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本編
第七話 欠けたペアリング(後編)
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零時と聞くと、どうしても現世のあの事件を思い出す。
『シンデレラ爆弾事件』
若い女性をターゲットにした、
零時ピッタリに爆発する爆発テロ事件だ。
零時に爆発することから、シンデレラ爆弾と呼ばれた爆弾は、
大勢の犠牲者を出した。
私は運良く助かったけれど、それでも救えなかった人が多い。
犯人こそ捕まったものの、犯行理由が………
『シンデレラの魔法をかけてあげたかった』
これを善意でやっていたのだから、頭がおかしいとしか思えない。
今はきっと、冥府にいるのだろう。
ちゃんと更正していると良いのだが……
……………話は変わるが、零時さんは予想外のことが起こったり、
困ったときはいつも伊織さんを呼ぶのだ。
伊織さんが優秀なのは知ってるけど、
少しくらい私に頼ってくれても良いのに……
そして、一番許せないのは名前呼び。
私の方が長くいるのに、私は三成と呼ばれている。
伊織さんは伊織さんなのに……こんなの不公平だ。
「三成、そんなに頬を膨らませてどうした、リスの真似か?」
「何でもないですーー!」
「本当に何なんだお前は……」
「えー、そんなことも分からないの零時くん」
「ニヤニヤするな気持ち悪い」
「ただ笑ってただけなのに酷くない!?」
優紀さんの部屋についた私達は、
まず目ぼしい場所を探すことにしました。
こういう勘はリョウ先輩が優れています。
「先輩、何か目ぼしい所はありますか?」
「そうだね……僕はあの辺りが怪しいかな」
先輩の指は、机の引き出しを指差していた。
一つだけ鍵がかけられている。
「ここが怪しそうだが……鍵がないな」
「先輩、ピッキングとか出来ません?」
「警察にそんな技能求めないでくれない?」
「今伊織を呼んだとしても、来れるか分からないしな……」
「君、困ったらいつもそればっかだね
今のところ彼岸警察に黙認されてる立場だってこと忘れてない?」
「証拠がなければ罪にはならんだろう?
それに、伊織の力は事件解決の為に使っている
悪いことはなにもしていない」
「はぁ……僕らはともかく、現世では気を付けてね
君の非合法な方法がバレて捕まっても、庇ってあげられないよ?」
「そんなヘマはしないから問題ない」
「そう、なら良いんだけど」
「探偵さん、これ何でしょうか」
「どれだ、見せてみろ」
「俺の部屋のカレンダーに、○が書いてあるんですよ
何か関係ありますかね?」
優紀の部屋のカレンダーには、
9月16日に○がつけられていた。
「運命の日………か、興味深いな」
「その日、何かの記念日でしたっけ?」
「さあな、だがカレンダーに書いてある以上、
何かの手がかりにはなるはずだ」
「優紀さんの恋人との記念日なんでしょうか……」
「それはまだ分からない、そう決定付けるのは早いだろう」
「まず、優紀くんが失踪した日さえ分かれば、
少しは手がかりが掴めそうだね」
「後で優紀さんのご両親に聞いてみましょうか」
「ここを一通り調べてからな」
「見てください、零時さん
机の上の箱、ダイヤルロックがついてますよ」
「答えは運命の日……分かりやすいな
両親向けに簡単にされているのか?」
ダイヤルロックを0916にすると箱は開き、
中には小さな鍵が入っていた。
その鍵を、引き出しに使うと………
「…………遺書?」
引き出しの中には、佐伯 優紀の遺書が入っていた。
前半は、親より先に死んでごめんなさいという謝罪から入り、
後半も当たり障りのない文章しかなかったが、
最後の一文が、零時の目に止まった。
『俺は愛する人と一緒になります』
「これは、心中の類いか
それにしても、どうして心中なんて……」
まだ情報が足りなすぎる。
依頼人は恋人と上手く行っていなかったのか?
それとも……普通の恋愛では、なかった?
「どうしました、零時さん」
「………後もう少し、ここを調べよう
彼らの行動の理由を知りたい」
零時さんは何かを考え込みながら、部屋を調べ始めました。
一体その遺書に何が書いてあったのでしょうか。
「その遺書、何が書いてあったんですか?」
「簡潔に言うと、生前の依頼人は心中をしたと思う
だが、その行動に至った理由がまだ分からないんだ」
「そうか、俺は心中を………」
優紀さんも何かを思い出そうとしているのでしょう。
しばらく黙りこんでしまいました。
「結局、その恋人って誰なんだろうね?
未だに出てきてないんでしょ?その子
少しくらい関連の物があってもおかしくないよね?」
確かに先輩の言う通りで、恋人がいるはずなのに、
関連の物が一つも見当たらないのはおかしいです。
大体写真だったり、彼女のプレゼントらしきものが
置いてあるはずなのですが……
「部屋を詳しく探してみたが、それらしき物はないな
あるとするなら依頼人の妹らしき女の写真だけだ」
確かに言われてみれば、この部屋には妹さんとの写真があるだけで、
依頼人の恋人らしき人の写真や小物は見つからない。
「これが、奈那ちゃんなんでしょうか……」
これは、家族写真の一つなのだろう。
家族四人で海に行った時の写真のようで、
両親と依頼人、妹さんが仲良さそうに写っている。
「随分と慎重に隠してたんだねー、彼女の存在を
それこそ、両親にバレたら困るみたいな隠し方で」
「…………両親にバレたら困る恋人か……」
零時さんは何かに気づいたのか、誰かと話しているようでした。
優紀さんのスマホの履歴がどうのこうの……とか言ってた気がします。
「分かった、ありがとう伊織」
どうやらまた伊織さんに何か調べて貰っていたようです。
やり取りを聞いていたのか、リョウさんは呆れた顔をしていました。
「両親の所に行くぞ、最終確認がしたい」
零時さんは足早に優紀さんの両親がいる部屋へと向かいました。
急いで追い付くと、零時さんが優紀さんの両親に何かを聞いている姿でした。
「なるほど、優紀さんがいなくなったのは9月13日ですか」
「はい、その三日後に奈那が優紀を探しに行ってしまって……」
「妹さんと優紀さんは仲が良かったのですか?」
「はい、奈那は優紀が大好きでしたので、
いつも優紀にくっついていました」
「あのペアリングのことはご存じでしたか?」
「あれは確か、優紀が奈那の入学祝いに買ったものだったと思います」
「優紀さんが失踪する前に何て言っていたか覚えてますか?」
「ーーーーーーーーー」
それを聞いた途端、零時さんがニヤリと笑いました。
相変わらず悪い顔がお似合いですね。
「なるほど、ありがとうございました」
「何か分かったのかい?零時くん」
「ああ、ここから一日で行ける範囲は限られているからな
目指すのは、あそこだ」
そこに移動するうちに、いつしか日も暮れ、
冥府の住人に優しい時間帯になっていた。
零時さんは日傘を畳み、早足で進む。
そこにはきっと、優紀さんの恋人が待っているのだろう。
「………………え?」
零時さんが向かっていたのは、ここからそう遠くない海だった。
そこにいたのは、優紀さんと恋人の心中場所にいたのは………
「あなたが、優紀さんの恋人なんですよね?
佐伯 奈那さん」
既に冥府の住人になっている、優紀さんの妹の奈那さんだった。
彼女が身に付けている指輪が、月光に照らされて光っている。
「いつから、私がお兄ちゃんの恋人だと?」
「きっかけは、何気ない一言からでした
恋人がいるにしては、あの部屋はあまりにも女っ気がない
あそこまで隠す理由は何なのかと……」
「確かに、それらしきものはありませんでしたけど、
どうして恋人が奈那さんと分かったんですか?」
「少し優紀さんのスマホを調べて貰いました
履歴には恋人らしき女性の履歴はなく、妹さんだけです
両親からも仲は良いと聞いていますからね」
そうか、零時さんはそれを調べていたのか。
けれど、それでも奈那さんが恋人だという確証にはならない。
「カレンダーに書かれた運命の日
遺書から察するに、あれは心中の日なのでしょう
優紀さんと恋人は、この日に死んだんですよね?」
「…………そう、探偵さんの言う通りです
俺は確かに、その日に死にました」
「あの、零時さん
優紀さんは最後に何て言っていたんですか?」
「『三日後にあの場所で会おうと奈那に伝えてくれ』
今から心中する奴が、関係ない奴を
自分の自殺場所に呼ぶわけがないだろう?」
「ああ、確かに………」
自殺するつもりだったのならば、
止められると分かっている相手を呼ぶことはないだろう。
呼ぶとするならば、それは一緒に死のうとしている人。
零時さんが言いたいのは、多分そういうことだろう。
「失踪する時間をずらしたのだって、
変に勘繰られないようにするためだろう
兄を探しに行った名目で行方不明になれば、
妹と死ぬつもりだと思われないと踏んだのだろうな」
「…………………」
「その何よりの証拠が、優紀と奈那の指に光るペアリングだ」
確かに良く見たら、二人の指にはペアリングがあった。
それは、零時さんの推理が正しいという証明でもある。
「……………流石ですね、探偵さん
そうです、俺達は恋人同士なんです」
お互いを愛おしそうに見つめながら、優紀さんは語った。
「許されない恋なのは分かっているんです
けれども、どうしても諦めきれなくて……」
「それで、心中をしたと?」
「……………はい」
「だから、優紀さんの部屋には、恋人の写真はなかったんですね……」
兄妹の恋だなんて、両親はどう思うのだろう。
許されない禁断の恋。世間に認められない恋。
だからこそ二人は冥府に託した。
せめてあの世では、堂々と愛し合えることを信じて……
「あの、このことは、両親には言わないで貰えませんか?」
「言いませんよ、あなた達二人の愛を邪魔するつもりはありません」
「ありがとうございます、探偵さん」
「さて、帰るぞ三成」
「え、二人をそのままにして良いんですか?」
「せめて今くらいは二人にしてやった方が良いだろ」
私達の背後で、二人が頭を下げているのが見えた。
どうかこれからは、
そのペアリングが欠けないように幸せになってほしいものだ。
数日後、零時に電話があった。
「初めまして、私の王子様!」
「…………誰だお前は」
「私の名前は姫川 瑠璃!
シンデレラ爆弾の名付け親でーす!」
「シンデレラ………爆弾?お前、あの時の!」
「あはは、あの時はごめんねぇ
最初は君の妹さん、殺すつもりはなかったんだけどぉ、
部下さんが間違えて殺しちゃったみたいなの!」
「…………それで、俺に何の用だ」
「あのねー、君のお手伝いがしたいなぁって!」
「お手伝い?」
「そう!王子様を苦しめちゃった分だけ、助けたいの!
私ちゃんと役に立つから!ねっ?お願い!」
「…………信用が出来ない
一度俺から大切な人を奪った奴を信じるわけがないだろう
どうせすぐに裏切るのがオチだ」
「大丈夫!私その為に黒王様に約束してきたの!
王子様の周りの人は絶対に傷つけませんって!
ねっ、それなら信用してくれる?」
黒王様と言うと………冥府の王じゃないか。
黒王様の約束事なら、絶対に破れない。
破れば魂が消されるのだから、そんな馬鹿な真似はしないだろう。
まあ、本当かどうか、一度確かめる必要はあるだろうが……
「分かった、一先ずは君を信用しよう
後で黒王様に本当か聞いておくが、問題ないよな?」
「うん、だって私嘘は言ってないもん!」
あの爆弾魔が利用してくれと言っているのだから、
有り難く利用してやるのがこちらの礼儀だろう。
切り札の一つ………という認識が妥当だろうな。
「ではこれから宜しくな、爆弾姫」
「うん!私の王子様!」
俺の正義が守れるのであれば、喜んで王子様とやらになってやろう。
『シンデレラ爆弾事件』
若い女性をターゲットにした、
零時ピッタリに爆発する爆発テロ事件だ。
零時に爆発することから、シンデレラ爆弾と呼ばれた爆弾は、
大勢の犠牲者を出した。
私は運良く助かったけれど、それでも救えなかった人が多い。
犯人こそ捕まったものの、犯行理由が………
『シンデレラの魔法をかけてあげたかった』
これを善意でやっていたのだから、頭がおかしいとしか思えない。
今はきっと、冥府にいるのだろう。
ちゃんと更正していると良いのだが……
……………話は変わるが、零時さんは予想外のことが起こったり、
困ったときはいつも伊織さんを呼ぶのだ。
伊織さんが優秀なのは知ってるけど、
少しくらい私に頼ってくれても良いのに……
そして、一番許せないのは名前呼び。
私の方が長くいるのに、私は三成と呼ばれている。
伊織さんは伊織さんなのに……こんなの不公平だ。
「三成、そんなに頬を膨らませてどうした、リスの真似か?」
「何でもないですーー!」
「本当に何なんだお前は……」
「えー、そんなことも分からないの零時くん」
「ニヤニヤするな気持ち悪い」
「ただ笑ってただけなのに酷くない!?」
優紀さんの部屋についた私達は、
まず目ぼしい場所を探すことにしました。
こういう勘はリョウ先輩が優れています。
「先輩、何か目ぼしい所はありますか?」
「そうだね……僕はあの辺りが怪しいかな」
先輩の指は、机の引き出しを指差していた。
一つだけ鍵がかけられている。
「ここが怪しそうだが……鍵がないな」
「先輩、ピッキングとか出来ません?」
「警察にそんな技能求めないでくれない?」
「今伊織を呼んだとしても、来れるか分からないしな……」
「君、困ったらいつもそればっかだね
今のところ彼岸警察に黙認されてる立場だってこと忘れてない?」
「証拠がなければ罪にはならんだろう?
それに、伊織の力は事件解決の為に使っている
悪いことはなにもしていない」
「はぁ……僕らはともかく、現世では気を付けてね
君の非合法な方法がバレて捕まっても、庇ってあげられないよ?」
「そんなヘマはしないから問題ない」
「そう、なら良いんだけど」
「探偵さん、これ何でしょうか」
「どれだ、見せてみろ」
「俺の部屋のカレンダーに、○が書いてあるんですよ
何か関係ありますかね?」
優紀の部屋のカレンダーには、
9月16日に○がつけられていた。
「運命の日………か、興味深いな」
「その日、何かの記念日でしたっけ?」
「さあな、だがカレンダーに書いてある以上、
何かの手がかりにはなるはずだ」
「優紀さんの恋人との記念日なんでしょうか……」
「それはまだ分からない、そう決定付けるのは早いだろう」
「まず、優紀くんが失踪した日さえ分かれば、
少しは手がかりが掴めそうだね」
「後で優紀さんのご両親に聞いてみましょうか」
「ここを一通り調べてからな」
「見てください、零時さん
机の上の箱、ダイヤルロックがついてますよ」
「答えは運命の日……分かりやすいな
両親向けに簡単にされているのか?」
ダイヤルロックを0916にすると箱は開き、
中には小さな鍵が入っていた。
その鍵を、引き出しに使うと………
「…………遺書?」
引き出しの中には、佐伯 優紀の遺書が入っていた。
前半は、親より先に死んでごめんなさいという謝罪から入り、
後半も当たり障りのない文章しかなかったが、
最後の一文が、零時の目に止まった。
『俺は愛する人と一緒になります』
「これは、心中の類いか
それにしても、どうして心中なんて……」
まだ情報が足りなすぎる。
依頼人は恋人と上手く行っていなかったのか?
それとも……普通の恋愛では、なかった?
「どうしました、零時さん」
「………後もう少し、ここを調べよう
彼らの行動の理由を知りたい」
零時さんは何かを考え込みながら、部屋を調べ始めました。
一体その遺書に何が書いてあったのでしょうか。
「その遺書、何が書いてあったんですか?」
「簡潔に言うと、生前の依頼人は心中をしたと思う
だが、その行動に至った理由がまだ分からないんだ」
「そうか、俺は心中を………」
優紀さんも何かを思い出そうとしているのでしょう。
しばらく黙りこんでしまいました。
「結局、その恋人って誰なんだろうね?
未だに出てきてないんでしょ?その子
少しくらい関連の物があってもおかしくないよね?」
確かに先輩の言う通りで、恋人がいるはずなのに、
関連の物が一つも見当たらないのはおかしいです。
大体写真だったり、彼女のプレゼントらしきものが
置いてあるはずなのですが……
「部屋を詳しく探してみたが、それらしき物はないな
あるとするなら依頼人の妹らしき女の写真だけだ」
確かに言われてみれば、この部屋には妹さんとの写真があるだけで、
依頼人の恋人らしき人の写真や小物は見つからない。
「これが、奈那ちゃんなんでしょうか……」
これは、家族写真の一つなのだろう。
家族四人で海に行った時の写真のようで、
両親と依頼人、妹さんが仲良さそうに写っている。
「随分と慎重に隠してたんだねー、彼女の存在を
それこそ、両親にバレたら困るみたいな隠し方で」
「…………両親にバレたら困る恋人か……」
零時さんは何かに気づいたのか、誰かと話しているようでした。
優紀さんのスマホの履歴がどうのこうの……とか言ってた気がします。
「分かった、ありがとう伊織」
どうやらまた伊織さんに何か調べて貰っていたようです。
やり取りを聞いていたのか、リョウさんは呆れた顔をしていました。
「両親の所に行くぞ、最終確認がしたい」
零時さんは足早に優紀さんの両親がいる部屋へと向かいました。
急いで追い付くと、零時さんが優紀さんの両親に何かを聞いている姿でした。
「なるほど、優紀さんがいなくなったのは9月13日ですか」
「はい、その三日後に奈那が優紀を探しに行ってしまって……」
「妹さんと優紀さんは仲が良かったのですか?」
「はい、奈那は優紀が大好きでしたので、
いつも優紀にくっついていました」
「あのペアリングのことはご存じでしたか?」
「あれは確か、優紀が奈那の入学祝いに買ったものだったと思います」
「優紀さんが失踪する前に何て言っていたか覚えてますか?」
「ーーーーーーーーー」
それを聞いた途端、零時さんがニヤリと笑いました。
相変わらず悪い顔がお似合いですね。
「なるほど、ありがとうございました」
「何か分かったのかい?零時くん」
「ああ、ここから一日で行ける範囲は限られているからな
目指すのは、あそこだ」
そこに移動するうちに、いつしか日も暮れ、
冥府の住人に優しい時間帯になっていた。
零時さんは日傘を畳み、早足で進む。
そこにはきっと、優紀さんの恋人が待っているのだろう。
「………………え?」
零時さんが向かっていたのは、ここからそう遠くない海だった。
そこにいたのは、優紀さんと恋人の心中場所にいたのは………
「あなたが、優紀さんの恋人なんですよね?
佐伯 奈那さん」
既に冥府の住人になっている、優紀さんの妹の奈那さんだった。
彼女が身に付けている指輪が、月光に照らされて光っている。
「いつから、私がお兄ちゃんの恋人だと?」
「きっかけは、何気ない一言からでした
恋人がいるにしては、あの部屋はあまりにも女っ気がない
あそこまで隠す理由は何なのかと……」
「確かに、それらしきものはありませんでしたけど、
どうして恋人が奈那さんと分かったんですか?」
「少し優紀さんのスマホを調べて貰いました
履歴には恋人らしき女性の履歴はなく、妹さんだけです
両親からも仲は良いと聞いていますからね」
そうか、零時さんはそれを調べていたのか。
けれど、それでも奈那さんが恋人だという確証にはならない。
「カレンダーに書かれた運命の日
遺書から察するに、あれは心中の日なのでしょう
優紀さんと恋人は、この日に死んだんですよね?」
「…………そう、探偵さんの言う通りです
俺は確かに、その日に死にました」
「あの、零時さん
優紀さんは最後に何て言っていたんですか?」
「『三日後にあの場所で会おうと奈那に伝えてくれ』
今から心中する奴が、関係ない奴を
自分の自殺場所に呼ぶわけがないだろう?」
「ああ、確かに………」
自殺するつもりだったのならば、
止められると分かっている相手を呼ぶことはないだろう。
呼ぶとするならば、それは一緒に死のうとしている人。
零時さんが言いたいのは、多分そういうことだろう。
「失踪する時間をずらしたのだって、
変に勘繰られないようにするためだろう
兄を探しに行った名目で行方不明になれば、
妹と死ぬつもりだと思われないと踏んだのだろうな」
「…………………」
「その何よりの証拠が、優紀と奈那の指に光るペアリングだ」
確かに良く見たら、二人の指にはペアリングがあった。
それは、零時さんの推理が正しいという証明でもある。
「……………流石ですね、探偵さん
そうです、俺達は恋人同士なんです」
お互いを愛おしそうに見つめながら、優紀さんは語った。
「許されない恋なのは分かっているんです
けれども、どうしても諦めきれなくて……」
「それで、心中をしたと?」
「……………はい」
「だから、優紀さんの部屋には、恋人の写真はなかったんですね……」
兄妹の恋だなんて、両親はどう思うのだろう。
許されない禁断の恋。世間に認められない恋。
だからこそ二人は冥府に託した。
せめてあの世では、堂々と愛し合えることを信じて……
「あの、このことは、両親には言わないで貰えませんか?」
「言いませんよ、あなた達二人の愛を邪魔するつもりはありません」
「ありがとうございます、探偵さん」
「さて、帰るぞ三成」
「え、二人をそのままにして良いんですか?」
「せめて今くらいは二人にしてやった方が良いだろ」
私達の背後で、二人が頭を下げているのが見えた。
どうかこれからは、
そのペアリングが欠けないように幸せになってほしいものだ。
数日後、零時に電話があった。
「初めまして、私の王子様!」
「…………誰だお前は」
「私の名前は姫川 瑠璃!
シンデレラ爆弾の名付け親でーす!」
「シンデレラ………爆弾?お前、あの時の!」
「あはは、あの時はごめんねぇ
最初は君の妹さん、殺すつもりはなかったんだけどぉ、
部下さんが間違えて殺しちゃったみたいなの!」
「…………それで、俺に何の用だ」
「あのねー、君のお手伝いがしたいなぁって!」
「お手伝い?」
「そう!王子様を苦しめちゃった分だけ、助けたいの!
私ちゃんと役に立つから!ねっ?お願い!」
「…………信用が出来ない
一度俺から大切な人を奪った奴を信じるわけがないだろう
どうせすぐに裏切るのがオチだ」
「大丈夫!私その為に黒王様に約束してきたの!
王子様の周りの人は絶対に傷つけませんって!
ねっ、それなら信用してくれる?」
黒王様と言うと………冥府の王じゃないか。
黒王様の約束事なら、絶対に破れない。
破れば魂が消されるのだから、そんな馬鹿な真似はしないだろう。
まあ、本当かどうか、一度確かめる必要はあるだろうが……
「分かった、一先ずは君を信用しよう
後で黒王様に本当か聞いておくが、問題ないよな?」
「うん、だって私嘘は言ってないもん!」
あの爆弾魔が利用してくれと言っているのだから、
有り難く利用してやるのがこちらの礼儀だろう。
切り札の一つ………という認識が妥当だろうな。
「ではこれから宜しくな、爆弾姫」
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