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第61話 忍耐

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 居合い抜きの構えを取り、互いが抜刀の機会を忍耐強く待つ緊張の膠着状態。

 何かしらの「きっかけ」さえあれば良いのだが...

 少しばかり二人から離れた仙花らが見守る中、その待ち侘びた「きっかけ」が遂に訪れようとしていた。

 もちろんそれは人工的に起こそうとするものでは無く、人力が到底及ばない自然現象が起こすものである。

 両脇に木々の生い茂るこの山道には、風がほとんど吹いていなかったのだが、そよそよと吹く風が流れ出し、やがて間もないうちに風が倍以上の強さになると、静かだった森の木々達が揺れ、「ザワザワ」と音を立て出した。

「風、じゃな」

「さようにございますねぇ...これでようやく二人の動く姿を見れそうでございます」

 仙花とお銀が言葉を交わしたあと、お銀の言葉通り、いよいよもって二人の達人が動くこととなる。
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