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第73話 屋根
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忙しいのかはたまた出払っているのか、柚須灘の呼びかけに、光圀の家臣が応ずる気配がない。
柚須灘が仕方なくもう一度西山御殿へ向かって呼びかける。
「御免くださいませぇ。私めは一人で旅をしている物好きにございます。どうかどちら様か応じてはいただけませんかぁ』
二度目の呼びかけに光圀は手にしていた湯呑みを縁側のお盆の上へ置き、「よっこらせ」と腰を持ち上げ入り口へと向かった。
光圀の姿を見るや否や、柚須灘が自然な美しい笑顔をつくり一礼する。
「お忙しいところへ突然現れ申し訳ございませぬ。私は「上杉登代(うえすぎとよ)」と申す旅人にございます」
柚須灘が適当に作った仮の名で自己紹介を済ますと、光圀が皺だらけの顔をさらに皺くちゃにさせて笑う。
「こっこっこっ。こんな人気(ひとけ)の少ない場所を女で一人歩いて来られたと?」
「はい...訳あって女の身一つで旅をしている阿呆にございます。近辺を歩いていたところ日が傾き始めましたので、何処か一晩泊めていただける屋根を探していたところにございますれば、私の眼に丘の上の大きなお屋敷が映ったものですから...」
柚須灘(登代)の言い分を聞き笑顔を崩さぬまま光圀が応じる。
「ほうほう、どのような訳ががあって一人旅をしているのか興味深いところではあるのう...」
柚須灘が仕方なくもう一度西山御殿へ向かって呼びかける。
「御免くださいませぇ。私めは一人で旅をしている物好きにございます。どうかどちら様か応じてはいただけませんかぁ』
二度目の呼びかけに光圀は手にしていた湯呑みを縁側のお盆の上へ置き、「よっこらせ」と腰を持ち上げ入り口へと向かった。
光圀の姿を見るや否や、柚須灘が自然な美しい笑顔をつくり一礼する。
「お忙しいところへ突然現れ申し訳ございませぬ。私は「上杉登代(うえすぎとよ)」と申す旅人にございます」
柚須灘が適当に作った仮の名で自己紹介を済ますと、光圀が皺だらけの顔をさらに皺くちゃにさせて笑う。
「こっこっこっ。こんな人気(ひとけ)の少ない場所を女で一人歩いて来られたと?」
「はい...訳あって女の身一つで旅をしている阿呆にございます。近辺を歩いていたところ日が傾き始めましたので、何処か一晩泊めていただける屋根を探していたところにございますれば、私の眼に丘の上の大きなお屋敷が映ったものですから...」
柚須灘(登代)の言い分を聞き笑顔を崩さぬまま光圀が応じる。
「ほうほう、どのような訳ががあって一人旅をしているのか興味深いところではあるのう...」
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