上 下
27 / 236

第26話 亡骸

しおりを挟む
 仙花に軽い感じで口止めをした柚須灘が雲峡の方へ向き直す。

「ところで雲峡ちゃん♪さっきまであった邪悪な悪魔の気配が無くなったようなのだけれど、察するに貴方が倒してくれたのよね?でも悪魔の亡骸が見当たらないわねぇ...」

「...あっ、、ああぁ。つい勢い余って一片の肉片も残さず消し去ってしまったよ...てへっ...」

 雲峡はことのほか嘘が下手である。

 そして己の爪の甘さによって逃した魚は大きかったかのかもと、僅かな後悔が頭をよぎり、隠しきれない動揺した姿が表に如実として出ていた。

「あらあらあら、それは困ったわぁ...あの邪悪な気は低級な悪魔とは到底思えない、明らかに上級以上の凄みを感じ取れたのだけれど...雲峡ちゃんらしくも無いことをしたものだわねぇ...」

 実のところ柚須灘は確信していたことがあった。
 その確信が100%のものでなかったとしても、己が感じ取った邪悪な気配がかつて仙人界に潜入し、天仙竺十二権に席を置いていた翠重架雅綾(すいじゅうかがりょう)と怒涛混府刹那(どとうこんふせつな)の両名と戦った者だという感覚的な認識があったのである。

 だからこそ柚須灘としては邪悪な覇気を放つ根源を見つけ、二人が殺された一件の真相を突き止めるという思惑からこの場に駆けつけたのだった...




しおりを挟む

処理中です...