刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

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第3話 芥藻屑との戦 ノ37

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 気絶したまま雪舟丸に引き摺られる九兵衛を他所に、仙花の一行は早歩きというかほぼ駆けると言っても良いくらいの速さで夜道を進み続け、遂に芥藻屑の拠点があるであろう小さな山の麓に辿り着いた。

 黙々と歩き続けていた一行の中でも超人的体力を誇る蓮左衞門が立ち止まろうともせずに声を発す。

「郷六の話しが正しければ、芥藻屑の拠点はもう直ぐでござるなぁ」

 一行は此処までの道のりでたった一度だけ休憩を挟み、その際に焼いた馬肉を食して仮眠を少しだけ取っている。
 とは云え、夜通し歩き続けたというのに九兵衛を除いた四人は意気揚々としていた。
 それは下総の地の大悪党集団芥藻屑との戦(いくさ)を間近に控え気が張っていたこともあろうが、やはりは体力や戦闘力において常任の遥か上を行く四人だからこそである。

 不名誉な意味でその四人と一線を画す平民体力しか持ち合わせぬ九兵衛は、藁の御座布団で完全に覆われ、まるで巨大な藁納豆のような姿になり引き摺られていた。

「よし、此処らで九兵衛を起こすぞ。皆の者、歩く脚を止めよ」

 仙花の指示でお銀と蓮左衞門が歩みを止めると、最後尾の雪舟丸も自然に脚を止める。

 蓮左衞門がゴミのようにボロボロとなった九兵衛の入った御座布団へと近づき、雑に力強く御座布団を引き裂いた。

「おわっ!?」

 中の九兵衛の姿を見た蓮左衞門が珍しく驚き後ろへ退けぞった。
 何故なら気絶したままの九兵衛の頭には大きなタンコブがいくつもでき、顔面は腫れあがってしまい血だらけとなっていたからなのだが....
 化け物でも見たかのように驚いた蓮左衞門が気を取り直し九兵衛の頬をペシペシと叩く。

「九兵衛起きろっ!このままだと出血多量で本当に逝ってしまうでござるよぉ!」

 実際のところそこまでの流血量ではなかったけれど、蓮左衞門はあまりの無残な姿を見て動転していたのであろう。

 頬を何度も叩かれた九兵衛が腫れた顔を益々腫れ上がらせ、急に意識が戻ったのか上半身をむくりと起こし欠伸する。

「ふぅぁぁぁぁ、よく寝たあぁ...ん!?皆様方、揃い踏みでこっちを見ているようですがぁ、あっしの顔に虫でも止まっているでやんすか?」

「あらあら、なんとも無様ねぇ...」

「...其方、身体はどうもないのか?」

 お銀は予想通りの冷めた言葉を贈り、仙花は目を丸くして彼の身体を気遣った。

 仙花に訊かれた九兵衛は、座ったまま己の頭と顔に触れて状態を確かめる。頬に触れた際にヌルッとした嫌な感触を手に感じ、恐る恐る視界に掌を入れる。

「なっ!?なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!??」

 遥か遠い未来の伝説的な死に際決まり文句を絶叫したのだった。
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