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第3話 両刀

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 肩で息をする仙花が亜孔雀を睨みつけながら、後方の雪舟丸へ苦しそうに声をかける。

「...雪舟丸、まだ動けるか?」

「万全ではないが、大丈夫、まだ動ける...」

「よし...ならば今より儂が全力で奴を攻める。その間にお主が奴の隙を突き葬ってくれ」

「...いやいや、仙花様。そればかりは何があろうとも得心がいかぬというもの。拙者は水戸の光圀公より命を賭してでも貴方様を守るよう命を受けている。囮なら拙者が引き受けましょうぞ」

「...雪舟丸よ。父上がお主に命じたことなんぞ今は忘れてしまえ。それに儂が言い出したら止まらぬことはお主も重々承知しておろう。つまらぬ問答は無用!いくぞっ!!」

 己に喝を入れるが如く、仙花は声を張り上げ雪舟丸に告げると紐で背に結んでいる刀の鞘から、光圀により授かりし宝刀「鳳来極光(ほうらいきょっこう)」を解き放つ。

 刀は金色の光を自ら放ち、そこら辺にある唯の刀ではないことを主張しているかのようであった。

 右手に「鳳来極光」、左手にはこれも光圀により授かりし名だたる名匠より生み出された最高峰の脇差「風鳴(かぜなり)」。

 仙花が両刀で戦うのは鬼武者「韋駄地源蔵(いだちげんぞう)」との一騎打ち以来のことである。

 両刀を構えた仙花を背後から眺めていた雪舟丸が目を閉じてため息を一つつく。

「やれやれ、刀姫は相変わらず、仕方なし...ならば危険が及ばぬよう全力をもって奴を切り捨てるまで...」

 雪舟丸はそう呟いて「カッ!」と瞼を開き、握る退魔の剣にして三大神器の一つに数えられる「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」を強く握り直した。
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