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そして冒頭へ
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「それはねぇ、君の後ろにいた地縛霊に興味があったんだよぉ」
突然、俺の後ろから声が聞こえ、俺の両肩を鷲掴みして話しかけてきた。
俺は背筋がぞっとして振り返ってみると、首を90度傾けて俺の顔を凝視するオカルトブラザーズの川瀬ひろよの顔がまじかに迫っていた。
「あの地縛霊ってさぁ、死んじゃったけどぉ、どんな関係だったかなぇ」
俺の顔に川瀬ひろよの生暖かい吐息が思いっきりかかってきて今にも吐きそうだが、身体が金縛りにあったかのように動かない。
「ねぇ、もしかしてぇ君むかしここぇ来た事あるんでしょお?」
動かないけど、異形な化け物にたいする恐怖とそれを払いのけて逃げたくても逃げられない怒りで、俺の呼吸が一気に早くなり息が苦しい。
そんな俺の様子に意に介さずひろよは血走った眼を不規則にギョロギョロと動かすのだが、目は瞳孔は開きっぱなしで生気が感じられない。
「それも十数年前かな?あの地縛霊と出会って魅入られていたんじゃわないかなぁえ?あのぉ地縛霊の名前はぁ?」
「ま、マサル」
せめて明らかに生きたまともではないひろよの目を逸らしたいけど、それすらできず思わず口を漏らした。
「そぉかぁ、あの地縛霊、マサル君て呼ぶんだぁ。あのお寺で見かけた時はきみぃ危なかったんだよ?」
ひろよの口はニタニタと笑っているけど、目はみるみる陥没したかのように真っ黒で表情なんて読み取れなくて身の毛がよだつ。
そんな目を見た俺は魂が引っ張られそうで目をそらしたくてもそれができない。
「く、くるな!はな…れ…ぉ」
俺は思いっきり叫ぼうとするも、疲労と恐怖で肺が委縮して思うように声が出せずだんだんちいさくなっていき更に背筋が凍っていく。
もう、俺はここで呪い死ぬのか…。と俺は死を覚悟していた。
すると、突然缶のようなものが俺とひろよの顔の間をすり抜けて水たまりに落ちた。
よくみると、さっき小学生の頃のたかしが作ったお手製の爆弾だが、水たまりで火が消えていて爆発はしていない。
その爆弾が投げ込まれた先へと目線を移すと、小学生の頃のたかしが目の前にいた。
いつの間にか、俺は薄暗い夕方の森の中にいた。
さっきまで俺はあのオカルトブラザーズに詰め寄られたはずなのに、その間の記憶がまるでごっそりなくなっていたみたいだ。
「……え?あ、あれ?」
何が起きたのかわからず、情けなく声が裏返って顔の緊張感が緩んだ。
「おい、ジュンヤに何すんだ!!こ、こいオイラが、相手だ」
「お…れ?」
状況が読み取れず辺りを見渡すと、俺の真下に小学生の男の子がぐったりと倒れているが、どこか見覚えのある気がする。
黒の半ズボンに当時流行っていて俺が好きだったアニメの水筒を首にかけて、シャツは小学生の頃に俺のお気に入りだった青いTシャツを着ている。
「おい!ジュンヤから離れろ!殺人鬼め!!」
小学生の頃のたかしはうつ伏せで倒れている男の子を指さして叫ぶ。
明らかに俺の事を言っていない。
つまり、あの男の子は小学生の頃の俺だ!
そのことに気付いた俺は倒れている当時の自分から離れて改めて辺りを見渡すが、どこにもオカルトブラザーズの姿がいない。
あいつら、どこへ行ったんだ!?
いや、もしかしてオカルトブラザーズと会った時とたかしと小学生の頃の自分と会った時の間、俺の記憶が飛んだのか?
「いて…」
俺が一旦状況整理して茫然としたところに、たかしが俺に目掛けて石を投げてきやがった。
投げた石が俺の左こめかみにあたり、反射的に左目を抑えていると、今度はだいぶ汚れて使い込まれた木製の古い虫かごを胸にぶつけられた。
「うわぁ、セミ!!カメムシ!!」
胸にぶつけられた拍子で虫かごが外れて、中に入っていたひぐらしやクマゼミ、カメムシ、あと小さな虫などが一斉に顔へ目掛けて飛んで襲い掛かっていきずっこけた。
その際に、虫かごの中で死んだセミの死骸がシャツの間に入り込みやがった!!
ただでさえ体がボロボロなのに、セミの死骸ががさがさと肌に当たるたびに生理的な嫌悪感が刺激されていきもう泣きそうになっていく。
俺は焦りに焦ってセミの死骸を手でつかんでその辺に投げすてる。
その間にたかしは小さいころの自分の足を引きずってこの場から逃げようとしていた。
「おい、だいじょーぶか!いげるぞ、ジュンヤ!」
小学生の頃のたかしに引きずられてもぐったりして動かない小学生の頃の自分に呼びかけているが、今の俺と目があったとたん小学生の頃の自分を置いて全力で逃げ始めた。
「おんどれたかし!!」
俺はこれまでの理不尽な目にあった怒りが爆発してたかしを追いかけてた。
このときの俺は振り返ってみれば冷静じゃなかったし、なんて叫んでいたのかは覚えていないが、とにかく殺意をもって小学生の頃のたかしを追い回していた。
あと少し、あと少しでたかしに追いつける!
大人の俺の全速力の走りはだんだん、たかしとの距離がだんだん縮まっていく。
やっと追いつく!!
と思ったらたかしはいったん立ち止まったかと思うと、横の落ち葉へとダイブした。
一瞬たかしの行動に戸惑ったが、目の前に急斜面が見えたので慌てて止まろうとしてブレーキをかけるも、急には止まれない!
おれは、その急斜面を滑り落ちる形で数メートルくらい下っていく。
危うくそのまま転げ落ちる一歩手前で枯れ木を無意識につかんだおかげで止まった。
あっぶねぇ、そのまま落ちるところだった。良かったと思った次の瞬間!
「くらえ、殺人鬼め!!」
たかしが上からなにかを投げつけたかと思ったら手前で爆発し、俺はよろめき転げ落ちていく。
俺はあれから崖に転げ落ち続け、ようやく地面に叩きつけられた。
「なんで、こんなことになったんだ……。YouTuberになった小中学校の友達のたかしに、イベントに誘われて会うためにこんな山奥にやってきたのに!」
とさっき転げ落ちた時に口の中に入った土やら砂やらを吐き出して声にもならない声で叫んだが、誰も何も答えてはくれなかった。
最後の力を振り絞り、転げ落ちてボロボロになった身体をゆっくり起こそうとするが、体のあちこちに刺さった破片が生きようともがいている俺を止めようとする。
このままでは、俺はもう死んでしまう、いや、死ぬのは嫌だ。
俺は痛みに耐えながら身体を起こし、あたりを見渡してみる。
血と殺虫剤と土の混ざった嫌な臭いで、鼻をつんと刺激する。
そして後から燃えカスの臭いがして、何かが飛んできた。
スマートフォンは落とした弾みでスイッチが入ったのか懐中電灯に照らされている。
朦朧とする意識の中で照らす光に目を凝らすと、スマートフォンの隣で仰向けの小動物が右半身をバタバタと動かし続けている。頭蓋が割れて中身が顔を出していた。
あれが直撃していたら、俺があぁなっていたのか……。
あのツンとする殺虫剤の臭いから、殺虫スプレーで作った即席の爆弾なんだろうな。
そう思うと、今更ながら全身から冷や汗があふれ出し、小刻みに震えていた。
山奥でもぬけの殻になっていた彼らのキャンピングカーを見た時点でそのままにげるべきだった……。
いや、こんなイベントに参加しなければ良かった。
あの集落の呪いだか祟りだかもうわからない…頭のおかしくなったYouTuberとかゲーム関係者とかが襲い掛かっても返り討ちにして……。
やっとあんな薄気味悪い暗闇から解放されると思ったのに、あのころの、あんなに小さな、たかしのせいで…。
突然、小動物の奥にあるスマホが鳴った。助かった…。俺は着信音が途切れる前に這いずってスマホの方に向かっていくが、だんだん痛みが激しくなり、次第に意識がもうろうとしてきた。
誰が俺に電話をかけたのかは分からないけど、今ここで電話をとらないとたすけを呼べない。もしかしたら、たかしか?それとも。
ようやく、掴みかかった命綱をつかまないと。
そして、ようやくスマホを手に取って着信に出て、助けを呼ぼうと思ったが声が出なかった。
「もしもし、……ちぁいさん?うちあいさん!……もしもし?」
間違い電話だった。
スマホのスピーカー越しに聞こえるのは知らない男の声だ。
この際、間違い電話でもいい、ここで助けを呼ばないと。そう思っても、あたりに充満している殺虫剤と火薬の臭いでむせて咳き込んで上手くしゃべれない…。
「もしもし、うちあいさん!あなた誰ですか!おちあいさんじゃないですね!あなたは一体誰なんですか?」
そして、電話が切れたところで俺は力尽きた。
突然、俺の後ろから声が聞こえ、俺の両肩を鷲掴みして話しかけてきた。
俺は背筋がぞっとして振り返ってみると、首を90度傾けて俺の顔を凝視するオカルトブラザーズの川瀬ひろよの顔がまじかに迫っていた。
「あの地縛霊ってさぁ、死んじゃったけどぉ、どんな関係だったかなぇ」
俺の顔に川瀬ひろよの生暖かい吐息が思いっきりかかってきて今にも吐きそうだが、身体が金縛りにあったかのように動かない。
「ねぇ、もしかしてぇ君むかしここぇ来た事あるんでしょお?」
動かないけど、異形な化け物にたいする恐怖とそれを払いのけて逃げたくても逃げられない怒りで、俺の呼吸が一気に早くなり息が苦しい。
そんな俺の様子に意に介さずひろよは血走った眼を不規則にギョロギョロと動かすのだが、目は瞳孔は開きっぱなしで生気が感じられない。
「それも十数年前かな?あの地縛霊と出会って魅入られていたんじゃわないかなぁえ?あのぉ地縛霊の名前はぁ?」
「ま、マサル」
せめて明らかに生きたまともではないひろよの目を逸らしたいけど、それすらできず思わず口を漏らした。
「そぉかぁ、あの地縛霊、マサル君て呼ぶんだぁ。あのお寺で見かけた時はきみぃ危なかったんだよ?」
ひろよの口はニタニタと笑っているけど、目はみるみる陥没したかのように真っ黒で表情なんて読み取れなくて身の毛がよだつ。
そんな目を見た俺は魂が引っ張られそうで目をそらしたくてもそれができない。
「く、くるな!はな…れ…ぉ」
俺は思いっきり叫ぼうとするも、疲労と恐怖で肺が委縮して思うように声が出せずだんだんちいさくなっていき更に背筋が凍っていく。
もう、俺はここで呪い死ぬのか…。と俺は死を覚悟していた。
すると、突然缶のようなものが俺とひろよの顔の間をすり抜けて水たまりに落ちた。
よくみると、さっき小学生の頃のたかしが作ったお手製の爆弾だが、水たまりで火が消えていて爆発はしていない。
その爆弾が投げ込まれた先へと目線を移すと、小学生の頃のたかしが目の前にいた。
いつの間にか、俺は薄暗い夕方の森の中にいた。
さっきまで俺はあのオカルトブラザーズに詰め寄られたはずなのに、その間の記憶がまるでごっそりなくなっていたみたいだ。
「……え?あ、あれ?」
何が起きたのかわからず、情けなく声が裏返って顔の緊張感が緩んだ。
「おい、ジュンヤに何すんだ!!こ、こいオイラが、相手だ」
「お…れ?」
状況が読み取れず辺りを見渡すと、俺の真下に小学生の男の子がぐったりと倒れているが、どこか見覚えのある気がする。
黒の半ズボンに当時流行っていて俺が好きだったアニメの水筒を首にかけて、シャツは小学生の頃に俺のお気に入りだった青いTシャツを着ている。
「おい!ジュンヤから離れろ!殺人鬼め!!」
小学生の頃のたかしはうつ伏せで倒れている男の子を指さして叫ぶ。
明らかに俺の事を言っていない。
つまり、あの男の子は小学生の頃の俺だ!
そのことに気付いた俺は倒れている当時の自分から離れて改めて辺りを見渡すが、どこにもオカルトブラザーズの姿がいない。
あいつら、どこへ行ったんだ!?
いや、もしかしてオカルトブラザーズと会った時とたかしと小学生の頃の自分と会った時の間、俺の記憶が飛んだのか?
「いて…」
俺が一旦状況整理して茫然としたところに、たかしが俺に目掛けて石を投げてきやがった。
投げた石が俺の左こめかみにあたり、反射的に左目を抑えていると、今度はだいぶ汚れて使い込まれた木製の古い虫かごを胸にぶつけられた。
「うわぁ、セミ!!カメムシ!!」
胸にぶつけられた拍子で虫かごが外れて、中に入っていたひぐらしやクマゼミ、カメムシ、あと小さな虫などが一斉に顔へ目掛けて飛んで襲い掛かっていきずっこけた。
その際に、虫かごの中で死んだセミの死骸がシャツの間に入り込みやがった!!
ただでさえ体がボロボロなのに、セミの死骸ががさがさと肌に当たるたびに生理的な嫌悪感が刺激されていきもう泣きそうになっていく。
俺は焦りに焦ってセミの死骸を手でつかんでその辺に投げすてる。
その間にたかしは小さいころの自分の足を引きずってこの場から逃げようとしていた。
「おい、だいじょーぶか!いげるぞ、ジュンヤ!」
小学生の頃のたかしに引きずられてもぐったりして動かない小学生の頃の自分に呼びかけているが、今の俺と目があったとたん小学生の頃の自分を置いて全力で逃げ始めた。
「おんどれたかし!!」
俺はこれまでの理不尽な目にあった怒りが爆発してたかしを追いかけてた。
このときの俺は振り返ってみれば冷静じゃなかったし、なんて叫んでいたのかは覚えていないが、とにかく殺意をもって小学生の頃のたかしを追い回していた。
あと少し、あと少しでたかしに追いつける!
大人の俺の全速力の走りはだんだん、たかしとの距離がだんだん縮まっていく。
やっと追いつく!!
と思ったらたかしはいったん立ち止まったかと思うと、横の落ち葉へとダイブした。
一瞬たかしの行動に戸惑ったが、目の前に急斜面が見えたので慌てて止まろうとしてブレーキをかけるも、急には止まれない!
おれは、その急斜面を滑り落ちる形で数メートルくらい下っていく。
危うくそのまま転げ落ちる一歩手前で枯れ木を無意識につかんだおかげで止まった。
あっぶねぇ、そのまま落ちるところだった。良かったと思った次の瞬間!
「くらえ、殺人鬼め!!」
たかしが上からなにかを投げつけたかと思ったら手前で爆発し、俺はよろめき転げ落ちていく。
俺はあれから崖に転げ落ち続け、ようやく地面に叩きつけられた。
「なんで、こんなことになったんだ……。YouTuberになった小中学校の友達のたかしに、イベントに誘われて会うためにこんな山奥にやってきたのに!」
とさっき転げ落ちた時に口の中に入った土やら砂やらを吐き出して声にもならない声で叫んだが、誰も何も答えてはくれなかった。
最後の力を振り絞り、転げ落ちてボロボロになった身体をゆっくり起こそうとするが、体のあちこちに刺さった破片が生きようともがいている俺を止めようとする。
このままでは、俺はもう死んでしまう、いや、死ぬのは嫌だ。
俺は痛みに耐えながら身体を起こし、あたりを見渡してみる。
血と殺虫剤と土の混ざった嫌な臭いで、鼻をつんと刺激する。
そして後から燃えカスの臭いがして、何かが飛んできた。
スマートフォンは落とした弾みでスイッチが入ったのか懐中電灯に照らされている。
朦朧とする意識の中で照らす光に目を凝らすと、スマートフォンの隣で仰向けの小動物が右半身をバタバタと動かし続けている。頭蓋が割れて中身が顔を出していた。
あれが直撃していたら、俺があぁなっていたのか……。
あのツンとする殺虫剤の臭いから、殺虫スプレーで作った即席の爆弾なんだろうな。
そう思うと、今更ながら全身から冷や汗があふれ出し、小刻みに震えていた。
山奥でもぬけの殻になっていた彼らのキャンピングカーを見た時点でそのままにげるべきだった……。
いや、こんなイベントに参加しなければ良かった。
あの集落の呪いだか祟りだかもうわからない…頭のおかしくなったYouTuberとかゲーム関係者とかが襲い掛かっても返り討ちにして……。
やっとあんな薄気味悪い暗闇から解放されると思ったのに、あのころの、あんなに小さな、たかしのせいで…。
突然、小動物の奥にあるスマホが鳴った。助かった…。俺は着信音が途切れる前に這いずってスマホの方に向かっていくが、だんだん痛みが激しくなり、次第に意識がもうろうとしてきた。
誰が俺に電話をかけたのかは分からないけど、今ここで電話をとらないとたすけを呼べない。もしかしたら、たかしか?それとも。
ようやく、掴みかかった命綱をつかまないと。
そして、ようやくスマホを手に取って着信に出て、助けを呼ぼうと思ったが声が出なかった。
「もしもし、……ちぁいさん?うちあいさん!……もしもし?」
間違い電話だった。
スマホのスピーカー越しに聞こえるのは知らない男の声だ。
この際、間違い電話でもいい、ここで助けを呼ばないと。そう思っても、あたりに充満している殺虫剤と火薬の臭いでむせて咳き込んで上手くしゃべれない…。
「もしもし、うちあいさん!あなた誰ですか!おちあいさんじゃないですね!あなたは一体誰なんですか?」
そして、電話が切れたところで俺は力尽きた。
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