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第2章 時の使者
3話 歩院
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「歩院、さっきぶりだね。どんな具合?」
二人が訪れたのは第一武道場と呼ばれる第二武道場よりも広い部屋である。人形が6体ほどおいてあったりと剣道などをするための部屋であると感じさせた。
「冬馬殿!…それにすず殿も。いかがなさっただろうか」
そう大袈裟に反応したのは歩院であった。
短すぎず長すぎない黒髪と闇を映すかのような真っ黒の瞳。背丈は帝中ほどではないが平均以上に高く、肩幅も広い恰幅の良い姿をしていて、身につけている鎧は深みのある濃紺で窓からの夕日に照らされより美しく輝いて見えた。
「特に用事とかはないんだけどさ、まぁ様子見的な?」
冬馬は圧倒されることなく軽々しく歩院の質問に答える。
「様子見…」
「なにか気になることとかあった?欲しいものでもあったら何でも言って」
「気になること…は特に無いがあの棒が一振りで壊れてしまうのはちと不便かと」
「棒?」
歩院が指差す先にあったのは中結のあたりから上が崩壊している、あるいは弦自体がへし折れている竹刀であった。
「どうしたら竹刀を一振りで壊しちゃうわけ…?」
「シナイ…という名であったか。この部屋にあるだけのものはほとんどこうなってしまい…」
唖然とするすずに歩院は倉庫から壊れた竹刀を数十本ほど取り出した。どれもへし折れていて物によっては持ち手すら崩壊し竹刀だったかどうかすらわからないものにまで変形してしまったものさえあった。中にはモップやほうき、どこから取ってきたかわからないような鉄パイプも混ざっていてどれも崩壊していた。
「はい、今度からはこれを使ってみるといいよ」
冬馬は紫黒色の刀を作り出し歩院に渡す。怪しい輝きをしたその刀を歩院は物珍しそうに見る。
「…これは?」
「刀っていうんだけどね、多分歩院が欲しいと思ってるものだよ」
「カタナ…」
そう呟くとその刀を縦に勢いよく振りかざす。素振りだけでありながら衝撃だけでとてつもない風が吹き出し、それが壁にぶつかると乾いた破裂音と同時に崩壊する。外へと繋がる歪な穴ができてしまっていた。
「えええええ……」
これにはすずも驚きを超えて引き気味になり、無意識ながらに冬馬の後ろに避難する。
「これなら壊れないし存分に力も発揮できるんじゃないかな」
冬馬はすずの頭を撫でながら言うと歩院は刀を優しく撫でながら眺める。
「かのような素敵な刀を頂けたこと、心から御礼いたす。この御恩を返しめるよう御方々の期待に答えたく思っておる」
「そんな気負わなくていいよ。僕らは邪魔さえできればいいんだしさ」
そう言うと冬馬は校舎に向かい歩き出す。すずもまたそれに付いていき、後ろを小走り気味に追いかける。歩院は冬馬のその言葉の意味を追求することなく刀を握りしめたのだった。
二人が訪れたのは第一武道場と呼ばれる第二武道場よりも広い部屋である。人形が6体ほどおいてあったりと剣道などをするための部屋であると感じさせた。
「冬馬殿!…それにすず殿も。いかがなさっただろうか」
そう大袈裟に反応したのは歩院であった。
短すぎず長すぎない黒髪と闇を映すかのような真っ黒の瞳。背丈は帝中ほどではないが平均以上に高く、肩幅も広い恰幅の良い姿をしていて、身につけている鎧は深みのある濃紺で窓からの夕日に照らされより美しく輝いて見えた。
「特に用事とかはないんだけどさ、まぁ様子見的な?」
冬馬は圧倒されることなく軽々しく歩院の質問に答える。
「様子見…」
「なにか気になることとかあった?欲しいものでもあったら何でも言って」
「気になること…は特に無いがあの棒が一振りで壊れてしまうのはちと不便かと」
「棒?」
歩院が指差す先にあったのは中結のあたりから上が崩壊している、あるいは弦自体がへし折れている竹刀であった。
「どうしたら竹刀を一振りで壊しちゃうわけ…?」
「シナイ…という名であったか。この部屋にあるだけのものはほとんどこうなってしまい…」
唖然とするすずに歩院は倉庫から壊れた竹刀を数十本ほど取り出した。どれもへし折れていて物によっては持ち手すら崩壊し竹刀だったかどうかすらわからないものにまで変形してしまったものさえあった。中にはモップやほうき、どこから取ってきたかわからないような鉄パイプも混ざっていてどれも崩壊していた。
「はい、今度からはこれを使ってみるといいよ」
冬馬は紫黒色の刀を作り出し歩院に渡す。怪しい輝きをしたその刀を歩院は物珍しそうに見る。
「…これは?」
「刀っていうんだけどね、多分歩院が欲しいと思ってるものだよ」
「カタナ…」
そう呟くとその刀を縦に勢いよく振りかざす。素振りだけでありながら衝撃だけでとてつもない風が吹き出し、それが壁にぶつかると乾いた破裂音と同時に崩壊する。外へと繋がる歪な穴ができてしまっていた。
「えええええ……」
これにはすずも驚きを超えて引き気味になり、無意識ながらに冬馬の後ろに避難する。
「これなら壊れないし存分に力も発揮できるんじゃないかな」
冬馬はすずの頭を撫でながら言うと歩院は刀を優しく撫でながら眺める。
「かのような素敵な刀を頂けたこと、心から御礼いたす。この御恩を返しめるよう御方々の期待に答えたく思っておる」
「そんな気負わなくていいよ。僕らは邪魔さえできればいいんだしさ」
そう言うと冬馬は校舎に向かい歩き出す。すずもまたそれに付いていき、後ろを小走り気味に追いかける。歩院は冬馬のその言葉の意味を追求することなく刀を握りしめたのだった。
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