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第1話「すれ違う想い」
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春の陽射しが柔らかく降り注ぐ昼休み――。
図書室の静寂の中、松永雅は本を整理していた。窓際の席に腰を下ろし、周囲の喧騒から距離を置くようにページをめくる。けれど、どうしても視線が吸い寄せられる場所があった。
窓の外――体育館裏のバスケットボールコート。
そこでひときわ目を引く長身の少年が軽やかに動いている。五十嵐拓哉――雅の幼馴染であり、中学の時から付き合っている恋人。
「……遠くなったな。」
呟いた言葉は、風に紛れて消えていった。
高校生になってから、拓哉は急激に人気者になった。背が伸び、大人びた顔立ちになり、バスケ部のエースとして注目を集める。周囲にはいつも女子の視線が集まり、雅の手の届かない存在へと変わっていくようだった。
生まれたころからのお隣さんで幼いころから雅は拓哉のことが好きだった。将来は拓哉と結婚する以外考えられないほど雅は拓哉が好きで、中学のころは拓哉がバスケに入部すると言ったので、雅もバスケ部に入部した。中学3年の夏の大会で怪我をした雅は、高校ではバスケ部には入部せず放課後は叔父の喫茶店でバイトをしている。
最近の拓哉は、どこかよそよそしくて――距離ができ始めているのを雅は痛いほど感じていた。
そして、その瞬間が訪れる。
拓哉が、雅と隣のクラスのバスケ部のマネージャーと腕を組んで歩いていた――。
雅の胸に鈍い痛みが広がる。
(ただの部活仲間……?そんなわけない。)
ふたりの距離は近すぎた。腕を組むという行為は、ただの友人同士ではないはずだ。親しげな笑顔、自然な歩調、まるで雅の知らない世界の一部のようだった。
昼休みが終わり、拓哉が教室へ戻ってくる。雅はじっと彼を見つめたが、拓哉は何事もなかったかのように視線を逸らす。
「ねぇ、拓哉。さっき……誰かといたでしょ?」
冷静を装いながら、雅は問いかけた。
「ああ、マネージャーの用事に付き合ってただけ。」
拓哉は笑って言う。そのあまりにも軽い一言が、余計に雅の心を締めつけた。
(本当に、ただの用事なら――どうして腕を組んで歩いてたの?)
言葉を飲み込むしかなかったけれど、疑念は胸の中で膨らみ続ける。
雅は何も言わずに、そのまま日々を過ごした。けれど、心の中の違和感は消えない。
数日後――雅は、突然呼び出される。
体育館裏で待っていたのは、昼間、拓哉と腕を組んで歩いていた隣のクラスにいる女子マネージャーだった。
「松永さん……話があるの。」
雅の心臓が強く脈打つ。
「私、拓哉くんと付き合ってるんだけど。」
雅の世界が、一瞬にして音を失った。
「え……?」
(嘘よ……私が彼女のはずなのに。)
「拓哉くん、あなたに言われて仕方なく付き合ってるって言ってた。彼が本当に好きなのは私なの。拓哉くんとは早く別れてくれない。あなたに付き合わされている彼がかわいそう。」
そう言って、彼女は去っていき、雅は、その場に立ち尽くしていた。
(嘘……嘘……)
足が震えて逃げ出したかった。でも、体が動かない。
こみ上げる涙をこらえきれず、雅は構内の誰もいない場所へ駆け込んだ。そして――
「馬鹿みたい……私、馬鹿みたい……。」
涙が頬を伝い、地面へと落ちる。
図書室の静寂の中、松永雅は本を整理していた。窓際の席に腰を下ろし、周囲の喧騒から距離を置くようにページをめくる。けれど、どうしても視線が吸い寄せられる場所があった。
窓の外――体育館裏のバスケットボールコート。
そこでひときわ目を引く長身の少年が軽やかに動いている。五十嵐拓哉――雅の幼馴染であり、中学の時から付き合っている恋人。
「……遠くなったな。」
呟いた言葉は、風に紛れて消えていった。
高校生になってから、拓哉は急激に人気者になった。背が伸び、大人びた顔立ちになり、バスケ部のエースとして注目を集める。周囲にはいつも女子の視線が集まり、雅の手の届かない存在へと変わっていくようだった。
生まれたころからのお隣さんで幼いころから雅は拓哉のことが好きだった。将来は拓哉と結婚する以外考えられないほど雅は拓哉が好きで、中学のころは拓哉がバスケに入部すると言ったので、雅もバスケ部に入部した。中学3年の夏の大会で怪我をした雅は、高校ではバスケ部には入部せず放課後は叔父の喫茶店でバイトをしている。
最近の拓哉は、どこかよそよそしくて――距離ができ始めているのを雅は痛いほど感じていた。
そして、その瞬間が訪れる。
拓哉が、雅と隣のクラスのバスケ部のマネージャーと腕を組んで歩いていた――。
雅の胸に鈍い痛みが広がる。
(ただの部活仲間……?そんなわけない。)
ふたりの距離は近すぎた。腕を組むという行為は、ただの友人同士ではないはずだ。親しげな笑顔、自然な歩調、まるで雅の知らない世界の一部のようだった。
昼休みが終わり、拓哉が教室へ戻ってくる。雅はじっと彼を見つめたが、拓哉は何事もなかったかのように視線を逸らす。
「ねぇ、拓哉。さっき……誰かといたでしょ?」
冷静を装いながら、雅は問いかけた。
「ああ、マネージャーの用事に付き合ってただけ。」
拓哉は笑って言う。そのあまりにも軽い一言が、余計に雅の心を締めつけた。
(本当に、ただの用事なら――どうして腕を組んで歩いてたの?)
言葉を飲み込むしかなかったけれど、疑念は胸の中で膨らみ続ける。
雅は何も言わずに、そのまま日々を過ごした。けれど、心の中の違和感は消えない。
数日後――雅は、突然呼び出される。
体育館裏で待っていたのは、昼間、拓哉と腕を組んで歩いていた隣のクラスにいる女子マネージャーだった。
「松永さん……話があるの。」
雅の心臓が強く脈打つ。
「私、拓哉くんと付き合ってるんだけど。」
雅の世界が、一瞬にして音を失った。
「え……?」
(嘘よ……私が彼女のはずなのに。)
「拓哉くん、あなたに言われて仕方なく付き合ってるって言ってた。彼が本当に好きなのは私なの。拓哉くんとは早く別れてくれない。あなたに付き合わされている彼がかわいそう。」
そう言って、彼女は去っていき、雅は、その場に立ち尽くしていた。
(嘘……嘘……)
足が震えて逃げ出したかった。でも、体が動かない。
こみ上げる涙をこらえきれず、雅は構内の誰もいない場所へ駆け込んだ。そして――
「馬鹿みたい……私、馬鹿みたい……。」
涙が頬を伝い、地面へと落ちる。
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