66 / 113
ノ66 歳の差
しおりを挟む
城太郎が売り物としていたのは、持ち運びにも便利な裁縫などで使用する「針」である。
売り物にしていたのは全て手作りの針であり、男ながらにして裁縫が得意であったため、人々の前で実演しては良く売れたものであった。
彼の年齢は二十五歳という若さであったが、商売のために町から町への移動する途中、何処からともなく暴れ馬がいきなりやって来て跳ねられてしまい、近くにあった池の中まで吹き飛び、何かに頭をぶつけて気を失ってからの記憶が無いのだと云う。
どういう奇跡が起こってこうなったのかは不明であるが、城太郎が気絶から回復すると、周りには見知らぬ世界が広がっており、すぐ目の前には自分をまじまじと見つめて座っている真如が助けてくれたのだと思い込んだ次第である。
話が飛び飛びになって申し訳ないけれど、真如と城太郎の二人が恋に堕ちるのに時間は掛からなかった。
何と云っても、真如は彼に完全なる一目惚れをしていたし、城太郎も初めて彼女の姿を見た瞬間まんざらでもなかったようで...
その日のうちに二人は結ばれましたとさ。
いやはや参った参った。「恋物語」を語るなどと云ってしまった手前、こんなに早く二人が結ばれてしまっては詐欺のようなものであろう。
だが成就してしまったものはどうにもこうにもいかないし、仕方がない。
ところで、真如が百五十年ほど前まで人間であった頃、正親(まさちか)という最愛の夫と死に別れていることを忘れてはならない。
つまり彼女は正真正銘の「バツイチ」なのである。
だが百五十年もの歳月を経た今となってはどうでも良いことかも知れない。
あと気になるのは百五十歳以上という途方もない年齢差であるが、真如の美しい容姿は二十八歳の頃のままであったし、きっと恋をすれば歳の差など関係ないのである。
城太郎は全てを知った上で彼女を愛し、真如は彼の顔だけでなくその懐の広さにも大いに惹かれた。我を忘れてしまうほどに...
二人が真如の住まいで幸せに暮らし始めて一年ほどが経過した頃、彼女にとって悪い意味での運命的な事件が起きてしまう。
その日、仙人界にある数少ない風習であり、十年に一度しか開催されない仙人会議に真如は招集されていた。
彼女は朝早くから家を出発し、残された城太郎は暇潰しに釣りでもしようと、真如と出会った湖へ一人で赴く。
湖に着くや、釣り針に早々と団子状の餌を付け釣竿に繋がった糸を垂らし、彼は晩飯になるような魚を釣り上げようと本気で思っていた。
売り物にしていたのは全て手作りの針であり、男ながらにして裁縫が得意であったため、人々の前で実演しては良く売れたものであった。
彼の年齢は二十五歳という若さであったが、商売のために町から町への移動する途中、何処からともなく暴れ馬がいきなりやって来て跳ねられてしまい、近くにあった池の中まで吹き飛び、何かに頭をぶつけて気を失ってからの記憶が無いのだと云う。
どういう奇跡が起こってこうなったのかは不明であるが、城太郎が気絶から回復すると、周りには見知らぬ世界が広がっており、すぐ目の前には自分をまじまじと見つめて座っている真如が助けてくれたのだと思い込んだ次第である。
話が飛び飛びになって申し訳ないけれど、真如と城太郎の二人が恋に堕ちるのに時間は掛からなかった。
何と云っても、真如は彼に完全なる一目惚れをしていたし、城太郎も初めて彼女の姿を見た瞬間まんざらでもなかったようで...
その日のうちに二人は結ばれましたとさ。
いやはや参った参った。「恋物語」を語るなどと云ってしまった手前、こんなに早く二人が結ばれてしまっては詐欺のようなものであろう。
だが成就してしまったものはどうにもこうにもいかないし、仕方がない。
ところで、真如が百五十年ほど前まで人間であった頃、正親(まさちか)という最愛の夫と死に別れていることを忘れてはならない。
つまり彼女は正真正銘の「バツイチ」なのである。
だが百五十年もの歳月を経た今となってはどうでも良いことかも知れない。
あと気になるのは百五十歳以上という途方もない年齢差であるが、真如の美しい容姿は二十八歳の頃のままであったし、きっと恋をすれば歳の差など関係ないのである。
城太郎は全てを知った上で彼女を愛し、真如は彼の顔だけでなくその懐の広さにも大いに惹かれた。我を忘れてしまうほどに...
二人が真如の住まいで幸せに暮らし始めて一年ほどが経過した頃、彼女にとって悪い意味での運命的な事件が起きてしまう。
その日、仙人界にある数少ない風習であり、十年に一度しか開催されない仙人会議に真如は招集されていた。
彼女は朝早くから家を出発し、残された城太郎は暇潰しに釣りでもしようと、真如と出会った湖へ一人で赴く。
湖に着くや、釣り針に早々と団子状の餌を付け釣竿に繋がった糸を垂らし、彼は晩飯になるような魚を釣り上げようと本気で思っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる