やしあか動物園の妖しい日常 第一部

流川おるたな

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やしあか農園

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 保管倉庫を出て本日最後の給餌まで済ませた頃には日が暮れ始めていた。

 事務所へ向かう戻り道の途中で、久慈さんにやしあか農園について訊いてみる。

「あの、昼休みに園長から訊いたやしあか農園なんですけど、何処にあるのか知ってます?」

 久慈さんがなぜか不思議そうな顔をした。

「保管倉庫へ行った時に気付かなかったかい?やしあか農園は保管倉庫の横にあるよ」

 げっ!?なんたること。保管倉庫ばかりに目が行って全然気付かなかった…

「そ、そうだったんですね。想っていたより随分と身近なところにあったんだぁ」

「もしかして、今日ワッパさんに会おうとしてる?」

「そのつもりです。折角園長に教えてもらったので」

 本当は急いで会う必要は無いんだけれど。興味が湧くとジッとしていられないのがわたしの性分。

「ん~、ちょっと暗くなって来てるしなぁ。紗理っち一人じゃ心配だから僕も付き合うよ」

「良いんですか!?ありがとうございます」

 本当は心の奥ではそう言ってくれることを期待してました~すみません。

「じゃあ、タイムカードを押したあとで一緒に行こうか」

「はい!お願いします!」

 こうして事務所に着き、帰り支度をしてタイムカードを押したあと、備品の懐中電灯を手に持って久慈さんと一緒にやしあか農園へ向かった。

「やっぱりだいぶ暗くなっちゃいましたねぇ」

「ああ、そうだね。明かりを点けて行こうか」

 やしあか農園の場所はすぐ近くだし、まだ明かりが無くても行けそうな気がしたけれど、足下が心配になり二人とも懐中電灯の明かりを点けて歩く。

 途中で保管倉庫が開いていたので中を覗くと、倉庫内の事務室の明かりがまだ灯っていて、ボウさんとシラユキさんが事務作業をしていた。

「残業するほど忙しかったんですね。ボウさんとシラユキさん」

「…本当はあと一人、倉庫管理の担当者が居るんだけど、昨日から病気に掛かって寝込んでいるらしい。それで僕らが応援に駆り出されたという訳さ」

 えっ!?妖怪も病気に掛かることがあるんだ!?

「病気って何の病気ですか?」

「あ、ごめん。僕もリンさんから病気という事しか聞いてない」

 そんな話をしていると保管倉庫を通り過ぎ、目的のやしあか農園に到着した。

 保管倉庫のすぐ横辺りから金網のフェンスが張られていて、入り口には[やしあか農園]の看板が掲げられている。

「あれっ!?これって入り口にカギが掛かっているんじゃないですか?」

「大丈夫、ここは年中解放されているよ。フェンスは動物園に来る子供たちが迷い込まないように設置してあるだけ」

 まぁ、外部からやしあか動物園に野菜泥棒に入る人は居ないとは思う。
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