公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです

エルトリア

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14 擦れ違う心

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 アトリエ焼失の報せを受け、リーリエの自室を訪ねたアルフレッドは、彼女の無事を確かめるようにそっと二つの腕の中に閉じ込めた。

「……ごめんなさい」

 抱き締められたリーリエの唇から真っ先に漏れたのは、謝罪の言葉だった。

「どうして君が謝るんだい?」

「私がここに来なかったら、こんなことは起きなかったから……」

 胸を押し潰すような不安に声が震えている。アルフレッドに優しく抱き締められていても、その不安は一向に止まなかった。

「リーリエ……」

 抱き締め返すことも出来ずにいるリーリエの反応に、アルフレッドが困ったような声で名を呼ぶ。リーリエはアルフレッドの腕の中で顔を上げ、その胸をそっと押して抱擁から抜け出した。

「アルフレッド。私、ここから少し離れたいわ」

「それは、私と離れたいってことかい? 許嫁のことを隠していたのは謝るよ。でも、本当にアンナと私は――」

「違うの」

 どう伝えれば伝わるのだろう。何から話せば理解してもらえるのだろう。
 それを言葉で表現することができずに、リーリエはただ頭を振った。

「私、歓迎されていない気がして……」

「そんなことは……」

 アルフレッドの顔には明らかな困惑が浮かんでいる。言い淀む彼の心中を察し、リーリエは眉を下げて続けた。

「皆さんが良くして下さるのは、よくわかっているの。でも、そうじゃなくて……」

「母上のことだね?」

 今朝の新聞のこと、元許嫁のアンナのこと――。そしてアトリエの焼失。
 一日に多くのことが起こりすぎていた。受け止め切れない悪意は、リーリエの心を蝕み、笑顔を消してしまっている。その表情の変化を敏感に感じ取ったアルフレッドは、その場にひざまずいてリーリエの手を取った。

「それは私が話し合って、どうにかする。とにかく君がいなくなるのは困るんだ」

 アルフレッドが切実な表情で訴えるように言葉を紡ぐ。その視線に込められたアルフレッドの想いを痛いほど感じ、リーリエは目を潤ませた。

「君は私が守る。だから、どうか思い直して欲しい」

「…………」

 ――私は、アルフレッドが好き。
 その想いは揺らいでいない。だが、それを貫くべきかどうかは、最早リーリエにはわからなくなっていた。かといって、アルフレッドの好意を無下にすることなど到底出来るはずもない。
 迷った末にリーリエが出した決断は、アルフレッドを信じることだった。

「ありがとう、リーリエ」

 目を見て頷いたリーリエに微笑みかけ、アルフレッドはその手を取って立ち上がった。

「街へ戻る代わりにはならないかもしれないけれど、電話を用意するよ。屋敷の者以外とも話したいだろうからね」

「アルフレッド……」

 気遣いは嬉しかったが、上手く言葉に出来なかった。

「どこにでも、何時間でもかけてくれて構わない。それで君の気分が晴れるなら、大歓迎だよ」

 自分が話したいのは、誰よりも時間を共に過ごさなければならないのは、目の前の彼なのだ。
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