星天師〜星空の湊〜

下村美世

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宇宙へやってきた

太陽の宮⑤〜あんた、何者なの?〜

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せいてんし?
せいてんしって聖天子のこと?
漢文の教科書に出てきたけど…。

「聖天子ってどういうこと?」

「説明不足だったな」

男は申し訳なさそうに笑う。

さっきまで冷淡だったのに、急に人間味が溢れてくる。
この男、一体どんな性格なのだろうか。
コロコロ様子が変わってまるで分からない。


「言っておきますけど、私あんたがアポロンだと信じたつもり、ありませんから」

私はキッパリと言ってやる。

一応、ギリシャ神話やローマ神話、北欧神話などは、昔よくベッドの上で読んだ。

だけど所詮作り話だと思ってたから、神の存在など信じてはいなかった。

「太陽神アポロンだっていうなら、その証拠、見せてもらえます?」


でも、神っているんだ。
口では疑ってしまうけど、この体が証明していた。

先程よりは強張っていないけど、やっぱりアポロンを目前にすると震えがくる。

確証が得たい。

そして、カミサマがどうして私をここに連れてきたのか。
聖天子とは何か。


…知りたい。知りたくてたまらない。


「証拠だと?…仕方ないな、千鶴、私の後ろに隠れていなさい」

私はそれに素直に従う。
足が強張ってうまく歩けなかったけど、アポロンが支えてくれてアポロンの背面へと到着した。

前から見ると短髪だが、襟足を長く伸ばしていた。

奇抜な髪形だと思った。

「いいかい?よく見ておけよ」

アポロンが手をかざす。

すると白い空間の中に、炎が巻き上がった!

「え!?」

「私は太陽の神だから、炎の力があるんだ」

炎はどんどん勢いを増していく。

「…すごい」

ていうかどこから炎上がってるんだろう。


この白い空間は、どこが床だとか天井だとか分からないしそもそも酸素があるのか?
疑問だらけ。


だが、とりあえずは信じることにしてみよう。

「わかりました。信じます。…アポロン」



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