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第二章 逆光の少女
#3
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寝静まった街の中を、二人はひたすらに駆ける。
背後からは先程の襲撃者二人が迫り、細いナイフを投げてくる。それを避けても、どこからか魔術師が狙撃してくる。しかも、魔術師の攻撃は街に被害が出ても構わないと思っているような派手なものだった。
「なりふり構わないつもりか、くそっ」
エドワードは魔術による攻撃を防ぐのに手いっぱいのようだった。
「場所を変えよう!」
街に被害が出るのは避けたい。二人は街の外へ向けて走った。
街を出て、開けた場所に移った。
身を隠すものがなくなったが、それは相手も同じだ。
しかし、敵が使うのはこちらの得意とする両刃剣より刃渡りの短いダガーや飛び道具。剣術でなら引けは取らない自信があるが、戦い慣れない相手である上に、アーネストは怪我を負っていて万全の状態ではない。おまけに、魔術による攻撃も警戒しなくてはいけない状況では、こちらが不利だった。
上空から光の矢が降り注ぐ。エドワードがそれを防御する間に、武器を持った敵が肉薄してくる。アーネストがその刃を受け止めるが、敵も素早い。飛び退いてすぐに態勢を整え、再び迫ってくる。
「厄介だな……っ、この攻撃、どこから……!」
どちらかだけなら相手できる。しかし、目の前の敵にあと一歩のところで刃が届くという時に、光の矢に阻まれてしまう。光の矢に対処している隙に、敵の刃が迫る。
「くっ……」
アーネストは肩で大きく息をする。
「よっぽど俺たちを行かせたくないらしいな」
防御を続けるにも限界がある。かといって、こちらが決定打を繰り出すこともできない。
「この光の矢を撃っている魔術師をどうにかしないと……!」
言いながら、エドワードは剣を大きく振るう。その剣先から鋭い一陣の風が生まれ、敵を吹き飛ばした。そのまま止めを刺そうとするが、またしても光の矢が降ってくる。
このままではやられる。
アーネストは、先の戦闘で負った傷が開いていた。動きが鈍いことは、おそらくエドワードにも気付かれている。前に出て、ほとんど一人で敵の攻撃を捌いている。その手腕は舌を巻くものがあったが、剣術と魔術の二つの武器を持っていても、時間と共に負担は増していく。
アーネストは一つの決断をした。
「エディ。頼みがある」
エドワードが怪訝そうに視線を向ける。
「なんだ、こんな時にっ」
敵の攻撃をいなしながら、エドワードは忌々しげに言う。
「ここは俺が引き受ける。君は行ってくれ」
言われたエドワードは、一瞬目を見開く。
「冗談はよせ。俺が一人で砦に行ったところで、入れてもらえると思うのか?」
エドワードは障壁で自分たちを包み、話をする猶予を作る。
「ベルンハルト卿が呼ぼうとしていたのは君だ。ユリウス殿下の剣を持っていれば、問答無用で殺されたりすることはないだろう」
それに、とアーネストは付け加える。
「……女性に手荒な真似はしないはずだ」
それを聞いた途端、エドワードは眉をひそめ、アーネストになんとも言えない視線を向けた。
「……なんだ、気付いていたのか」
「見ていればわかる……と思うが」
言われたエドワードは、チッと舌打ちを漏らす。
「却下だな。それじゃあ、王子を助けるという目的が達成できるかわからないだろう」
敵は障壁が解けてこちらに隙が生まれるのをじりじりと待ち構えている。
「だめか。やはり」
「当たり前だ。馬鹿なのか」
容赦のない少年――いや少女の言葉に、アーネストは苦笑する。
その次の瞬間、先程までより強力な光の矢が、二人の頭上に降り注いだ。エドワードの障壁は、辛くもそれを防いだ後、ガラスの割れるようなか細い音を立てて霧散した。
何かに気付いた様子で、エドワードは街道から逸れたある一点を見つめる。そして、
「舌を噛むなよ」
言うやいなや、アーネストの怪我をしていない方の肩を担ぎ、夜空に向かって大きく跳躍した。
背後からは先程の襲撃者二人が迫り、細いナイフを投げてくる。それを避けても、どこからか魔術師が狙撃してくる。しかも、魔術師の攻撃は街に被害が出ても構わないと思っているような派手なものだった。
「なりふり構わないつもりか、くそっ」
エドワードは魔術による攻撃を防ぐのに手いっぱいのようだった。
「場所を変えよう!」
街に被害が出るのは避けたい。二人は街の外へ向けて走った。
街を出て、開けた場所に移った。
身を隠すものがなくなったが、それは相手も同じだ。
しかし、敵が使うのはこちらの得意とする両刃剣より刃渡りの短いダガーや飛び道具。剣術でなら引けは取らない自信があるが、戦い慣れない相手である上に、アーネストは怪我を負っていて万全の状態ではない。おまけに、魔術による攻撃も警戒しなくてはいけない状況では、こちらが不利だった。
上空から光の矢が降り注ぐ。エドワードがそれを防御する間に、武器を持った敵が肉薄してくる。アーネストがその刃を受け止めるが、敵も素早い。飛び退いてすぐに態勢を整え、再び迫ってくる。
「厄介だな……っ、この攻撃、どこから……!」
どちらかだけなら相手できる。しかし、目の前の敵にあと一歩のところで刃が届くという時に、光の矢に阻まれてしまう。光の矢に対処している隙に、敵の刃が迫る。
「くっ……」
アーネストは肩で大きく息をする。
「よっぽど俺たちを行かせたくないらしいな」
防御を続けるにも限界がある。かといって、こちらが決定打を繰り出すこともできない。
「この光の矢を撃っている魔術師をどうにかしないと……!」
言いながら、エドワードは剣を大きく振るう。その剣先から鋭い一陣の風が生まれ、敵を吹き飛ばした。そのまま止めを刺そうとするが、またしても光の矢が降ってくる。
このままではやられる。
アーネストは、先の戦闘で負った傷が開いていた。動きが鈍いことは、おそらくエドワードにも気付かれている。前に出て、ほとんど一人で敵の攻撃を捌いている。その手腕は舌を巻くものがあったが、剣術と魔術の二つの武器を持っていても、時間と共に負担は増していく。
アーネストは一つの決断をした。
「エディ。頼みがある」
エドワードが怪訝そうに視線を向ける。
「なんだ、こんな時にっ」
敵の攻撃をいなしながら、エドワードは忌々しげに言う。
「ここは俺が引き受ける。君は行ってくれ」
言われたエドワードは、一瞬目を見開く。
「冗談はよせ。俺が一人で砦に行ったところで、入れてもらえると思うのか?」
エドワードは障壁で自分たちを包み、話をする猶予を作る。
「ベルンハルト卿が呼ぼうとしていたのは君だ。ユリウス殿下の剣を持っていれば、問答無用で殺されたりすることはないだろう」
それに、とアーネストは付け加える。
「……女性に手荒な真似はしないはずだ」
それを聞いた途端、エドワードは眉をひそめ、アーネストになんとも言えない視線を向けた。
「……なんだ、気付いていたのか」
「見ていればわかる……と思うが」
言われたエドワードは、チッと舌打ちを漏らす。
「却下だな。それじゃあ、王子を助けるという目的が達成できるかわからないだろう」
敵は障壁が解けてこちらに隙が生まれるのをじりじりと待ち構えている。
「だめか。やはり」
「当たり前だ。馬鹿なのか」
容赦のない少年――いや少女の言葉に、アーネストは苦笑する。
その次の瞬間、先程までより強力な光の矢が、二人の頭上に降り注いだ。エドワードの障壁は、辛くもそれを防いだ後、ガラスの割れるようなか細い音を立てて霧散した。
何かに気付いた様子で、エドワードは街道から逸れたある一点を見つめる。そして、
「舌を噛むなよ」
言うやいなや、アーネストの怪我をしていない方の肩を担ぎ、夜空に向かって大きく跳躍した。
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