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第203話 岩陰

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 不始末村の無駄に広い道を埋め尽くさんばかりに居た怪異の群れのほとんどが砕け、この世からかき消されたのだが、恐らくは等級の高い者であろう怪異は、肉体を残したまま道にその死骸を残した。  

 ともあれ、たった五人である仙花一味は、十倍以上の数であった怪異の群れを僅かな時間で壊滅させたのである。


「ふむ、皆の者、ご苦労であった」

 仙花が満足そうな表情を浮かべ家臣達に労いの言葉を送った。

「仙花様の活躍もお見事にござります。おっと、一人だけ物陰に隠れ何もせず傍観していた男がおりますねぇ...」

 お銀はそう言って、大きな岩の後ろに避難していた九兵衛に対し、一目見れば凍りついてしまいそうなほどの冷たい視線を送った。

 九兵衛が申し訳なさそうにして岩陰から出てくる。
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