やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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やしあか食堂

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「そっか、じゃあ今日は黒川さんの初出勤を祝して僕が奢ってあげるよ。と言っても園内の食堂だけど」

「え!?良いんですか?でもお金は持って来てるので大丈夫ですよ」

「あ、いや。良いんだ良いんだ。最初からそのつもりだったんだよ。だから気にしないで」

「そうなんですね。ありがとうございます!」

 ここは厚意を素直に受けておこう。悪戯はされたけれど、久慈さんて良い先輩なのかも知れないな...

 二人で園内にある[やしあか食堂]まで移動した。
 時間帯が丁度お昼時という事もあり、食堂内は一般客で賑わっている。

「社員の食事を摂るスペースはあっちの部屋なんだ。先にメニューを選びそこのメモに記入して食堂の人に渡す。そうしておけば、あの部屋まで持って来てくれるから」

「了解です。えっとメニューは...」

 メニューには10種類以上の定食があり、バラエティに富んだ単品商品も充実していて、お腹が減っているわたしは選ぶのに迷ってしまった。

「迷った時は日替わり定食を選ぶと良いよ。僕はいつもそうしてるんだ」

 なるほど、その選択肢もあったか。今日の日替わりは[チキン南蛮とエビフライのミックス定食]となっている。いけない、字を見ただけでヨダレが出そう。もうわたしには迷いなど無かった。

「この日替わり定食にします!」

「オッケー、僕も同じのにしとくよ」

 久慈さんが注文をメモに書いて食堂のお姉さんに渡し、社員専用の部屋へ移る。

 中は折りたたみ式のテーブルとパイプ椅子が並べれているだけの簡素な部屋だった。
 テーブルを挟んで対面に座り料理が運ばれるのを待つ。
 ここで一つケチ臭い質問をしてみた。

「この食堂って社員割引とかあるんですか?」
 
 どうでも良い質問に聞こえるかもだけど、長く勤めればこの食堂を利用する回数は多くなるだろう。わたしにとっては重要な事なのだ。

「もちろんあるよ。定価の2割引きで食べれる」

「2割引きですか~。それはわたしとって有益な情報です」

「ハハハ、少しでもお得な方が良いからね。だから僕はこの食堂をいつも利用してるんだ。黒川さんて結構しっかりしているところもあるんだね」

 ん!?他はしっかりしているように見えていないのか...まあ、今までしっかり者だと言われた事もあまり無かったけれど。

「貯金して貯まったら車が欲しいんですよねぇ」

「えっ!?魔女でも車とか欲しいんだ?僕の偏見かも知れないないけど、魔女はホウキで飛ぶから必要無いのかと思ってた」

「久慈さん、それは間違いなく偏見です。今どきホウキに跨って空を飛んでいたら、SNSに投稿されて生活が出来なくなってしまいますよ」

 ホウキで飛ぶことは簡単で確かに便利なんだけどなぁ...正に宝の持ち腐れ。
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