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プロローグ

パーティー・ロスト・ワン

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薄暗いダンジョン内に少女がただ一人座り込んでいた。
目の前には仲間である若き女性冒険者が倒れていた。
彼女の息遣いは乱れ、血の臭いが漂っていた。
少女はそれでも仲間のかたわらに座り続け、彼女の苦しみを分かち合おうとしていた。
「……あ……」
彼女は声にならない言葉を発していた。少女はいつのまにか手にしていた得物のウィップを足下へと置いていた。
それと同時に仲間のつぶやきに耳をかたむけ微笑んだ。
そう、彼女はいつも仲間たちのために戦ってきた。仲間たちとともに生きることを選び、傷つき、苦しむことも恐れなかった。
この少女よりも年上の女性冒険者は何かを言おうと必死でもがいているかのようだった。
少女は再び微笑んだ。
そのわずかに伸ばされた手を取って今までのことを思い返していた、
彼女にとって、仲間たちとの出会いはこの暗くて寒いダンジョンの中で輝かしい思い出となっていたのだった。
やがて、仲間は息を引き取った。この自分をここまで導いてくれた仲間の身体を優しく抱きしめ、静かに哀悼の意を表した。
彼女はいつも姉のようだった。
今日この日、今の時間まで身寄りのない少女にとっては唯一の家族であり、姉妹だったのだ…。

その後、少女は自分を律し、厳しい訓練を続けた。
彼女は仲間を守るために常に最高の状態で冒険に臨むことができるようになった。
そして、少女は、この悲しい出来事を忘れることはできなかったが、それを乗り越え、新たな冒険に挑む勇気を持った。

今から約四年ほど前、秋が終わろうとする季節の出来事だった。
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