上 下
134 / 236

第133話 悪道

しおりを挟む
 現代においての道路なるものは、アスファルトなどの施された非常に通りやすい道となっているわけだが、江戸時代の道はその昔よりもずっと整備されているとはいえ現代における道路とは雲泥の差があるものだった。

 故に木製でしかも最安値の大八車が道を進むには、ある程度の悪道は覚悟せねばならない。

 清兵が力強く引っ張り、後方でトキが支えながら進むに荷車は「ガタガタ」と上下に揺れながら進んで行く。

 清兵が後ろのトキに気を使って振り向き語りかける。

「トキ。すまんがもう少しだけ急ぐぞ。空気が冷たすぎる。もう暫く経てば雪が降ってくるやもしれん」

「大丈夫!こっちは気にせんでどんどん引いて行って下さいな」

 夫の気遣いに対し気遣いで返すトキ。
しおりを挟む

処理中です...