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第34話 不意

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「若返りの神水...そんなものが存在するのですか...」

 仙人界に住んでいた経験のある真如さえ知らなかった様子。
 ホケッとしている真如の横から不意に雲峡が口を挟む。

「おいおい柚須灘。あれは誰しもが容易く口にできる代物ではなかろう。妙なことを真如に吹き込むな」

「あらあらあら♪雲峡ちゃんはよほど真如ちゃんを気に掛けているのねぇ。ちょっぴり妬けちゃうわぁ。でもご心配なくぅ、神水はわたしの判断一つでなんとでもして見せるわぁ♪」

「...ふん」

 自信満々の返答に鼻を鳴らす雲峡。

 柚須灘が雲峡の強さを認めているように、雲峡も柚須灘の知性と仙人界での地位の高さは重々承知していた。

「わかりました。柚須灘様よりのご依頼、この真如が確かに引き受けさせていただきましょう...」

「あらぁ♪引き受けてくれるのね、真如ちゃん♪」

 かくして、平穏だった峠の団子屋にて繰り広げられた亜孔雀との激しい戦闘、そして雲峡と柚須灘の突然の来訪により、仙女へと覚醒するべく目指していた『純真の洞穴』へ、堕仙女の真如が仙花一味を案内してくれることとなった。

 峠の団子屋前から、最初に柚須灘が光圀のいる水戸へ飛び立ち、続いて雲峡が真如へ励ましの言葉をかけて何処かの空へと消えて行ったのだった。
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