粛清☆初笑い

三人称一二三

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粛清☆初笑い(前編)

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 正月にして人類は粛清を迎えた。人口は三千万人にまで減り、それは全盛期ーあるとすればだがーのぴったり五分の一だった。時期も時期の為、届いた年賀状は皮肉と化した。謹賀新年をあまり舐めないでもらいたい。
 それはともかく、この白樺道夫しらかばみちおは笑うことを生きがいとしていた。笑う為に落語を見て、笑う為に漫画を読む。このことからこの白樺は周りから木偶の坊と呼ばれていた。もっとも、それは十年も前の話だったが。今話すべき話ではないな。
 このままぐだぐだと設定を語るつもりはないので彼の家族関係に話を延ばすと、彼の家族はもはやその妻しか残されていない。彼は両親から死の間際に「絶対に笑うな」と言われていた。彼が笑わなくなったのは、それ以降の話だった。
 では何故、彼は鏡の前に佇んでいるのか?
では何故、彼は変わってしまった自身の顔を眺めているのか?

 人類は、笑ったから粛清された。
 彼は、笑っていないから粛清をされていない。

 それは偶然だったのか、あるいは必然だったのかは分からない。けれども彼は笑おうとした。
 いや、彼の顔のように打って変わって明るい話をしよう。彼の妻の名前は穂高ほだかチヤ。チヤは漢字で「千八」なのだが、これに関してはセンスを感じられないのでチヤで統一する。
 彼女に関しては辛いところはない。家が貧乏とか浮気性とか、そういうのに使われそうな設定はないのだ。
 そして一週間後に彼女は処刑される。普通に考えて笑うなと言われても笑うのが人類だ。

そうだ、銭湯に行こう。

これは突拍子もないことではない。彼は銭湯が笑いをもたらすと信じているのだ。そして穂高に獄中で再開しようと言う魂胆なのだ。彼は銭湯に行った。
銭湯は閉鎖されていた。何故か?白樺には理解の範囲外だったが、この銭湯の店主である大寺堂介だいじどうすけが彼の習性を理解していたため、経営をすることによって彼が笑うことを避けようとしたのだ。ー実のところ彼は迷惑客に分類されたのだけれど、大寺は優しかった。これには白樺も納得をせざるを得ない。
そして白樺は銭湯に潜入した。納得する訳がなかろう。
銭湯の奥の奥ー。深淵から声が聞こえた。
「リリリリーっ!これで全人類抹殺計画も大詰めってことか!?」
「止めてくださいデマカセ。そんな計画はありません」
声は女湯か男湯、どちらからか聞こえているように思えた。しかし彼には、どちらから聞こえてきたのかまでは分からなかった。どちらにせよ、彼が女湯に入ることはできない。結婚しているので七歳未満ということにもできない。

「…が聞こえていたらどうするんです?」
「いやあ、ここには誰もいないだろう!」
「さっきまではいたでしょう、店長を名乗る男が」
「それはまあ……」

しかも女湯のほうから声が聞こえたような気がし始めてきた。万事休すとは正にこのことである。
ええい、と白樺は思った。所詮はご都合主義、性別なんて変えて仕舞えば良かろう。そもそもジェンダーレスの時代、彼の性別は心理的には女ということにすればいいのだ…あ。

白樺道夫は男湯から出て来た二人の男に遭遇した。
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