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▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath
3-50 Lpieces
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sideシロ
『『ドパンドパンドパン』』カチッ
「ハァハァこのままなら、無事に行けそうですね」
この状況でも全員が一丸となり、ゾンビの群れを順調に突き抜けている最中
「あぁ…~っ~それはどう、かなァ?」『ゴキっ』
「あれ?九鬼さんもしか今、肩入りました?」
『ドゴッ‼︎ 」
ー「ウぶォ」ドザザァ
突然九鬼さんは、話し掛けた野木さんを殴り飛ばし、ここまで奮迅の活躍で後方を警戒する真黎さんの首元に剣を…
ダザッ
ー間に合…ー『『ゴザシュ‼︎ 』』
「ウがァぁ~あッ」
「え?シロさんっ」
咄嗟に伸ばした左腕は防具が斬り裂かれ、前腕半分にまで剣が食い込む。
ーー ズキズキズキィッ√
髪が逆立ちそうな激痛を食いしばり
「ンォぁあ」『ドフッ』
「ウっぐ」
九鬼さんの腹を蹴って突き放す。
『ボぁぁ~』『ンぁぁ~』
「イグっ、ぎゃぁァアぁ」
押し寄せるゾンビは倒れた野木さんに群がると
「野木さん待ってッ」
「イヤぁぁ、玉君を放してェーーーーっ」
宇実果さんの制止も振り切って、奥さんが飛び出してしまう。
「大丈夫かよシロさんっ。つか何してんだおっさんいや、テメェ誰だッ」
「九鬼だよ九鬼、決まってるだろぉ~ハハ。一番隙の無いヤツが、自ら傷を負ってくれるとは幸運だな」
八参を無視する九鬼さんはオレのケガ見て笑い
「ぁぁあシロさん血がっ、ー~直ぐ、手当をっ」
動揺する真黎さんは慌てながらも包帯を取り出して、ドクドクと血の滴るオレの腕にそれを巻き付ける。
「ハァハァ真黎さん、ギッチギチにお願いします」
「ごめんなさい私のせいで」
ーーズキズキッ√
ーーズキズキッ√
一転して混沌。
陥った危機的状況。
『ドカっ』
「このヤッ、っぁグ、美……来る、な」
けどそれよりも、死を覚悟した野木さんを見て血が沸騰する。
『ガシッ』
「ちょ、アンタが死んだら全員終わるってっ」
「ッ~、放せ八参っ」
『ズパンズパンッ‼︎ 』
最悪な空気を裂く、乾いた破裂音。
「……ぉ、お?」
九鬼さんの上半身に浮かぶ赤い斑点。
「シロさん今っ」
ダザザッ
和同さんの声で飛び出したオレは
ー『バシュッドシュッ』ー
ーーズキズキッ√
ーーズキズキッ√
痛みを無視して全力全開で剣を振り回し進む。
「ハァハァ…ハァッ、ハァハァハァ」
だけど、血だらけの野木さん夫婦の元にたどり着いた時
『ゴボぁぁ~』『ボぁぁ~』『オぉぁー~』
オレもゾンビに取り囲まれた。
「シロ、さ…何……で…俺、…もう… 」
「ハァハァ何でって、他人の為に頑張った人の最期が、こんな風じゃあんまりでしょ」
「あ、ありがとうございますっありがとうございますぅ」
「美沙…だけは、おね…しま、…す」
野木さんは、震える手で奥さんの頬を撫でる。
「勿論っ」
それに…
『ドガ』
「ぅぐっ」
『ガブッ』
ー「痛っ」
この無茶は…
ーー『ザシュッバシュッザシュッ』ー
「いい加減に、死ねよテメェらァアーーーー」
きっとリュウコウ君が居ないからかな。
「男女、ここは頼んだっ。シロさん今行っからなあァーーーー」
よく通る八参の声。
ーズキズキッ√
「ハァハァ… 」
あぁ…
「グぁ~ぁっ」
けどダメだ、手に力が…
「痛てぇっ」
野木さんの奥さんだけは助…
『ドパンドパンドパン~
のしかかってくるゾンビだらけの視界の中、鳴り響く銃声はやけに遠い…
ーーーーーーー
ーーーーー
この呆自棄ていく世界はきっと
ーーー
ーー
オレの終わりも近いせい
ー
シロクン…
リュ、リュウコウ君?
モドッテクレテ…
何処ですっ?
アリガトウ…
ダイジョウブ…
ボクハ…
ゥぐっゴメっ~ーッゴメンなさい。
こんな旅行俺が、俺が1人で行けば良かったのに、いつもみたく甘えたからこんな…
ヒダリ…
テヲ…
混濁し定まらない意識の中、懐かしいリュウコウの渋い声に導かれ、多分オレは手を伸ばした。
キミノ…
ナリ…
ツク…
ヨ…
その瞬間、左手から全身の隅々にまで根が張り巡った感覚がした。
……シ
……ロ
…シロ
誰だっ?
それからあたたかな光が全身を包み、忘れていた記憶の断片が注ぎ込まれる。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
3ヶ月前(2-15の矢に射抜かれた直後)
パチッ‼︎
「⁉︎ッ、ウグァ、オエェエェ…ェ… 」
ビシャビシャビチャッ
起き上が……
… … … … …目が回る…
… … …早く
… … … …落ち着けっ
ーズキッ√
「…ッぐぅウッ」ベタペタ
痛む頭部に手を当てると、半乾きの血糊が指先に付く。
つかペタって?
ペタペタペタペタっ
「………… 」
坊さん?
そいや恰好も何となく…ってそんな場合かアホ。
コイツも死に掛け、保って数十分らしいから急ごう。
ここはオレが倒れた所から東に20m。
さっき殺られる前に追い越した太い木…
「……、…あれだ 」
てことはシロはあそこに倒れてるのか?
ザ
…ザ…
……ズザ
「ハァハァ……ハァハァっ……ハァ… 」
なんとか眩暈は落ち着いてきたな。
耳の奥から煩くガナる痛みに耐え、フラつく身体が倒れないよう慎重に巨木へ近付く。
…ザ
…ズザ…
「……… 」
そして巨木の陰に隠れ、反対側にまだ居るかも知れない追手を慎重に確認する。
が、誰も居ない。
もしかして去った後なのか?
好都合だ。
ザ…ザっ、ズザザ…ズザ…
「はぁ、ハぁ、はァ…… 」
しんどいっ…な、これ…
周囲で唯一登れそうなあのヘリを、今度こそはと這うようにして登っていく。
『ガシっ』ズリ…ズザザ
「はぁ…ハぁっハァっはぁ、やった…ぞ」
ー『ビュゥーー~ーーー~ーーーーッ』ー
吹き曝しの風に靡く草木。
覗いた場所から広がる視界の先には、ミレインと目指した吊り橋がたしかにあった。
「…ッ‼︎ 」
木に繋がれた馬が目に入り、先回りした敵を警戒する……が辺りに人の気配は無い。
コイツのか?なら大助かりだ。
ーズキッ√
ーーズキンッ√
激しくなる痛みに抗いつつ立ち上がった時
「見えたぞ逃すなっ」
「橋の手前で仕留めろッ」
何ィ?
矢が刺さる前?
|
⁉
いきなり頭が熱くなり閉ざされる視界。
~なっ~っ⁉︎
『ドタっ‼︎ ゴロっゴロゴロ…ゴロっ… 』
「っっ~痛ぅ… 」
クッソ……苦労してヘリを上がったのになんつードジ。
マズイぞ、このままだと十数秒後には追手らに鉢合わせる。
「…~はぁ…はぁ~っ、はぁ… 」
ズリ…ガシっ
地面に張り付く重い身体を、巨木に縋りつきながら引っぺがす。
ーーズキンッ√
ーーズキンッ√
「…ッう、ハぁはぁ… 」
もう一度、行く… ぞっ…
痛みと眩暈を堪え、小刻みに震える手足に力を込める。
|
⁉
がしかしまたも意識が飛び、今度は座り込んでいる始末。
いい加減にしてくれよこんな時にっ
「はぁっはぁ、はぁ… 」
しっかりしろっ
立てっ
ザザッ、ザッダッダッザッ
「どこでも良いから当てろッ射て射てッ」
ダメだ、追いつかれる。
『ザッダッダッ』
その時、なんとか立ち上がり、巨木に背を預けるオレの横をオレが走り抜けた。
失敗《おわり》だ…
抗えない倦怠感とそれを超える虚無感で俯い
|
⁉
「ッンな‼︎⁉︎ 」
た筈が、視界の先に映ったのは灰装束の追手たち。
『ドシュッ‼︎ 』
「……んで…グブッゔぅ…… 」
「やったかッ」
喉…とか、痛っテェ…よ…
ー~『『ドタァっっ… 』』
「っ…ヒュー、ヒュ~…~… 」
つかどうなって、んだ… …
全然…思い通り… …
に…なら… …
ねぇ…
よ…
この…ク… …
ソルー… プ… …… … … …
|
|
|
|
|
|
|
「ハァハァッハッ… 」
よし越えた。
「×××××××××ッ××××ッ(どこでも良いから当てろッ射て射てッ)」
ーシュンー
ーーシュゥーー
左斜めにあと3歩ッ
「ハァッ…ハぁッハァっ… 」
2歩ッ
1歩ッ
空気を切り裂く矢の音から逃れ、ギリギリで巨木を背にしたオレは、その勢いのまま一気にヘリを駆け上がる。
ザッザッザッ~ー
「ハァハァハァッシャァーーーーーー」
ー『ビュゥーー~ーーー~ーーーーッ』ー
吹き曝しの風に靡く草木。
広がる視界の先には、ミレインと目指した
吊り
… …~橋
… ~「うぉ⁉︎ 」~
目が回…
『ズサ』
堪らず膝をついた途端、暗転する視界。
…
… …
グルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルッ
違う。
これは…回転する様に切り替わる記憶だ。
誰の?
『『ダーンダーンダーンッ‼︎ 』』
『『ダーンダーンダーンッ‼︎ 』』
『ガラガラガラガラッ』
「急げっ、傷が深いっ、師と衛生班を急いで集めろっ」
誰だ?
そう言えば矢に射たれて…いや?頭から出血して……?
… … …
… … … …
グルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルッ
誰だ、この女の子は
「ホルスっ、貴方にまで何かあったら私… 」
「姉さん、ここで今ボクに出来ることはないよ。だから行く、行かなきゃ。あの山のことも、薬になる植物もボクが一番詳しいからさ」
「……そう、ね。…でも、決して無茶はしないで」
彼女は複雑な表情で優しく微笑んだ。
… … … … …
… … … … … …
グルグルグルグルグルグルグルグルッ
あの吊り橋?
「見えたぞ逃すなっ」
「橋の手前で仕留めろッ」
|
⁉
頑張ってくれたのにゴメン。
でもこのままだと2人とも死ぬだけだから。
揺れる視界。
|
⁉
まだだよ。
まだだ。
((ドクンッドクンッドクンッドクンッ))
「はぁはぁっ、震えるな~~震えるなよぉ~~ーっ。はぁはぁ…ハハ、死ぬって分かってても死ぬほど怖いよって何言ってんだろボク」
ザザッ、ザッダッダッザッ
「どこでも良いから当てろッ射て射てッ」
|
⁉
((ドクンッドクンッドクンッドクンッ))
「…ゴメンね姉さん」
ザッザッザッ
ー「…ー~っ… 」
ーー大好きだよ…
駆け巡る恐怖の中歯を食いしばり、背を走る男の盾にと身を差し出した。
ーーー『『『ズパァァァンッッ‼︎⁉︎ 』』』ーーー
クルクルと万華鏡みたく重なり合った記憶が満開になって弾け、舞い上がった様々な思い出のカケラたちが、花ビラみたくハラハラと散り吹いていく。
… …あとは…
…ヨロ…シ… … …ク…
その美しい散り様は、最後の一片が消えるまで、ただただ温かかった…
パチッ‼︎
「ッ‼︎⁉︎ォオエェエェ… 」ビシャビシャッ
汚れた口まわりはそのままに、右手を胸に当てる。
((トクン、トクン、トクン、トクン))
そして直ぐさま立ち上がり、迫る追手の声を背に受けながら、アイツの愛馬と共に吊橋を駆け抜ける。
任せろ。
割れた欠片同士、託された分は必ず果たすから。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
シロ…
《…シ…シロ…》
お、お前…まさか
……ホルス、なの…か?」
《シロォッっ》
ホ、ホルスっ
《ー~ッ…やっと、やっと伝わ、ったァァ》
" シロっ " " 踏ん張、って " "ボクも居、るぞォ " " シロ後ろっ " "負けるか、ぁぁ "
声だけじゃなく支えようとしてくれていたホルスの、感極まった感情までもが怒涛の如く流れ込んで来ると、ここへ来てからの数々の戦いの中の、異常な調子の良さにも合点がいった。
それと同時に何故こんなことが?と理解の及ばない自分も居るけどそう
今はただ…
ホルス、お前に会えて嬉しいよ。
ゴメンな、何度も呼んでくれてたのに。
一緒に戦ってくれていたのに。
《ううんボ、クこそ…、ボクの方こ、そずっと忘、れないでい、てくれて、ありがとうっ》
住む世界から違うオレ達が、極短時間同じ場所に偶然居合わせた事で一つになった、あの死を塗り替えた運命の日。
その感謝と懺悔が形作った自己満足の祈りが現実となり
この背へと舞い降りた。
『『ドパンドパンドパン』』カチッ
「ハァハァこのままなら、無事に行けそうですね」
この状況でも全員が一丸となり、ゾンビの群れを順調に突き抜けている最中
「あぁ…~っ~それはどう、かなァ?」『ゴキっ』
「あれ?九鬼さんもしか今、肩入りました?」
『ドゴッ‼︎ 」
ー「ウぶォ」ドザザァ
突然九鬼さんは、話し掛けた野木さんを殴り飛ばし、ここまで奮迅の活躍で後方を警戒する真黎さんの首元に剣を…
ダザッ
ー間に合…ー『『ゴザシュ‼︎ 』』
「ウがァぁ~あッ」
「え?シロさんっ」
咄嗟に伸ばした左腕は防具が斬り裂かれ、前腕半分にまで剣が食い込む。
ーー ズキズキズキィッ√
髪が逆立ちそうな激痛を食いしばり
「ンォぁあ」『ドフッ』
「ウっぐ」
九鬼さんの腹を蹴って突き放す。
『ボぁぁ~』『ンぁぁ~』
「イグっ、ぎゃぁァアぁ」
押し寄せるゾンビは倒れた野木さんに群がると
「野木さん待ってッ」
「イヤぁぁ、玉君を放してェーーーーっ」
宇実果さんの制止も振り切って、奥さんが飛び出してしまう。
「大丈夫かよシロさんっ。つか何してんだおっさんいや、テメェ誰だッ」
「九鬼だよ九鬼、決まってるだろぉ~ハハ。一番隙の無いヤツが、自ら傷を負ってくれるとは幸運だな」
八参を無視する九鬼さんはオレのケガ見て笑い
「ぁぁあシロさん血がっ、ー~直ぐ、手当をっ」
動揺する真黎さんは慌てながらも包帯を取り出して、ドクドクと血の滴るオレの腕にそれを巻き付ける。
「ハァハァ真黎さん、ギッチギチにお願いします」
「ごめんなさい私のせいで」
ーーズキズキッ√
ーーズキズキッ√
一転して混沌。
陥った危機的状況。
『ドカっ』
「このヤッ、っぁグ、美……来る、な」
けどそれよりも、死を覚悟した野木さんを見て血が沸騰する。
『ガシッ』
「ちょ、アンタが死んだら全員終わるってっ」
「ッ~、放せ八参っ」
『ズパンズパンッ‼︎ 』
最悪な空気を裂く、乾いた破裂音。
「……ぉ、お?」
九鬼さんの上半身に浮かぶ赤い斑点。
「シロさん今っ」
ダザザッ
和同さんの声で飛び出したオレは
ー『バシュッドシュッ』ー
ーーズキズキッ√
ーーズキズキッ√
痛みを無視して全力全開で剣を振り回し進む。
「ハァハァ…ハァッ、ハァハァハァ」
だけど、血だらけの野木さん夫婦の元にたどり着いた時
『ゴボぁぁ~』『ボぁぁ~』『オぉぁー~』
オレもゾンビに取り囲まれた。
「シロ、さ…何……で…俺、…もう… 」
「ハァハァ何でって、他人の為に頑張った人の最期が、こんな風じゃあんまりでしょ」
「あ、ありがとうございますっありがとうございますぅ」
「美沙…だけは、おね…しま、…す」
野木さんは、震える手で奥さんの頬を撫でる。
「勿論っ」
それに…
『ドガ』
「ぅぐっ」
『ガブッ』
ー「痛っ」
この無茶は…
ーー『ザシュッバシュッザシュッ』ー
「いい加減に、死ねよテメェらァアーーーー」
きっとリュウコウ君が居ないからかな。
「男女、ここは頼んだっ。シロさん今行っからなあァーーーー」
よく通る八参の声。
ーズキズキッ√
「ハァハァ… 」
あぁ…
「グぁ~ぁっ」
けどダメだ、手に力が…
「痛てぇっ」
野木さんの奥さんだけは助…
『ドパンドパンドパン~
のしかかってくるゾンビだらけの視界の中、鳴り響く銃声はやけに遠い…
ーーーーーーー
ーーーーー
この呆自棄ていく世界はきっと
ーーー
ーー
オレの終わりも近いせい
ー
シロクン…
リュ、リュウコウ君?
モドッテクレテ…
何処ですっ?
アリガトウ…
ダイジョウブ…
ボクハ…
ゥぐっゴメっ~ーッゴメンなさい。
こんな旅行俺が、俺が1人で行けば良かったのに、いつもみたく甘えたからこんな…
ヒダリ…
テヲ…
混濁し定まらない意識の中、懐かしいリュウコウの渋い声に導かれ、多分オレは手を伸ばした。
キミノ…
ナリ…
ツク…
ヨ…
その瞬間、左手から全身の隅々にまで根が張り巡った感覚がした。
……シ
……ロ
…シロ
誰だっ?
それからあたたかな光が全身を包み、忘れていた記憶の断片が注ぎ込まれる。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
3ヶ月前(2-15の矢に射抜かれた直後)
パチッ‼︎
「⁉︎ッ、ウグァ、オエェエェ…ェ… 」
ビシャビシャビチャッ
起き上が……
… … … … …目が回る…
… … …早く
… … … …落ち着けっ
ーズキッ√
「…ッぐぅウッ」ベタペタ
痛む頭部に手を当てると、半乾きの血糊が指先に付く。
つかペタって?
ペタペタペタペタっ
「………… 」
坊さん?
そいや恰好も何となく…ってそんな場合かアホ。
コイツも死に掛け、保って数十分らしいから急ごう。
ここはオレが倒れた所から東に20m。
さっき殺られる前に追い越した太い木…
「……、…あれだ 」
てことはシロはあそこに倒れてるのか?
ザ
…ザ…
……ズザ
「ハァハァ……ハァハァっ……ハァ… 」
なんとか眩暈は落ち着いてきたな。
耳の奥から煩くガナる痛みに耐え、フラつく身体が倒れないよう慎重に巨木へ近付く。
…ザ
…ズザ…
「……… 」
そして巨木の陰に隠れ、反対側にまだ居るかも知れない追手を慎重に確認する。
が、誰も居ない。
もしかして去った後なのか?
好都合だ。
ザ…ザっ、ズザザ…ズザ…
「はぁ、ハぁ、はァ…… 」
しんどいっ…な、これ…
周囲で唯一登れそうなあのヘリを、今度こそはと這うようにして登っていく。
『ガシっ』ズリ…ズザザ
「はぁ…ハぁっハァっはぁ、やった…ぞ」
ー『ビュゥーー~ーーー~ーーーーッ』ー
吹き曝しの風に靡く草木。
覗いた場所から広がる視界の先には、ミレインと目指した吊り橋がたしかにあった。
「…ッ‼︎ 」
木に繋がれた馬が目に入り、先回りした敵を警戒する……が辺りに人の気配は無い。
コイツのか?なら大助かりだ。
ーズキッ√
ーーズキンッ√
激しくなる痛みに抗いつつ立ち上がった時
「見えたぞ逃すなっ」
「橋の手前で仕留めろッ」
何ィ?
矢が刺さる前?
|
⁉
いきなり頭が熱くなり閉ざされる視界。
~なっ~っ⁉︎
『ドタっ‼︎ ゴロっゴロゴロ…ゴロっ… 』
「っっ~痛ぅ… 」
クッソ……苦労してヘリを上がったのになんつードジ。
マズイぞ、このままだと十数秒後には追手らに鉢合わせる。
「…~はぁ…はぁ~っ、はぁ… 」
ズリ…ガシっ
地面に張り付く重い身体を、巨木に縋りつきながら引っぺがす。
ーーズキンッ√
ーーズキンッ√
「…ッう、ハぁはぁ… 」
もう一度、行く… ぞっ…
痛みと眩暈を堪え、小刻みに震える手足に力を込める。
|
⁉
がしかしまたも意識が飛び、今度は座り込んでいる始末。
いい加減にしてくれよこんな時にっ
「はぁっはぁ、はぁ… 」
しっかりしろっ
立てっ
ザザッ、ザッダッダッザッ
「どこでも良いから当てろッ射て射てッ」
ダメだ、追いつかれる。
『ザッダッダッ』
その時、なんとか立ち上がり、巨木に背を預けるオレの横をオレが走り抜けた。
失敗《おわり》だ…
抗えない倦怠感とそれを超える虚無感で俯い
|
⁉
「ッンな‼︎⁉︎ 」
た筈が、視界の先に映ったのは灰装束の追手たち。
『ドシュッ‼︎ 』
「……んで…グブッゔぅ…… 」
「やったかッ」
喉…とか、痛っテェ…よ…
ー~『『ドタァっっ… 』』
「っ…ヒュー、ヒュ~…~… 」
つかどうなって、んだ… …
全然…思い通り… …
に…なら… …
ねぇ…
よ…
この…ク… …
ソルー… プ… …… … … …
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「ハァハァッハッ… 」
よし越えた。
「×××××××××ッ××××ッ(どこでも良いから当てろッ射て射てッ)」
ーシュンー
ーーシュゥーー
左斜めにあと3歩ッ
「ハァッ…ハぁッハァっ… 」
2歩ッ
1歩ッ
空気を切り裂く矢の音から逃れ、ギリギリで巨木を背にしたオレは、その勢いのまま一気にヘリを駆け上がる。
ザッザッザッ~ー
「ハァハァハァッシャァーーーーーー」
ー『ビュゥーー~ーーー~ーーーーッ』ー
吹き曝しの風に靡く草木。
広がる視界の先には、ミレインと目指した
吊り
… …~橋
… ~「うぉ⁉︎ 」~
目が回…
『ズサ』
堪らず膝をついた途端、暗転する視界。
…
… …
グルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルッ
違う。
これは…回転する様に切り替わる記憶だ。
誰の?
『『ダーンダーンダーンッ‼︎ 』』
『『ダーンダーンダーンッ‼︎ 』』
『ガラガラガラガラッ』
「急げっ、傷が深いっ、師と衛生班を急いで集めろっ」
誰だ?
そう言えば矢に射たれて…いや?頭から出血して……?
… … …
… … … …
グルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルッ
誰だ、この女の子は
「ホルスっ、貴方にまで何かあったら私… 」
「姉さん、ここで今ボクに出来ることはないよ。だから行く、行かなきゃ。あの山のことも、薬になる植物もボクが一番詳しいからさ」
「……そう、ね。…でも、決して無茶はしないで」
彼女は複雑な表情で優しく微笑んだ。
… … … … …
… … … … … …
グルグルグルグルグルグルグルグルッ
あの吊り橋?
「見えたぞ逃すなっ」
「橋の手前で仕留めろッ」
|
⁉
頑張ってくれたのにゴメン。
でもこのままだと2人とも死ぬだけだから。
揺れる視界。
|
⁉
まだだよ。
まだだ。
((ドクンッドクンッドクンッドクンッ))
「はぁはぁっ、震えるな~~震えるなよぉ~~ーっ。はぁはぁ…ハハ、死ぬって分かってても死ぬほど怖いよって何言ってんだろボク」
ザザッ、ザッダッダッザッ
「どこでも良いから当てろッ射て射てッ」
|
⁉
((ドクンッドクンッドクンッドクンッ))
「…ゴメンね姉さん」
ザッザッザッ
ー「…ー~っ… 」
ーー大好きだよ…
駆け巡る恐怖の中歯を食いしばり、背を走る男の盾にと身を差し出した。
ーーー『『『ズパァァァンッッ‼︎⁉︎ 』』』ーーー
クルクルと万華鏡みたく重なり合った記憶が満開になって弾け、舞い上がった様々な思い出のカケラたちが、花ビラみたくハラハラと散り吹いていく。
… …あとは…
…ヨロ…シ… … …ク…
その美しい散り様は、最後の一片が消えるまで、ただただ温かかった…
パチッ‼︎
「ッ‼︎⁉︎ォオエェエェ… 」ビシャビシャッ
汚れた口まわりはそのままに、右手を胸に当てる。
((トクン、トクン、トクン、トクン))
そして直ぐさま立ち上がり、迫る追手の声を背に受けながら、アイツの愛馬と共に吊橋を駆け抜ける。
任せろ。
割れた欠片同士、託された分は必ず果たすから。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
シロ…
《…シ…シロ…》
お、お前…まさか
……ホルス、なの…か?」
《シロォッっ》
ホ、ホルスっ
《ー~ッ…やっと、やっと伝わ、ったァァ》
" シロっ " " 踏ん張、って " "ボクも居、るぞォ " " シロ後ろっ " "負けるか、ぁぁ "
声だけじゃなく支えようとしてくれていたホルスの、感極まった感情までもが怒涛の如く流れ込んで来ると、ここへ来てからの数々の戦いの中の、異常な調子の良さにも合点がいった。
それと同時に何故こんなことが?と理解の及ばない自分も居るけどそう
今はただ…
ホルス、お前に会えて嬉しいよ。
ゴメンな、何度も呼んでくれてたのに。
一緒に戦ってくれていたのに。
《ううんボ、クこそ…、ボクの方こ、そずっと忘、れないでい、てくれて、ありがとうっ》
住む世界から違うオレ達が、極短時間同じ場所に偶然居合わせた事で一つになった、あの死を塗り替えた運命の日。
その感謝と懺悔が形作った自己満足の祈りが現実となり
この背へと舞い降りた。
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この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
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