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第1話 旅立ち ノ19
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突き刺した長刀を天井から抜き雪舟丸が零す。
「手応え無し...逃げられたか....」
ゆっくり納刀する雪舟丸に光圀が訊く。
「曲者か?もしや儂と仙花の会話は最初かられていたのかのう?」
「恐らくは。しかしいつから天井裏にいたかは残念ながらわかりませぬ。拙者がもう少し早く感知していれば...」
剣術の達人にして気功術も達者な雪舟丸は、居眠り中の自己防衛の一環として半径10mほどの範囲に気を張り、その空間に何かが侵入すれば察知することができるという「気園(きえん)」なる技を持つ。
「気にするでない。儂と仙花は上に曲者が忍んでいようとは微塵も気づかんかったからのう。だが、僅かでも手掛かりが欲しいところであったな...」
「曲者に気付き部屋に入る前、念のため寝ていたお銀を起こし屋根に回り込むよう伝えてあります。あとは彼女次第かと.......」
西山御殿の屋根上を満月に近い月が神々しく照らす。
その場には、着物姿で寝入っていたはずのお銀が灰色の忍び装束を身にまとい立つ。
彼女の目前には一目でそれと分かる漆黒の忍び装束に身を包む忍者が腰をかがめていた。
「天下の水戸光圀公社によもや忍び込む者が居るとはねぇ。あんた何者だい?...いや待て、貴様、あたしと何処かで会ったことがあるな?」
大酒をかっ喰らって倒れ、爆睡していたとはとても思えないはっきりとした口調で問い正すお銀。
「...無駄な問いをするくの一だな。問われてほいほい名乗る忍びなどこの世にいるものか」
声で男だと分かるが黒頭巾を被っており夜の暗さと相まって曲者の顔までは把握できない。
だが頭巾を被らないお銀はしたり顔でニヤリと笑う。
「お主、さては駿河の抜け忍「雲隠れの磨伊蔵(まいぞう)」、だな?忍者界隈でもその腕は超一流と聴いておったが、存外そうでもないらしい」
「...................」
想定外に的を射られたのか男が口を閉ざす。
お銀の情報網は忍者の世界でも一二を争うほど広い。さらに記憶力も優れる彼女は一度聴いた人の声はほぼ完璧に覚えていた。
「ほんに間抜けな忍びがいたものだ。肯定も否定も成さず沈黙をもって答えるとはねぇ。ついでに誰の使いなのか教えておくれよ」
「.....流石は『妖の銀狐』とでも言っておこうか。正体は知られたが雇い主を明かすほど俺も馬鹿では無い。それに貴様を此処で消しておけば俺の正体を他の者に知られることもあるまい」
磨伊蔵はそう言い背中に結びつけた鞘から刀を抜き放った。
「手応え無し...逃げられたか....」
ゆっくり納刀する雪舟丸に光圀が訊く。
「曲者か?もしや儂と仙花の会話は最初かられていたのかのう?」
「恐らくは。しかしいつから天井裏にいたかは残念ながらわかりませぬ。拙者がもう少し早く感知していれば...」
剣術の達人にして気功術も達者な雪舟丸は、居眠り中の自己防衛の一環として半径10mほどの範囲に気を張り、その空間に何かが侵入すれば察知することができるという「気園(きえん)」なる技を持つ。
「気にするでない。儂と仙花は上に曲者が忍んでいようとは微塵も気づかんかったからのう。だが、僅かでも手掛かりが欲しいところであったな...」
「曲者に気付き部屋に入る前、念のため寝ていたお銀を起こし屋根に回り込むよう伝えてあります。あとは彼女次第かと.......」
西山御殿の屋根上を満月に近い月が神々しく照らす。
その場には、着物姿で寝入っていたはずのお銀が灰色の忍び装束を身にまとい立つ。
彼女の目前には一目でそれと分かる漆黒の忍び装束に身を包む忍者が腰をかがめていた。
「天下の水戸光圀公社によもや忍び込む者が居るとはねぇ。あんた何者だい?...いや待て、貴様、あたしと何処かで会ったことがあるな?」
大酒をかっ喰らって倒れ、爆睡していたとはとても思えないはっきりとした口調で問い正すお銀。
「...無駄な問いをするくの一だな。問われてほいほい名乗る忍びなどこの世にいるものか」
声で男だと分かるが黒頭巾を被っており夜の暗さと相まって曲者の顔までは把握できない。
だが頭巾を被らないお銀はしたり顔でニヤリと笑う。
「お主、さては駿河の抜け忍「雲隠れの磨伊蔵(まいぞう)」、だな?忍者界隈でもその腕は超一流と聴いておったが、存外そうでもないらしい」
「...................」
想定外に的を射られたのか男が口を閉ざす。
お銀の情報網は忍者の世界でも一二を争うほど広い。さらに記憶力も優れる彼女は一度聴いた人の声はほぼ完璧に覚えていた。
「ほんに間抜けな忍びがいたものだ。肯定も否定も成さず沈黙をもって答えるとはねぇ。ついでに誰の使いなのか教えておくれよ」
「.....流石は『妖の銀狐』とでも言っておこうか。正体は知られたが雇い主を明かすほど俺も馬鹿では無い。それに貴様を此処で消しておけば俺の正体を他の者に知られることもあるまい」
磨伊蔵はそう言い背中に結びつけた鞘から刀を抜き放った。
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