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第160話 継母

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 実のところ、この姫君が病弱な体質であることには理由があった。

 彼女の母親は、彼女を出産すると同時に命を落としてしまい、城主である父親はすぐに新しい妻をつくったものである。

 つまり姫君の育ての親は実の母親ではなく継母に当たり、この継母が原因で彼女は病弱な身体となっていた。

 そう、何処かで聞いたような話ではあるけれど、少量の毒を彼女の食事に潜ませ、毎日欠かさず彼女に与えていたのである。

 他の者たちからすれば姫君が生を亡くさずに済んでいるのは、継母の献身的な看病のお陰であるが如く目に映っていた。

 継母としては長い年月をかけて自然に姫君が亡くなり、城主との間に生まれた我が娘を城の新しい姫君として立てる狙いがあったわけであったが、この思惑は達成される前に破綻してしまうこととなる。

 誰にもばれることなく何年もかけ行って来た継母の企みは、姫君が「爺や」と呼ぶ躾と教育係である城主の信頼を置く老家臣により、料理に毒を含める姿を見つけられたのだった。

 爺やは直ちに証拠となる毒薬を継母から取り上げ、その身柄と一緒に城主の御前へと突き出され、激怒した城主は継母に死よりも恐ろしい体罰を与え、子供は残したものの、継母を城から永久に追放したものである。
 
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