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第2話 出雲の地へ ノ7
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蓮左衞門と九兵衛の二人が程なく合流しても暫くのあいだ仙花の早歩きは止まることを知らない。
その甲斐あってか一行は予定より早く旅路を進めることができた。
あと幾ばくも歩けば常陸と下総の境目に差し掛かろうとしたところで昼飯時となり、一行は出発の際に絹枝から頂戴した握り飯を食べようと、川のほとりの満開に咲き誇る桜の木の下に腰を下ろした。
目の前には太陽の光に照らされた綺麗な小川が静かに流れている。
「いやぁ、最高の場所が見つかって良かったでござるなぁ。此処ならば花見気分も味わえようというものでござる」
あれだけの荷物を背負いながら走ったというのに、疲労を感じさせない蓮左衞門はすこぶる上機嫌だった。
「フフフ。蓮さん、折角だから酒でも呑むかい?」
「花見」という言葉を聞き、お銀が腰につけていた瓢箪を手に取り栓を開ける。
「おっと、そいつは水が入っていつのかと思っていたが酒だったのでござるか?」
「フフフ、酒好きのあたしが水なんかぶら下げたって意味ないじゃないか。酔うほど呑むわけにはいかないけれど、少しくらい楽しもうじゃない」
旅先で喉が渇けば普通は水であろうに...
「おっ!?良いのう♪儂にも一杯おくれ~」
昨夜の呑み比べをもって大酒豪確定の仙血を持つ仙花。いつの間にやらお猪口を取り出し無邪気にお銀の目前に差し出した。
「おやおや仙花様。もちろんお酒を呑むのは構いませんよ。ただ、一人一杯限定にさせていただきますので、その辺はご了承くださいましね」
「わ、わかっておるわい...ちびちびとやるゆえ早よう注いでくれ」
念押しされて残念そうにする仙花ではあったものの、注がれたお猪口一杯の酒を舐めるようにちびちびと呑み始めた。
お銀が蓮左衞門と九兵衛にも分けてやり、やっと自身のお猪口にゆっくり注いでいると、いきなり別の誰かの腕と手が視界に入る。
「て、手前も酒を一杯所望する」
視線を上げ誰かと確かめるお銀。
「雪舟丸...お主、随分とまぁ都合良く目覚めるんだねぇ。あんたの起きる時ってのは飯を食べる時だけなのかい?」
「いやぁ、そういうわけではないよ。しかし起きているのが飯時に集中しているのは否定し難い事実ではあるなぁ...」
雪舟丸は表情をほとんど変えず飄々とそんなことを言ってのけた。
「簡単に言っちゃってくれるんだねぇ。あんたが寝ているあいだにうちらには色々あったりするんだよ。その変な居眠り癖はなんとかならないのかい?」
「ならぬ」
雪舟丸は短く答えたあと、お猪口に注がれた酒をグイッと一気に呑み干した。
その甲斐あってか一行は予定より早く旅路を進めることができた。
あと幾ばくも歩けば常陸と下総の境目に差し掛かろうとしたところで昼飯時となり、一行は出発の際に絹枝から頂戴した握り飯を食べようと、川のほとりの満開に咲き誇る桜の木の下に腰を下ろした。
目の前には太陽の光に照らされた綺麗な小川が静かに流れている。
「いやぁ、最高の場所が見つかって良かったでござるなぁ。此処ならば花見気分も味わえようというものでござる」
あれだけの荷物を背負いながら走ったというのに、疲労を感じさせない蓮左衞門はすこぶる上機嫌だった。
「フフフ。蓮さん、折角だから酒でも呑むかい?」
「花見」という言葉を聞き、お銀が腰につけていた瓢箪を手に取り栓を開ける。
「おっと、そいつは水が入っていつのかと思っていたが酒だったのでござるか?」
「フフフ、酒好きのあたしが水なんかぶら下げたって意味ないじゃないか。酔うほど呑むわけにはいかないけれど、少しくらい楽しもうじゃない」
旅先で喉が渇けば普通は水であろうに...
「おっ!?良いのう♪儂にも一杯おくれ~」
昨夜の呑み比べをもって大酒豪確定の仙血を持つ仙花。いつの間にやらお猪口を取り出し無邪気にお銀の目前に差し出した。
「おやおや仙花様。もちろんお酒を呑むのは構いませんよ。ただ、一人一杯限定にさせていただきますので、その辺はご了承くださいましね」
「わ、わかっておるわい...ちびちびとやるゆえ早よう注いでくれ」
念押しされて残念そうにする仙花ではあったものの、注がれたお猪口一杯の酒を舐めるようにちびちびと呑み始めた。
お銀が蓮左衞門と九兵衛にも分けてやり、やっと自身のお猪口にゆっくり注いでいると、いきなり別の誰かの腕と手が視界に入る。
「て、手前も酒を一杯所望する」
視線を上げ誰かと確かめるお銀。
「雪舟丸...お主、随分とまぁ都合良く目覚めるんだねぇ。あんたの起きる時ってのは飯を食べる時だけなのかい?」
「いやぁ、そういうわけではないよ。しかし起きているのが飯時に集中しているのは否定し難い事実ではあるなぁ...」
雪舟丸は表情をほとんど変えず飄々とそんなことを言ってのけた。
「簡単に言っちゃってくれるんだねぇ。あんたが寝ているあいだにうちらには色々あったりするんだよ。その変な居眠り癖はなんとかならないのかい?」
「ならぬ」
雪舟丸は短く答えたあと、お猪口に注がれた酒をグイッと一気に呑み干した。
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