刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

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第1話 旅立ち ノ17

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 光圀が微妙に目を細め、重要な話しをする際に時折見せる真剣な表情を作り出す。

「無論じゃよ。お主も知っておるとは思うが...妖怪、いわばこの世の者とは思えん怪異の存在をお主も一度や二度は耳にしたことがあるであろう?」

「.......うむ。絹江や滝之助から鬼やら天狗やらのお伽話なら聞いたことがあるぞ。それが怪異と言うならば儂も知っておることになるのう」

「今言うた鬼やら天狗やらは正に怪異の典型的な者達じゃ。その者達が集い長い行列を形成して行進するのを『百鬼夜行』と云うんじゃが...肥後の阿蘇山にて目撃されたのを皮切りに、日向の新燃岳、大隅の桜島、そして最後に薩摩の開門岳で目撃したと云う知らせが一年ほど前隠密に江戸幕府へ届いておるのじゃ」

「ほうほう...して、それがどうしたというのだじっさまよ」

 黙って聞いていた仙花はことの重要さを理解していないのか、意に介さず呆気らかんとした表情をしていた。
 だが光圀は辛抱強く丁寧に話しを続ける。

「百鬼夜行というものはのう仙花。儂も長年生きておるが未だかつて見たことは只の一度も無いし、真しやかな単なるお伽話と思っておったんじゃが調べるうちに恐るべき事実が発覚したんじゃ。此度の目撃された百鬼夜行は真実性が高く、ある伝承によれば起こるべくして起きた大災厄の前兆らしいんじゃ」

「なるほどのう......じっさまよ。長話は朝の早起きより苦手ゆえ率直に言わせてもらうが、その大災厄をもたらすであろう怪異達を儂が仙女の力を手に入れ滅ぼせば良いのじゃな?」

 ここで仙花がようやく持ち前の頭と勘の良さを働かせ、光圀の言わんとしていることを端的にまとめ口にしたのだった。

「........そういうことじゃ。お主には悪いと思っておるのだが、実のところ今の幕府には得体の知れない脅威を退けるような戦力を割く余裕が無い。否、天下の愚将徳川綱吉に期待するは阿呆の望むところよ。彼奴では百鬼夜行に集いし怪異どもを滅ぼすことなど夢のまた夢なり」

 光圀自身が推して将軍となった「生類憐みの令」をもって世間より忌み嫌われる徳川綱吉。
 それだけに口惜しいのであろう。言葉には幾分か怒気が含まれていた。

「だからというわけでも無かったりあったりなんじゃがの。お主が仙女の力を手に入れることが出来れば怪異達にも太刀打ちできよう。だが、もし失敗すればその力は怪異どもに遠く及ぶまい。帰って来いと言ったのは無駄死になどせず生きて帰れという儂の強い願望なんじゃよ」
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