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作戦準備
俺はやかましい脳内を鎮めて、二人の会話に耳を傾けた。
「この前みたいなクソ面倒くさい依頼はもう嫌ですよ。」
「まあまあ、話を聞いてください!!
サセルさんこの前、もう少ししたら引退しようかな、とか愚痴ってたじゃないですか!!
しかし、サセルさんほどの実力者だと、ギルドもまだまだ手放してはくれないと思うんですよ!
けれどサセルさんは、困難な依頼は受けたくない…!!
そこで!
そんなあなたに新人指導をしてもらえませんか!?
先輩冒険者が新人指導を行えば、新人の死亡率も下がり、なおかつ後任の冒険者の育成もできる!!そうやって、優秀な人材を育てていけばサセルさんの引退もギルドの許可が降りやすくなると思うんですよ!!!
どうですか!!?!?!
一石二鳥、いや三鳥の良案だと思うんですけど!」
まるでコマーシャルの宣伝のような熱血さの演説である。
これには、サセルさんも困惑して口調が崩れてしまった。
「わかったから!まず、落ち着いてくれ!!
どうしちまったんっだ!?あんた、いつもすました顔して客に対応してんだろ!」
「あっ…ごほん…。
すいません、少し取り乱しました……。」
「お、おう。戻ったならいいんだ…。」
「………。
で、受けてくれるんですか?新人指導。」
「あ、ああ。受けるよ…。俺も新人の死亡率が高いのは、懸念してたことだからな。」
「お引き受けしてくれるんですね!
ありがとうございます!!!!!!」
「…で、その新人指導一号はこの子ってことでいいのか?」
俺は、こっちを向いたサセルさんと目があった。茶髪の髪にエメラルドグリーンの瞳が綺麗だ。
「はい、そうです!そのために呼びましたから!!」
「なるほど、だが別に俺じゃなくたっていいだろ。こいつも俺みたいな悪人面のやつより、もっとマシなやつのほうがいいだろ。ほら、こいつもビビって固っちまってるじゃねえか。」
俺がついうっかりサセルさんの顔(主に体)に見惚れてしまっていたのを、誤解されてしまったようだ。
「えーそんなことないですよ!それに、サセルさんの新人指導だったら皆さん絶対受けたいって思いますって…!
テオドアくん、紹介がまだだったわね!
この人はベテラン冒険者の、
サセル・メーベルトさんよ。
サセルさんは口が悪くて無愛想で体格が大きくて、ちょっと怖いなって思うかもしれないけれども、とっても強くて優しいから、彼の指導は君の冒険者業にとっても役立つと思うの。だから、私は彼の指導を受けることをお勧めするわ。」
受付さんが俺に話しかけてきた。
そんなの……
もう受ける気満々に決まってるじゃないですか…!!このチャンスは絶対に逃がさない…。
俺はもうこの人を絶対に犯…ん゛ん゛ッ…落とすって決めた。
どんな手を使ってでも、絶対に落として見せるっ!!!
「ボクもぜひお願いしたいです…!」
「よし!これで新人指導は決定ね!」
「おい、ちょっと待て、本当に俺でいいのか??」
「はい!もちろんです!むしろこちらから、頼み込みたいところですよ!
さっきは、少し驚いちゃってて。失礼な態度をとってすみません…
メーベルトさんこそ、ボクの指導…嫌じゃないですか…?」
俺は少し不安そうな顔をしながら、顔をちょこんと傾け、サセルさんを見つめた。サセルさんの方から見たら身長差によって上目遣いに見えていることだろう。
ーーーっく~!我ながらあざとい!!
なんていう名演技!勲章ものだぜこれは!!
というのも、男の俺がこんなことをできるのは、俺の見た目が、可愛らしい美少年だからである。俺は最初、あの麗しきダンディイケメン、父のように成長するのだと思っていた。だがこれはびっくり、少し成長して鏡を見たらそこには母親譲りの可愛い系の美少年がいたのだ。
……そっち系かあ~
多分この見た目もあの女神様の趣味なのだろう。
……俺は知りたくもない女神様の性癖を知ってしまった…。
まあ、そんな美少年の見た目ならあざといことをしてもなんら問題はないということだ。
そして、そんな俺のささやかな攻撃をくらっているサセルさんはというと…
ーーー無傷だった。全く反応を示さない。
くっ、べ、別に最初から意識してもらえるなんて思ってないし…!
頑張ってやったのに少しも効いてなくて、恥ずかしさがちょっとこみ上げてくるとか…そんなんじゃねーし!
「俺は嫌じゃねーよ。わかった。本人も希望していることだし、新人指導を引き受けよう。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「引き受けてくださり、ありがとうございます!では、話の内容もまとまりましたので、これから出発されるということでよろしいですか?」
「ああ、俺は問題ない。」
「ボクも大丈夫です!」
「かしこまりました。サセルさんが同伴で万が一ということはないと思いますが、気をつけて行ってきてくださいね。」
俺とサセルさんは冒険者ギルドを後にして、外へ出た。少し歩いて、サセルさんは立ち止まった。どうやら、ほかの人の迷惑にならないように端に寄りたかったらしい。受付さんの言葉といい新人指導といい、とても優しい人のようだ。
俺はそんな優しい人になんて酷いことを…
なんて思考にはならない。
むしろ、優しい人を犯そうとしているという背徳感でゾクゾクしている。
ああ…楽しみだなぁ…ふふっあはっ…
絶対に落とす…!絶対に逃がさない…!!
それにもう、どうやって落とすかは決まってる。
俺はヤるときはやる男だ。
もう落とすって決めたら、行動は早い。
さあ、作戦実行だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は今日こそ冒険者ギルドに、指名の依頼を取るのはやめろと言ってやろうと思っていた。それがどうしてか、新人指導を引き受けることになってしまっていた。
はあ…クソッ
アネットさんのやつ、絶対にこの子が可愛いからって贔屓してんだろ。普段絶対に冒険者に肩入れしないくせに。
確かに今目の前にいる、多分貴族の坊ちゃんだろうというコイツはとても愛らしい見た目をしている。
美しい顔立ちはまだ成長途中なのか、幼さを残していて、愛らしい印象を受ける。そして、外に出ることが少ないことがわかる色白できめ細かい肌。この国では滅多にお目にかかれないとても珍しい瞳で、桃色をしている。太陽の光に反射してキラキラと輝く金髪は、肩くらいの長さなのか後ろで一纏めにしている。身長は165くらいで、同年代の平均より小さいと言えるだろう。
実際、今まで異性愛者だと信じて疑わなかった俺も、コイツなら抱ける気がする。
っとまあ、そんな余談は置いておいて…
「おい、お前名前は?」
あっ、やべ。つい荒い口調で言ってしまった。こんなんじゃ、この坊ちゃんはすぐにまたびびっちまうじゃねえか。
そう思ったんだが…
「あっはい!ボクはテオドアです!テオドア・フロレンツと言います。」
おぉ……さっきとはえらい違いようだな。
まあ、ずっとビクビクいられたら、俺も困っちまうからいい変化ではあるが。
それにしても、フロレンツ…?
そいつは、確かこの国の今の財務大臣の家の名じゃなかったか…??
それじゃあ…コイツは侯爵家…?
おいおい、侯爵家って言ったら上位貴族だろ?座ってたら使用人がなんでもやってくれるような位だろ…
もしかして、金がないとか…?いやいや、そんなことはありえない。父親が大臣なら給料だって破格の額だろうし、大臣は他の貴族からも認められないとできないような重要職だ。浪費家とか人格が歪んでたら財務なんて担当はできない。
そんな家のやつが冒険者…?普通は騎士団の方に行くだろ…
本当にコイツはなんなんだ?
なんの目的があって……。
俺が急に黙り込んでしまったのを不審に思ったのか、さっきからチラチラとこっちを見てきている。
「あ…あの。ボクなんか変なこと言いましたか?」
「ああ、すまん。なんでもないだ。テオドア君。さっきも紹介されたと思うが、俺はサセルだ。名前の方で読んでくれ。今日はお前の指導をすることになるから、よろしくな。」
「はい!よろしくお願いします!サセルさん!それと、サセルさんは先輩なのでボクのことは、テオドアって呼んでください!」
「ん、わかった。よろしくな。テオドア。」
「はい!」
貴族らしからぬ、素直そう…というよりかは世間知らずと言った感じか。その辺をフラフラしてたらすぐカモにされるタイプだな。指導の項目にその辺の注意もコイツには入れた方が良さそうだな。
「じゃあ、これから出発するわけだが、準備は問題ないか?」
「えーと…そうですね…。
あっ!ボクちょっと何か飲み物買ってきても大丈夫ですか?今日は忘れちゃったみたいで…」
「ああ、わかった。今日は少し暑いから持っておいたほうがいいだろう。」
「じゃあ、ボクちょっと行ってきますね!
サセルさんは、門のところで待っていてくれると助かります。」
「それはいいが。一人で大丈夫か?」
「もちろんですよ!!ボクだってそれくらいのことは出来ますよ!」
「フッ……ああ…そうだな、すまない。じゃあ、門のところで落ち合おう。」
「はい!ダッシュで買ってきますから!!」
そう言って俺とテオドアは別れた。
アイツは俺が少し世間知らずだと侮っていたのに気付いたのか、頬を少し膨らませて、ムッとしていた。怒っているのだろうが、全く怖くはなかった。むしろ…………
はっ!?俺は今何を…
顔立ちがいいからといって、男に…ましては可愛いなんて思い始めるなんて…
俺もとうとう末期かもしれないな……。
俺は最近気づいたんだよ。
俺の人生に足りてないもの…
ーーーそれは、癒しだってな。
それを、もはや男にまで求め始めるなんて…
はあ、早く引退したい…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~小話~
(はあ…どいつもこいつも、筋肉ばっかりで嫌になっちゃうわ。冒険者にとって筋肉が必要なのはわかるけど、別にそんなにピチピチのシャツとかタンクトップとかほんとやめてくれないかしら…。貴方達の筋肉なんてこれっぽっちも見たくはないんだけれど。はあ、暑苦しい……。)
私は冒険者ギルドの受付に勤めているアネット・バーミリアン。
職業柄、荒々しいものに目が疲れてきたため、最近は可愛いものにハマってます。
そんな私のところに、ある日天使が舞い降りた。
可愛らしい顔立ちにぱっちりとした桃色の瞳。とっても綺麗な金髪でキラキラと輝いている。
…ッ!!!……っもう…天使…え、やばい。
天使と同じ空気吸ってる。え、かわ…え!?
もう語彙力を失うレベルの存在が私の目の前にいた。
私は驚きのあまり、普段の冷静を第一にしている対応についつい気合が入ってしまった。
はぁ~やばい。私今天使と会話してる…。
声まで美しいですね。天使様は、
なんとか冷静さを保ちつつ、天使と会話をしていると、彼は私に向かってふわりと微笑んだ。
う゛ッ…!!!!!
む、むり…直視できない…。眩しすぎる…
っはあ…はぁ…危うく昇天しかけた。
私が天使に連れて行かれるところだった。
ーーーいや、天使様と一緒に行けるなら…
なんて…私の頭はちょっとおかしくなってしまった。
この日、私は絶対に天使に危険な目には合わせまいと、試行錯誤して、サセルさんとの約束を取り付けた。
絶対に天使は守ってみせる…!!!
私の日常に究極の可愛いがやってきた。
受付さんの小話でした。
それと、サセルさんはベテラン冒険者なため、貴族からの依頼も入ったりするので、貴族についてもそれなりに詳しいです。
今回は途中からサセル視点のお話を入れてみました。これからも、いろんな人の視点が急に入ったりすると思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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