叫び

四出 無衣葉

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歩み

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 やはり故郷は癒される。心も身体も。そこに有る人の営みや、それらを取り巻く気候や建造物などの環境を含め、私の中で癒しとしてある。

 あの場を離れるのは心苦しい。しかし、最初は私から離れた。目的を達成するために。救いはそれを応援してくれる家庭があること。私の友人(あちらは私を友人とすることも嫌がっているかもしれない)には子の意見を否定し、自らの所有物として抑圧し続けようとする親がいた。救いが有る家庭は本当に幸せなことだと思う。

 だからこそ、あの幸せな家庭に、こんなろくでもない奴が生きていて良いのか疑問に思うが。とはいえ、死にたいと思うわけでもなく、甘んじて生を享受するのだから、本当にろくでもないと改めて思う。

 まあ、そんなことはどうでもいい。いや、どうでもいいと言うのなら、この語りがそもそも誰の得にも成らないどうでもいい話なのだ。読む人が幾分いることは救いと言えるか。いや、恥とすべきか。

 故郷を離れ、もう一度学びの中で生きることになる。再び始まることになる、虚無の生活。虚無としてしまうのは私の無活動さが原因ではあるのだが。

 金があれば満たされるのか、時間があれば満たされるのか。満たされると感じるのは何を為したときか。それぞれで違っている。

 それを知っていながら、誰かからの助言を待っている。聞いたところで納得したことなど無いくせに。

 私の心が満ちるのは、家族との関わりや私に関わってくれた誰かとの交流の時。それはわかっている。

 それだけではいけない。人はいずれ死ぬのだから。私が先に死ぬのならばそれでもいい。最も早く会えなくなる可能性が高いのは私の親だろう。親は不慮の事故や病が無い限り、子より先に死ぬものである。

 私の心が欠けたとき、親が居なくなるだけで私は簡単に死んでしまうだろう。私の心の支えが、私の心を満たすものが家族と友人のみである限り。

 私は「生きたい」と思っている。いや、この言い方は正しくない。私は「死にたくない」と思っている。心が死んでしまえば、私は簡単に命を落とすだろう。そうするための方法など溢れているのだから。

 再開される今まで虚無であった時間を、虚無でなく、心満たされる時にするために、もう立ち止まっているわけにはいかないだろう。これは、私のためではない。

 自ら死を選ぶような子供を育てたという不名誉を親に押し付けないために。私を、こんな私を、未だに愛してくれる家族に、今度こそ見捨てられないために。

 ああいや、すべて私のためだったか?
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