のようで、口調は有無を言わさないものだった。
男は思わず気圧され、姿勢を正すが、
「エディ。あまり人を脅かすな」
奥の扉が開かれ、一人の女性が現れた。寝間着姿で、怪我でもしているのか、動きがぎこちない。しかし、その目には力があり、顔に刻まれた皺は年齢を感じさせるが、その振る舞いからは迫力が感じられた。
「師匠……。おとなしく寝ていてくださいよ」
エディと呼ばれた少年は、呆れたような視線を女性に向ける。
「そんなものを持ち込まれて、おとなしくしていられると思うか」
女性は身体を引きずるようにやってきて、少年の隣の椅子に、背中を庇いながら腰かけた。
「弟子の無礼は詫びよう。ともかく、話を聞かせてもらいたい。わたしは魔術師ベアトリクス。あれは弟子のエドワード。貴殿はもしや、わたしに用があって来たのではないか?」
「その通りです」
男は居住まいを正す。
「わたしは第二王子ユリウス殿下の近衛騎士、アーネスト・エインズワースと申します。このような形で押し掛けた無礼を、どうかお許しください。ベアトリクス殿、あなたのお力を貸していただきたいのです」
ふむ、とベアトリクスは顎に手を当てる。
「話が長くなりそうだな。エディ、茶でも淹れてもらおうか」
尚もアーネストに厳しい視線を向けていた少年は、言われて渋々という風に席を立った。
痛む傷口を庇いながら身を起こすと、先程の少年と視線がかち合った。テーブルの向こうの椅子に腰かけて足を組み、目深に被ったフードの下からじっとこちらを見据えてくる。
「……君が助けてくれたのか。改めて礼を……」
しかし、言いかけた男を少年は容赦なく遮る。
「起きたなら答えてもらおうか。これは何だ」
少年は顎でテーブルの上を指す。
それは、男が持ち込んだ、一振りの剣だった。鞘は銀細工で飾られ、高価なものであることが一目でわかる。柄には彼らの暮らすレーヴェ王国王家の紋章である、有翼の獅子が刻まれていた。
そして、剣の下には様々な文字が書かれた円――おそらくは魔法陣――が描かれた紙が敷かれている。男が持っていた時には、剣からはなんとも言えない、触れていると気分が悪くなるような気配が漂っていたのだが、魔法陣のおかげか、緩和されているようだった。
「この剣にどんな術がかけられているのか、貴殿にはわかるのか?」
「聞いているのはこちらだ。答えろ」
少年はひたとこちらを睨みつけてくる。その視線は刃のようで、口調は有無を言わさないものだった。
男は思わず気圧され、姿勢を正すが、
「エディ。あまり人を脅かすな」
奥の扉が開かれ、一人の女性が現れた。寝間着姿で、怪我でもしているのか、動きがぎこちない。しかし、その目には力があり、顔に刻まれた皺は年齢を感じさせるが、その振る舞いからは迫力が感じられた。
「師匠……。おとなしく寝ていてくださいよ」
エディと呼ばれた少年は、呆れたような視線を女性に向ける。
「そんなものを持ち込まれて、おとなしくしていられると思うか」
女性は身体を引きずるようにやってきて、少年の隣の椅子に、背中を庇いながら腰かけた。
「弟子の無礼は詫びよう。ともかく、話を聞かせてもらいたい。わたしは魔術師ベアトリクス。あれは弟子のエドワード。貴殿はもしや、わたしに用があって来たのではないか?」
「その通りです」
男は居住まいを正す。
「わたしは第二王子ユリウス殿下の近衛騎士、アーネスト・エインズワースと申します。このような形で押し掛けた無礼を、どうかお許しください。ベアトリクス殿、あなたのお力を貸していただきたいのです」
ふむ、とベアトリクスは顎に手を当てる。
「話が長くなりそうだな。エディ、茶でも淹れてもらおうか」
尚もアーネストに厳しい視線を向けていた少年は、言われて渋々という風に席を立った。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる