やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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教育係の久慈さん

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「ごめん、待たせたね黒川さん。じゃあ、動物たちの給餌(きゅうじ)の準備に行こうか」

「はい、お願いします!」

 久慈さんと一緒に歩き、事務所から出て園内を進んで行く。

「あっ!訊くのが遅れたけど、メモ帳と筆記用具は持って来てるかな?」

「大丈夫ですよ。ここに入れてあります」

 わたしは胸ポケットを指差してメモ帳が入っている事を示した。

「いま気付いたんだけど、その作業服意外と似合ってるね」

「そ、それはどうも…」

 作業服が似合うと言われて喜ぶ若い女性が、世間にどれだけいるのだろうか?

 決めつけるのは良くないけれど、久慈さんは女心が分からないタイプの人なのかも知れない。

 敢えて違う話に持って行こう。

「あの、当たり前の話なんですけど、開園前の動物園は初めての経験なんです。お客さんがいないからとても静かで、動物たちの鳴き声が凄く響くんですね」

 わたしは内定を貰ってから観覧客として、この動物園を何度か訪れている。
 だから、開園中と開園前ではこんなにも違うのかと少し驚いていた。

「うん、動物たちの鳴き声が良く聴こえるよね。僕は開園前の静かな動物園が一番好きなんだよ」

 久慈さんは気持ち良さそうな顔をしていた。

 この雰囲気が気に入りつつあったから気持ちは何となく分かる。

「ところで黒川さん、園長からこの動物園の秘密は聞いたかい?」

 おっと!急に重い話題をぶっこんで来ましたね、久慈さん。

「…えっと、はい、聞きましたよぉ。朝からめちゃくちゃびっくりさせてもらいました。でも本当の話しなんですかね?人間はわたしと久慈さんだけで、あとの社員は全員妖怪だなんて」

「僕も初出勤当日に聞かされて信じられなかったけど、本当の話しだよ。ちなみに数種の動物たちの中にも妖怪がいるからね」

「えっ!?動物の中にもですか!?」

 という事はここまで歩きながら動物を見てるけど、中には妖怪が居たかのもしれない。

 今はブレスレットを着けてるので何も見分けがつかなかった…この動物園で働く時は外した方が良いのかも。

 わたしはブレスレットを外してポケットに入れ、鳥が数種いる檻の方に目を向けた。
 4つある檻の右端にいるアオサギの中に、青白い火の玉が見える。

「げっ!?あのアオサギはひょっとして妖怪ですか?」

「おっ!正解だよ。やっぱり魔女には分かるんだね」

 !?、そっか、久慈さんはもう知ってるのか。

「あの、わたしが魔女だってことは誰に聞いたんですか?」

「園長だよ。君の教育係に指名された時に教えてくれた。僕の口の堅さは折り紙付きだから心配しなくても大丈夫!絶対他言はしないと約束するよ」

 今迄の人生の中で今日が一番ドキドキする日になりそう。
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