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第83話 資質

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「おっと、そうそう。其方の美しさに見惚れてうっかり忘れそうになるところであったわい。して、儂が仙人になりもっと長生きをしたいという願望と、其方が儂の前に現れたこととは関係があるのかな?」

 無論のこと、ここ迄の柚須灘との会話からして光圀が察しておらぬ筈もなかろうけれど、彼が得意とする惚けた顔をしながら質問したものだ。

「あらあらあら、光圀様はお惚け顔がお嬢ですわねぇ、フフフ...百も承知と存じて申しますけれど、人間である貴方様に仙人になる資質と資格があるや否か、仙人界一の知謀を誇るこの柚須灘がわざわざ足を運び見定めに参った次第でございます」
 
 外見はどうみても二十代後半と老齢の光圀と比し若く美しい柚須灘であったが、仙女であるからして実際の年齢は確実に彼の数倍はあった。

 だが、遥かに歳上で極めて才色兼備な彼女は、遠慮なしに自画自賛してきたことはさて置き、ここ迄ただの一度も光圀に対して無礼な口をはたらいてはいなかった。
 これは彼女が光圀の人格や才能を認めているからに他ならなかったものである。

「...で、柚須灘殿の見解や如何に?」

 慎重に問う光圀に、天使以上の微笑みを浮かべる仙女。

「そうですねぇ、私めの見解よればぁ、光圀様には仙人たる資質が大いにあらせられると判断させていただきましたわぁ♪」
 

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