刀姫 in 世直し道中ひざくりげ 鬼武者討伐編

流川おるたな

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第3話 芥藻屑との戦 ノ66

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「...お主も若くしてその強さとはなかなかのものだぞ」

 雪舟丸が決闘相手に賞賛の言葉をかけるなどというのはかなり稀なことであった。
 これは彼の人間性云々ではなく、戦う相手のほとんどが瞬殺されてしまうからなのだが...

「嬉しいなぁ...では、お褒めの言葉を頂戴したところで一矢報わせてもらうとしましょう」

「ほう、まるで奥の手でもあるような口振りだな...よしんばそんなものがあるのなら見せてみろ。ただし、俺も最速の剣で迎え討たせてもらうがな」

 煽り返した雪舟丸が刀を鞘にスッと収め、若干姿勢を低めて居合抜きの体勢に入った。

「居合ですかぁ、いやぁ参ったなぁ...とか言ってる場合でもないですよね。じゃあ、行きますよ...」

 同じく二本の刀を鞘に収め、ゆるりと一つ大きな深呼吸をする可惜夜千里。
 すると直前まで荒れていた彼の呼吸が整い、眼を瞑りその場でトンと軽く跳躍したあと円を描くように足踏みを始めた。
 それはただの足踏みではなく、ゆらゆらとする軽やかな動きはさも踊っているようにも見える。

「.............」

 雪舟丸は彼の所作全てに己の全神経を集中させ、黙して静かなる眼で追っていた。
 
 軽やかな足踏みが一気に加速し、常人の眼では追いきれぬほどの速さに達した時、可惜夜千里の眼がカッと開く!

「天上天下唯我独尊、真蒼天流月光抜刀牙(しんそうてんりゅうげっこうばっとうが)!」

 技の名を言い終えるより早くその場を動いた彼の速さは尋常ではなかった!
 残像を残すほどの速さで間を詰めるは直線的に非ず、左右に小刻みに動きながら移動するその姿は忍者の「分身の術」を彷彿とさせる!

 集中する雪舟丸の眼に可惜夜の上段斬りが映った刹那!

「っ!!?」

 何かに気付いた雪舟丸がコンマ何秒かをずらして抜刀する!
 
「ギィン!!」

 最速の居合抜きが弾いたるは最初に眼に飛び込んでだ上段斬りの刀ではなく、下から襲って来た右切り上げの一刀であった!

「キィン!!」

「ドン!」

「ぐっ!!??」

 神速の剣が上方からの攻撃も弾き返し、さらには横倒しにした刀の柄頭で可惜夜の喉元に突きを入れた!

 突きを喰らい、一瞬呼吸が止まった可惜夜は堪らずその場に膝をつく。

 雪舟丸が刀の先を彼の眉間に触れようかという位置で止め物申す。

「試行錯誤して編み出し鍛錬された見事な技だった。それに体術の所作も速い。相手が俺でなければ立っているのはお主だったかも知れないな...俺はもう勝負ありと考えているが、お主はこの決闘をまだ続ける気はあるか?」
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