こぎちゅねさまっ!

かねざね

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すかうと?

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ー春眠暁を覚えずー
うららかな春の日差しとそよぐ風に揺られる木々の音色はなんと心地よいことか…


ここはとある山の奥、近くに村があるものの人の数はそんなに多くもない。
山の獣や山菜を採りに度々訪れる者もいるが、わしの住処は昔から神の領域。
神域と呼ばれるこの場所に無闇やたらと介入してくる者も居ない。
ちょいと前にはダムでだったか、何やらこの山を切り開こうという愚かな話が出たらしいが、自然保護をうたう人間同士で争った結果その矢はポキリと折れたらしい。ざまぁみろ
何にせよ、ここにはこのわしが居るのだ。
邪魔者は容赦せずに叩き潰してくれる…!
そう、今わしが気持ちよく昼寝しようと微睡む中突然乱入してきたこの輩もなッ!




ご神木ともよばれるこの楠木は樹齢…いくつだったか。
こいつの太い枝は心地良く、わしの昼寝の定位置としてここ数十年の付き合いだ。
今日も空いた小腹を山菜で補い、長閑な一日を寝て過ごそうと太く逞しい枝の上にやってきた。
膝を折り前脚を伸ばしとぐぐぐっと背筋を撓らせる。
常に毛繕いし整えておる自慢の八つの尻尾を枕代わりに安定する位置へ伏せようとしたその時だった…パチンと空気が弾けるような音と共にそれは来た。

ーードスンッ!!

「ぐぇ…っ」
突然背に走った衝撃に思わず喉から潰れた声が漏れる。此所最近何事も無くて油断していたのか…否、そんな気配など感じなかった…というか重い。
くそったれえぇえどこのどいつじゃ、また西の山のアホ狗か?
昔から気に入らない黒い獣の顔を思い、潰された背に掛かる重さも構わずぐるりと腰を捻る。

ーーーーーーー誰?
先に居たのは見知らぬニンゲン。

「どうもー!おはようセニョールセニョリーター!わたくしヴァルガスティン帝国第三異世界情報保安管理部補佐兼交渉代理を勤めております、ルーノ・ラグナスと申します。すみません、ちょっと移転の着地に失敗しちゃったみたいで…」

てへっとわざとらしい愛嬌をのせ、異国から来た者なのかそいつは聞いたこともない長ったらしい言葉を捲し立ててくる。
明らかに適当な挨拶を述べたその金髪にわしが剥いた牙を向けるのは致し方ない事だ。

洋服は洋服でもそれはここらでは見たことのない形をしておるし、その白い布は首まで隠し、キラキラとした眩しい飾りがいくつも付いている。
かっちりという言葉が似合うその着物は、肩から羽根のような布を垂らして如何にも邪魔そうではあるが、金色の髪をしたそいつはそれに足を取られることも無く楠木の枝に立ち上がった。

べらべらと興味もない自己紹介を済ませても閉じることのない口は「いやぁ怪我しなくて良かった」などと、わしが何も言わない事を良い事にへらへらと笑った。


「誰の許可でわしの背に乗っておるかーーーー!!」

くらえっ!必殺お狐パンチ(爪有り)

胴体を捻り奴の顔をめがけて腕を振るう。
通常の力でまさか許す訳が無い、己の妖力を込めて通常よりも威力の増した攻撃。
おまけに普段は隠している威圧もちょっぴり解放、これに奴が気を後らせた隙におキレイな肌に傷の10や20つけてやるつもりだったのだが…

「わっ!ちょっと!突然乱暴なんかいけませんって…!」

通常ならば気後れでも起こしても仕方の無い威圧に奴は臆する態度もなく、繰り出したも手も横から握られた。
表情に焦った色を見せるも口調は相変わらずな金髪頭…こいつ、普通のニンゲンでは無いのか?

「く…っ!お前は一体何者じゃ!」
「だから言ったじゃないですかーーー
ヴァルガスティン帝国第三異世界情報保安管理部補佐兼交渉代理ルーノ・ラグナス、異世界から参りました。」

碧色をした目を細めてにっこりとそいつ、ルーノは笑った。



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