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第1話 旅立ち ノ14
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「...............................」
「....さま。....っさま。じっさまじっさまじっさまーーーーっ!」
「おっ!?おうおうおうおうおう!?」
刀と黒い板の話していたはずがいつの間にやら記憶を遡り、一人物思いに耽ってしまった光圀。
ぼ~っとしている元水戸藩主を前にただ黙って見ていた仙花だったが、我慢が効かずに名を呼び老体の肩を遠慮せず揺すった。
仙花は年齢相応の華奢な体つきをしている。が、肉体的な力は怪力の持ち主である蓮左衞門を腕相撲で圧倒するほど馬鹿強い。
身体を揺らされる光圀の頭が前後左右にカクカクと首が激しく動く玩具のように振れた。
「せせせ仙花っ!ややややめい!わわわ儂をああああの世におおお送る気かかか!?」
「おっ!戻ったかじっさま~♪」
言葉に反応した仙花が彼の両耳に両手を当てピタッと静止させる。
目の回った光圀が口惜しそうに言う。
「やや、い、今のは本当にやばかったかもしれぬ...僅かに底無しの三途の川を拝んだわい...」
聞いた仙花が屈託のない笑顔をして応じる。
「それはそれは珍しいものが見えて良かったのうじっさま♪」
「良いものか!儂はお主が旅から帰るまでは何があっても死ねんのじゃ!」
「そうか、ならば儂も絶対に死ぬわけにはいかぬなぁ。じっさま♪」
光圀の威勢の良さに比べ仙花は笑みを絶やさずご機嫌だった。
それには勿論深くはなく浅い浅い理由がある。光圀が思いの外長いこと過去の思い出に浸っているあいだ、突然ほったらかしにされた仙花は瓢箪一杯に入っていた酒を全て一気に呑み干していたのである。
「まぁ良かろう...とっととお主に伝えねばならんことを伝え、明日に備えて就寝させねばな...」
そう言って後ろに右腕を回し、一本の脇差を仙花の前に差し出した。
脇差は美しく濃い朱色の鞘に、黒い鍔、それに真っ白な柄というとても品の良い形を呈している。
「さっき酒の席で約束した水戸家の家宝じゃ。ただの脇差と侮るなよ。こいつは使う者によれば斬鉄すらも可能な切れ味抜群の脇差じゃ。稀代の名工「吉貞」が渾身の一振りにして名を「風鳴り」と云う。儂が若い頃手に入れたものの大事にし過ぎて一度も使っておらぬがな。手入れは絶えずしてある。我が娘仙花よ。これを受け取り大切にするが良い」
仙花の二つ名である「刀姫」は伊達ではない。小さき頃より肌身離さず刀を携帯し、毎日時間をかけて手入れもするし修練も絶やさない。そんな姿から光圀がつけたものだったが...あろうことか仙花は目を輝かせ、無意識の集中により涎を口元から垂らして家宝の「風鳴り」を受け継いだのだった。
「....さま。....っさま。じっさまじっさまじっさまーーーーっ!」
「おっ!?おうおうおうおうおう!?」
刀と黒い板の話していたはずがいつの間にやら記憶を遡り、一人物思いに耽ってしまった光圀。
ぼ~っとしている元水戸藩主を前にただ黙って見ていた仙花だったが、我慢が効かずに名を呼び老体の肩を遠慮せず揺すった。
仙花は年齢相応の華奢な体つきをしている。が、肉体的な力は怪力の持ち主である蓮左衞門を腕相撲で圧倒するほど馬鹿強い。
身体を揺らされる光圀の頭が前後左右にカクカクと首が激しく動く玩具のように振れた。
「せせせ仙花っ!ややややめい!わわわ儂をああああの世におおお送る気かかか!?」
「おっ!戻ったかじっさま~♪」
言葉に反応した仙花が彼の両耳に両手を当てピタッと静止させる。
目の回った光圀が口惜しそうに言う。
「やや、い、今のは本当にやばかったかもしれぬ...僅かに底無しの三途の川を拝んだわい...」
聞いた仙花が屈託のない笑顔をして応じる。
「それはそれは珍しいものが見えて良かったのうじっさま♪」
「良いものか!儂はお主が旅から帰るまでは何があっても死ねんのじゃ!」
「そうか、ならば儂も絶対に死ぬわけにはいかぬなぁ。じっさま♪」
光圀の威勢の良さに比べ仙花は笑みを絶やさずご機嫌だった。
それには勿論深くはなく浅い浅い理由がある。光圀が思いの外長いこと過去の思い出に浸っているあいだ、突然ほったらかしにされた仙花は瓢箪一杯に入っていた酒を全て一気に呑み干していたのである。
「まぁ良かろう...とっととお主に伝えねばならんことを伝え、明日に備えて就寝させねばな...」
そう言って後ろに右腕を回し、一本の脇差を仙花の前に差し出した。
脇差は美しく濃い朱色の鞘に、黒い鍔、それに真っ白な柄というとても品の良い形を呈している。
「さっき酒の席で約束した水戸家の家宝じゃ。ただの脇差と侮るなよ。こいつは使う者によれば斬鉄すらも可能な切れ味抜群の脇差じゃ。稀代の名工「吉貞」が渾身の一振りにして名を「風鳴り」と云う。儂が若い頃手に入れたものの大事にし過ぎて一度も使っておらぬがな。手入れは絶えずしてある。我が娘仙花よ。これを受け取り大切にするが良い」
仙花の二つ名である「刀姫」は伊達ではない。小さき頃より肌身離さず刀を携帯し、毎日時間をかけて手入れもするし修練も絶やさない。そんな姿から光圀がつけたものだったが...あろうことか仙花は目を輝かせ、無意識の集中により涎を口元から垂らして家宝の「風鳴り」を受け継いだのだった。
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