刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編

第162話 桐子

　姫君の殺害計画という途方もない重罪を犯した刹乃であったが、城主の後妻であったがゆえ死刑を免れ、拷問を受ける程度で済んだとはいえ身体は傷だらけになり哀れなものであった。

　刹乃は足を引き摺りながらも何とか里帰りを果たし、実家に着くや否や母親を探し出し、豪快な嘘泣きして復讐を懇願する。

　刹乃の母親は嘘泣きであることはとっくに見破っていたけれど、我が子である刹乃の傷だらけの身体を見て可哀想に思い、酷い仕打ちをした城主をはじめとした城で位の高い者達への復讐を引き受けたのだった。

　母親の名は桐子（きりこ）といい、呪術師としては少しばかり世に名の知れた人物である。

　桐子が刹乃の憎む者達への復讐を果たすべく企てた計画は、人形に怪異を潜ませ、その怪異に城の者達を喰らわすという恐ろしいものだった。

　その計画を果たすには、既に存在している怪異を操って出来ないこともなかったのだが、桐子は刹乃の憎悪を利用して新しい怪異を生み出したものである。

　それが清兵一家を僅かな時間で参殺してしまった怪異、「姚紅」の誕生なのであった。

　残念なことに、桐子がこのあと行った復讐劇はまんまと彼女の思惑通りとなり、狙われた城の者達は一人残らずこの世から消されてしまったのだった...