こぎちゅねさまっ!

かねざね

文字の大きさ
上 下
12 / 29
いせかい?

12

しおりを挟む
創世の女神、ルイズ
彼女が創った世界がアノルド。
大陸は大きく4つに分かれ、その中でも東に位置するのが此所、ヴァルガスティン帝国。

ルーノ曰く、この世界はわしがいた世界よりも神と人との距離が近いのだという。
進行が厚いというのも目に見えるもの程、信じる力が増えるという事か。

神官という神主の様に限られた人間にはなるが、国の中にある神殿では神と人と交信を測る事ができ、豊作の祈願は勿論、授かった赤子への祝福や亡くなった者への弔い事を行なう。
こちらの世界でも神が位置する場はさほど変わらない様な気がする。

「とまぁざっくりと説明するとこんな感じなんですけど…ーー、大丈夫ですか?」
「……ゔ…む…」

返事が出来ぬ、キモチワルイ…

身動きの取れない身体を支えるため、ルーノが用意しなふかふかとしたものにわしは蹲っていた。
その前で金髪は心配そうな声音で聞いては来るが、その表情はどこか嬉しそうである。
それはきっとわしが気怠く動けないのをいい事に、耳や尻尾を先程から遠慮なく触り続けているせいであろう。

毛繕いはもちろん日課であるし、わしの毛が触り心地良いことなど当たり前なのだが。
主の手で撫でられる事は好きじゃ、だがなぜ知り合ったばかりのこやつに、こうも好き放題されなければならぬのか、眉間に皺ばかりが増えて行く。
そもそもこの様な事態になったのも全てはこいつのせいじゃ!



ーーー「行きましょうか」
何とか結界が仕上がった後、先を促す声に首を捻った。
行くといっても異世界だという、あるばぁるなんちゃらとやらにどうやって行くのか検討もつかぬ。
佇むわしの姿に気付いたのか「あ、そういえば説明されてないんですよね」と、ルーノが言えば後に付いて来る様言われるがまま付いて行った先はお気に入りであった楠木。
そう、気持ちよくわしが昼寝にありつこうとしていたあの木である。

「先程ここに通路を開通させて頂いたんです。私が着いた時は少し歪みが発生して上から落ちて来ちゃいましたけど、今度はコチラからも術式を施したので大丈夫ですよ」
「道など見えぬ、いつもの木にしか見えんぞ」
「許可された者しか通れない構造なんです。先程張った結界もそうですよ。あそこの祠も今は許可された者にしか見えないし、入る事が出来ないんです。ここを通る為にはまず手を……って」

ふーん、何て事も無い…いつも通りの木であるこの姿のどこに道があるのか。

妙に好奇心が湧いて隣で説明をするルーノを他所に、わしの両腕では収まり切らない太さの幹に手を伸ばして触れた瞬間、それは起きた。

「!?!?金髪ぅうう!!?」
「ルーノですってばっ!じゃなくて説明は最後まで聞きましょうよっ!」

指先が触れた箇所が小さく光ったと思った瞬間、幹にできた割れ目から白くて細長い蔓が沸きでて伸びてきたのだ。
指先から腕と身体に巻き付くそれはまるでひとつひとつが意識を持つようで、逃げようとするわしの身体を幹へ引き込むように引いてくる。

ズルズルと地面に踏み込んだ踵の痕がつくだけで、その力に逆らって身体を引くがびくともしない。
小さかった光は口を開けるかのようにどんどんと広がり、得体の知れない恐怖に自由な手で隣の服を慌てて掴んだ。

「大丈夫です、その触手が神殿まで案内してくれるんですよ…って僕まで引っぱらないで下さいよ!」
「ぎゃー!尻尾まで触るでないッ!…っぁ!そこ…は…っ」
「あれ、…めちゃくちゃ歓迎されてるじゃないですか」
「なにを猶調なことを言って居る!助けんか…っ!あ、ちょっ…尻を触るでないわ!」

蔓は悪戯にわしの尻尾や内股をくすぐる様な動きをしたりするせいで身震いがする、なぜこんなものに弄ばれなければならんのじゃ!
主の夜着は捲れ上がり、それは腰に巻いた紐だけで留めているようなもの。

無慈悲にもわしが掴んでいた手を振り払ったやつは、隣で暢気に状況を観察し助けるつもりはないのかニコニコと笑むばかりで役には立たぬ。
恨めしく睨みつけるが、そのまま絡まる蔓から逃げられるわけもなく、わしの身体は序如に木の幹に飲込まれていく。

「あ、そうだ。初めは目を閉じてた方がいいですよ。……って言うの遅かったかな?」

半身が飲込まれた後のわしにそんな言葉が届いているわけもなく。
得体の知れぬ蔓に引き摺り込まれた先は、目が回るような視界。
昼夜も関係なく白と黒が混在しこれは一体どうなっているのか。
それを注意深く観察してしまったせいで、わしの三半規管はやられ、投げ出された冷たい石の床の上でへばっている所を後から続いて着たルーノに拾われた。

辿り着いたらしいヴァルガスティンの地を見て回るよりも早くわしはルーノに抱えられ、運ばれた先の部屋でソファーと呼ばれるものに乗せられると、文字通りの説明を受けつつ介抱されていた。

しおりを挟む

処理中です...