刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

文字の大きさ
5 / 131

第1話 旅立ち ノ5

しおりを挟む
 梅干しが雪舟丸の額を直撃する寸前!

 寝ている筈の雪舟丸の右腕が想像を絶する速さで動き梅干しを人差し指と中指の間に挟んで掴んだ!
 さらには流れるように口へ運び一瞬とんでもなく酸っぱそうな表情をしたかと思うと、種子ごと飲み込み何事も無かったかのように寝息を立てて再び眠りにつく。
 恐るべし!阿良雪舟丸!

 仙花は目をキラキラと輝かせその様を目撃していた。
 周りの者達も絶句して驚きを隠せないといった御様子。

「これはこれはたまげたぞ!!ならばこれならどうじゃ!!」

 もう一度見たいという願望と試したい欲望から、沸騰した鍋に浸かる猪の肉を箸で掴み雪舟丸に投げつけた!

 雪舟丸が今度もやはり寝たまま無意識による二本指無刀取りをするが!?

「あっぢーーーーーーーーっ!!!?」

 肉に付いていた熱湯までは流石に掴めず額に飛び散り、瞼をカッと全開し絶叫をあげた!
 しかし周囲一同はまた驚愕することになる。
 なんと雪舟丸は熱々の肉を口に放り投げ、「はふいはふい!」と熱がりながらも噛んで飲み込んでしまい、直後に「すぴ~すぴ~」と眠ってしまったのだった。あり得ない。

「おっおお!ならばこれならどうじゃーーーっ!」

 好奇心の収まらない仙花が鍋ごと投げようと掴んだ!が。

「せ、仙花様!?流石にそれは止めておきましょうでござるよーーーっ!」

 蓮左衞門が容易に想像できる惨状が起こる前に慌てて止めに入り、すやすやと眠る雪舟丸は自身に降り掛かろうとした災難を免れたのであった。

 願望を成就できず不貞腐れた顔をする仙花に光圀がに上機嫌で話しかける。

「どうじゃ。儂が揃えた旅のお供どもは?面白い奴らじゃろう?」

 仙花が蓮左衞門、お銀、九兵衛、雪舟丸の順に顔を確かめ、笑顔を取り戻して返す。

「そうじゃなぁ。曲者がこれだけ揃えば愉快な旅は約束されたようなものかも知れんのう。誠に有り難き幸せじゃ。じっさま!」

「こっこっこっ。そうじゃろうそうじゃろう。儂もお主らと共に旅をしたくなってきたわい」

「光圀様それは如何様にも成りませぬ。お身体のことを考えれば長旅ができる道理は御座いません。だからこそ仙花様へ夢を託されたんでしょうに」

 間髪入れずに絹江から念を押され、光圀が白髭を手で撫でながら「およよ」といった表情をする。

「しょ、承知しておるわい。全くもって絹江は口うるさくて敵わん」

 冗談めかす光圀に蓮左衞門が言う。

「天下の水戸黄門の御老公も絹江殿の前では形無しですな」

「真にお主の言う通りじゃわい。ワッハッハッ」

「「「ワッハッハッハッ」」」

 光圀の大きな笑い声に釣られ、その場の全員が、否、騒がしいなか平然と眠る雪舟丸以外の全員が大いに笑ったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...