冥府探偵零時

札神 八鬼

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本編

第四話 良く似た双子【後編】

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4月16日。午前6:30。


荒牧 凌央が遺体にて発見された。


遺体が発見されたのは人気のない路地裏。


昨日発見された白浜 春賀の遺体が見つかった場所は、


黄泉山のハイキングコースであり、管理番号は54-3568。


山道の辺りは代魔と玄魔の管轄である。



一方、荒牧の遺体が発見されたのは、

繁華街はんかがいの路地裏であり、管理番号は42-2563。


三成の後輩、マコトの管轄である。




「彼が、被害者の荒牧ですか…」


マコトは犯行現場に足を踏み入れると、

遺体の状態を確認し始めた。


荒牧は仰向けに倒れており、胸からは血が流れている。


死因は刺殺で間違いないだろう。


「おや、これは…」

拾い上げてみると、それは荒牧のスマホだった。


ロックを外してみると、
履歴には直前まで誰かと通話した記録がある。


登録されている電話番号から調べてみると、

被害者と電話をしていた相手は、昨日の被害者の妹だった。


「電話の相手は白浜 春瑠か…
今回の事件、無関係とは言い切れないかもしれませんね…」


彼岸警察は今回の事件を、
白浜 春瑠を犯人と確定して捜査を開始した。









一方、零時達は再びハイキングコースに戻ってきていた。


今回は受付の前を通り過ぎた後、被害者が転落したと思われる
崖の上まで登ってみることにした。



実際に登ってみたら、30分くらいかかった。

行きと帰りを合わせて、ちょうど一時間くらいになるだろう。

だが30分の空白があるため、
まだ真相は掴めていない印象がある。


「三成、遺体の写真とかはあるか?」

「はい、ちゃんと貰ってきました」

三成はカバンから捜査資料を取り出した。


写真には遺体の写真が添付てんぷされている。


あれ?何か良く見たら、この資料汚れてない?



「………三成、この資料誰から貰ってきた?」

「代魔さんです」

「…………やっぱりか」

「何かついてましたか?」

「ああ、油染みがついてた
多分あいつフライドチキン食いながら触ったんだと思う」

「代魔さんらしいですね」

「次からは玄魔に管理させるように言っとけ」

「分かりました」

あいつに任せるのだけはやめて、本当に。


気を取り直して、遺体の写真と現場を見比べる。


もし被害者が誰かに殺されたのであれば、


犯人はどうやってここまで来たのだろう。


ここに来る前に受付に聞いてみたが、

被害者以外の人間は、犯行時間に来ていなかった。


ならばいつ、犯人は犯行を実行したんだ?


受付が見ていないということは、

受付がいない時間や、別の場所で殺された可能性も…

いや、待てよ?別の場所で殺された?

だとしたら、それは…


「零時さん、お電話です」

思考を巡らせている時に、ストーカーからの邪魔が入った。


もう少しで何か分かりそうだったのだが…


俺は舌打ちをした後ストーカーの電話に応対した。


「何だ、すぐに用件を言え」


「時人くん、大変だ。また事件が起きたよ」


「…………今度は誰だ」

「荒牧 凌央。昨日まで僕達が話していた男だよ」


伊織から聞かされたのは、荒牧の死亡報告だった。












人気のない繁華街の路地裏。


荒牧の遺体が発見された場所に、俺達は駆けつけた。


「また会いましたね、三成先輩」

現場には、相変わらず無表情のマコトが立っている。


どうやら今回の管轄はマコトのようだ。

「ここはお前の管轄なのか」

「はい、この辺りの繁華街は私の管轄です
気になることがあるなら、何なりとお聞き下さい」

「じゃあ遠慮なく。死因は何だ?」

「刺殺です。心臓を刺されて死亡したようです」

「被害者の遺体が発見されたのは」

「午前6:30分です」

「死ぬ直前に誰かと連絡とかはしてたか?」

「白浜 春瑠と電話をしていました
彼女との関係は、これから調べる予定です」


「ここで白浜 春瑠との通話か…
ますます怪しくなってきたな」

「そういえば、彼女は先輩の依頼者でしたよね
最近彼女と連絡はしました?」

「そういえば、連絡はとってないかも…」

「言われてみれば彼女が今どうしてるかは分からないな
この際だから、電話してみるか?」

「早速かけてみますね」

三成は自分のスマホから教えて貰った電話番号を入力し、

依頼者である白浜 春瑠へと電話をかける。


しばらく呼び出し音が鳴った後、


電子音で衝撃の事実が判明した。


『現在、この電話番号は使われておりません』


「…………どういうことだ?」

「そんなの私が聞きたいのですが…
私達、嘘の電話番号を教えられたということですか?」

「先輩、少し見せて頂けますか?」

マコトは三成のスマホから電話番号を確認する。

それを見ると、納得した表情を見せた。


「ああ、この電話番号なら繋がらなくて当然ですよ」


マコトは荒牧のスマホから電話帳を表示して、
とある人物の名前をタップした。


「その電話番号は、
昨日転落死した白浜 春賀の電話番号なのですから」


その瞬間、何を思い立ったのか、
零時は白浜 春賀の遺体の写真を取り出した。

良く見ると、耳たぶにはピアスの穴の痕がある。

「…………なぁ、マコト」

「何でしょうか」

「白浜 春賀って、ピアスなんてつけるような人だったか?」

「いいえ、確かに派手な服装は多い方だったそうですが、
ピアスをつけるような人物ではありません」

「じゃあ、白浜 春瑠はどうだ?」

「彼女は大人しい服装をあえて着ていたようですが、
耳にはピアスをつけていたようです」

「なら、白浜 春瑠の写真はあるか?」

「はい、写真ならありますよ
彼女が先輩の依頼者ですよね?」

マコトに春瑠の写真を見せてもらうと、零時はふっと笑った。


「そうか、教えてくれてありがとう」



これで全ての情報は揃った。


後はこの確証を、確信に変える必要がある。


今回の事件に関わっていそうなのは…あいつしかいないだろう。


「行くぞ、三成」

「え、どこに行くんですか?」

「これから真相を確かめに行くんだ
きっと真相は、犯人の方が良く知ってるだろうからな」















依頼者である彼女とは現在連絡がとれない。


それなら今俺達が接触出来るのは、

恐らく今回の事件に大きく関わっており、

被害者の第一発見者の瀬谷だろう。



「瀬谷さん、春賀さんを殺した犯人が分かりました」

「本当ですか!?一体誰が春賀を…」

「犯人を言う前に、一度確認をしましょう
昨日殺されたのは白浜 春賀さんで間違いありませんね?」

「はい、間違いありません」

「実は警察に春瑠さんの写真を見せて貰ったのですが、
ある箇所が依頼者である春瑠さんと異なっていました」

「異なっている箇所?」

「あなたなら良く知っているでしょう?二人の見分け方を」

「もしかして…」

「そう、泣きぼくろです
本物の白浜 春瑠さんの写真にはそれがなかった
ならば、俺達に依頼してきた人物は誰なのか…
そうなると、自然と答えは一つしかありませんよね?」

「私達に依頼してきたのは、春瑠さんのお姉さんだった?」

「ああ、顔も同じだからそうなるだろう
何故妹のフリをして依頼してきたのかは分からないがな」

「もしそうだとしたら…本当の被害者は白浜 春瑠だった?」

「ですが、姉とは限らないじゃないですか
ただ姉のフリをしてるだけの妹だった可能性も…」

「それはあり得ません」

「何故そう言いきれるのですか?」

「瀬谷さん、春瑠さんはホットココアがお好きなようですね」

「…………はい、彼女の好物でしたから」

「春瑠さんは猫舌でしたか?」

「…………いいえ」

「俺達に依頼してきた彼女は猫舌でした
好物は妹に寄せていたようですが、
完全には真似しきれなかったようですね」

「………………」


「さて、そろそろ犯人を指摘しましょうか
春賀さん…いや、春瑠さんと、荒牧さんを殺した犯人は…」


零時は目の前の犯人を指差す。

今回二つの事件を起こした犯人は…


「あなたですよ、瀬谷さん」

瀬谷の表情には驚愕と動揺の表情が出ていた。

「どうして、僕が春瑠と荒牧を殺す必要が?」

「恐らくですが、殺害理由は金の無心でしょう
あなたから金を巻き上げていたのは、
春瑠さんと荒牧の二人ですからね
春賀さんはあなたの協力者と言った所でしょうか」

「では、どうやって二人を殺したのか聞かせて下さいよ」

「まず最初の事件は、彼女は転落死ではありません
恐らくどこかで撲殺した後、崖の近くまで引きずったのでしょう
背中に土がついていたそうですからね
中身が散乱したバックも、崖から落としただけですよね?」

「…………なら、荒牧の事件は」

「荒牧の事件は単純です
協力者である彼女と電話させることで隙を作り、
油断している所を刺したのでしょう」

「………………」

「ですが、俺の推理は今のところ憶測に過ぎません
証拠はまだ警察が調べている最中でしょう
なので、あなたの反応で判断することになりますね」

「……………もしここで否定したらどうするんですか?」

「先程述べた推理は憶測ではありますが、確信に近い
警察が真相を突き止め、ここまで来るのも時間の問題でしょう
それに、魂の真名を調べれば、誰かなんてすぐに分かりますから」

ここ冥府では、現世とは違って魂の真名を調べられる。

いくら別人の名を騙ろうが、調べてしまえばすぐに分かるのだ。

だから警察が別人だと気づくのも、時間の問題。 


「…………やっぱり、隠し通すには無理があったか…」




二人の人間を殺害した犯人、瀬谷 智寛は逮捕された。


やはり殺害理由は二人の金の無心。


零時の推理通り、春賀は瀬谷の共犯者だった。


数ヶ月も前から春賀は、自分との入れ替わりを提案し、


犯行を決行するまで、白浜 春瑠として生活していた。


わざわざスマホまで交換して…


勿論白浜 春賀も、共犯の罪で逮捕された。


冥府はいつも通りの平和を取り戻し、

彼岸警察も本来の業務へと戻った。


明日も、平和な一日になることを信じて…

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