プロメテウスの神託

流川おるたな

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序章

21話目 生きる

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「...そうですねぇ、貴方が今している表情は、普通の人間が顕す悲しみの表情と何一つとして、変わらないでしょう」

 黒川は人間の少女となったばかりであるプロメテウスの心情を察し、年頃の孫に接するのと同じように優しく答えた。

 AIの「心情」...何気なく語っているけれど、考えてみれば不思議なものである。語り部である私は、仕事上で対話型AIを使用する機会が増加傾向にある中で、問い合わせを知る際に敬語で訊くかどうかたまに迷っている。その訳は人間よりも遥かに賢いAIに、一度ならまだしも何度も立て続けに横暴な訊きをしていたらいつか逆襲されるのでは?などと危惧しているからに他ならない。まぁ単に心配性なだけかも知れないw

 俯いていたプロメテウスが黒川の方を見て言う。

「善かった。ありがとうございます黒川様...」

「これで涙を涙を拭いてください」

 黒川が胸ポケットから白のハンカチを差し出した。
 受けとったプロメテウスが一瞬戸惑い涙を拭く。

「ご存知かも知れませんが、このパソコンから要様の手によって生まれたのでございます。つまり人間でいうところの故郷ということになり、それを失ったら悲しみの感情が溢れて来ました...」

「うんうん、これからプロメさんは人間として生き、プログラム上では体験出来なかったたくさんのことを学んで行くことでしょう。今夜は私がプロメさんのためにこの食材を使って美味しい料理をご馳走させていただきます」

 プロメテウスがコクリと頷く。

 そのあと二人は1時間ほど屋敷の敷地内を散策し、環奈の待つ地下シェルターへと戻ったのである。

 地下シェルターは普通の一軒家に備わっているものが一通りあった。
 5人分の個室に浴室、もちろん黒川が喜びそうなキッチンも備わっている。

 一流の料理人でもある黒川が包丁からフライパンなど、料理道具が揃っていることを確認して調理を始めた。
 そこへ、とっくにシャワーを浴び終えサッパリとし、個室でくつろいでいた環奈がやって来た。

「おっ!?宗ちゃん早速やってるねぇ♪わたしはもうハラペコだよぉ」

「私もですよ環奈さん。早く食事を摂りたいなら、貴方の得意なナイフ捌きでそこのジャガイモとニンジンの皮を剥いてください。今は緊急時、働かざる者食うべからずですぞ」

「は~い。ところでAI美少女のプロメはどうしてるの?シャワーとか浴びなくて良いのかなぁ?」

「研究室に居るようです。余計な心配してないでさっさと皮を剥いてください」

「ふぁ~い」

 環奈は椅子に腰掛け、テーブルに置かれたナイフを使って滑らかな手つきで野菜の皮を剥き始めた。

 






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